新島襄が唱えた「良心教育」で人格形成に寄与する~八田英二・学校法人同志社総長
2018年08月03日 公開 2022年08月25日 更新
明治6大教育家の一人である新島襄によって創立された伝統校、同志社大学。開校以来、キリスト教主義精神にもとづく人格形成を貫いている。少子化による学生減少が著しくなってきた今、この教育方針をどう活かし、発展させようとしているのかを八田英二総長・理事長に聞いた。
取材・構成:高野朋美
写真撮影:白岩貞昭
「知」よりもまず「人」をつくる
高井 同志社といえば、創立者の新島襄先生がまず思い浮かびます。新島先生が打ち立てられた「キリスト教主義精神」「良心教育」という建学の精神は脈々と受け継がれていますね。
八田 はい。同志社は2025年に創立150周年を迎えますが、建学の精神は、私たち教職員の共通意識としてしっかりと根付いています。
新島襄は、大学には二つの大きな社会的使命があると言っています。一つは「専門知識を教えること」、もう一つは「人格形成を行なうこと」。なかでも重視しているのが人格形成です。
専門知識は、人類の幸福のため、社会のため、自分の将来のために必要です。ただし学び得た知識を世に活かす時、品性が備わっていなければ意味がありません。
人間形成を行なうには、何らかの価値判断基準が必要です。そこで新島襄は、キリスト教主義の中で学生の人格形成を手助けしようと考えたのでしょう。
新島は、日本の未来を切り拓きたいという志を胸に、単身アメリカに渡り、三つの学校を卒業しています。そのうちの一つ、アーモスト大学のリベラルアーツ(生きるために必要な一般教養)に大きな影響を受け、人として備えておくべきことをキリスト教主義精神によって育もうとしました。これが「良心教育」であり、同志社大学の最大の強みです。
高井 確かに大きな強みですね。それにしても不思議なのは、同志社大学のキャンパスが位置しているのは、すぐそばに京都御所もある今出川だということ。長く京都の中心だったこの場所に、よくぞキリスト教主義精神の大学をつくられたなと、今さらながら驚いています。
八田 それには新島襄の妻である新島八重が少なからずかかわっています。同志社大学のある土地には、かつて薩摩藩邸があったのですが、会津藩士であり八重の兄である山本覚馬が、幕末時、ここに幽閉されていました。そして明治維新後、才覚を認められて京都府の顧問となった時、この土地を、学校用地として新島襄に譲渡したことが、同志社大学がここにある所以です。