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英語留学で第2外国語を絶対に学ぶべき理由

タカ大丸(通訳/翻訳家)

2018年12月20日 公開 2023年01月12日 更新

多くのアメリカ人もスペイン語で挫折を経験している

ここから以下は科学的統計も何もない、ただ私の約20年にわたる実体験に基づく雑感である。

今から20年ほど前、50歳以上だった米国人の大学教授は、「英語という外国語を操るなんて大したものだ」というある種の敬意を外国人学生に払っていた。その一方で、40歳以下くらいの米国人になると、「人類というものは英語を話すのが当然だ」という思い込みのようなものがあり、つまり英語を自由に話せない人類は一段下に見ている感じがした。

純モンゴロイドな私の顔を見れば英語圏出身でなさそうなことはなんとなくわかる。だから、最初あちらは親切のつもりでゆっくり英語を話そうとした。

アメリカン・ジョークに次のような小話がある。

2か国語話せる人のことを英語で「バイリンガル」という。
3か国語話せる人は「トライリンガル」だ。
では、1か国語しか話せない人のことは何というか。

答えは「アメリカン」である。

私は米国暮らしの中でこの小話が冗談でもなんでもなく正真正銘真実であることを知った。

大部分の米国人は中学・高校でスペイン語の授業を受け、挫折した経験がある。ちなみにどこで挫折するかというと、動詞の変化と巻き舌のRの発音である。

英語の場合、主語が三人称単数の場合のみ動詞の後ろにSがつくが、スペイン語の場合、主語が「私」の場合、「君」の場合、「彼/彼女」の場合、「私たち」の場合、「あなた方」の場合、「彼ら/彼女ら」の場合で全部変わるのだ。そこでつまずく。もっとも、ものは考えようで、動詞の変化を見れば主語がすぐにわかるわけだから、スペイン語では主語を省くことができる。ある意味このほうが便利なのだ。

とにかく、日本人が英語で挫折するのと同じかそれ以上に大部分の米国人はスペイン語で挫折したことがあるということは覚えておいてほしい。

そんなとき、モンゴロイドの顔をした男がレストランかどこかではったりでもなんでもいいからメキシコ人のウェイターを相手にスペイン語で注文したらどうなるか。

完全にあちらの態度が変わり、絶対にこの男を敵に回してはいけない、と考えるようになる。米国でもスペイン語がわかるかどうかで見える世界は完全に違ってくるということだ。
 

一気にレッドオーシャンから抜け出る「プラスアルファ」

スペイン語で私の人生は完全に変わった。盟友ランコ・ポポヴィッチ(セルビア出身のサッカー選手で指導者としてJリーグの監督を歴任)と親しくなったのは明らかにスペイン語のおかげであり、いまサッカー界に首を突っ込んでどれほどスペイン語から恩恵を受けているかはここで書ききれないほどだ。

もっと言うと、日本社会で生きていくうえでも3か国語以上話せると圧倒的に優位になる。

そもそもから言って、日本人でトライリンガル以上といえる人はどう見積もっても1万人は切るだろう。昔、今は亡き某ロシア語同時通訳者が「英語の通訳者は面白くないヤツが多い」と書いて物議をかもしたことがあった。私に言わせれば、半分当たっていて半分外れている。

通訳者と翻訳者は別人種だが、英語通訳者にも間違いなく面白い人はいる。ただ、絶対数が多いから日本のビジネスマナーやら形式がわかる人間が優先されて、それに外れた人は能力があってもはじかれる場合がままあるのだ。

その点、ロシア語通訳だったりスペイン語通訳だったり、もっと言えばスワヒリ語通訳とかになると、必要な時にいなくなれば即緊急事態になってしまう。だから少々の変人でも切るに切れなくなる。まさに私のように、結果を出せば誰も文句を言わなくなる。

もし私が素直に英語学校に行っていれば、いつまでたってもアメリカ人および英語に対する劣等感から抜け出せず、今の私は絶対にありえなかった。

別にスペイン語でなくてもいいから、第二外国語はぜひお勧めしたい。「なら何語がいいのか」とよく聞かれるのだが、人によって相性があるからひと口には言えない。

中国の経済発展を考えて中国語、というのは簡単だが、外国語の習得には約1,000時間の勉強が必要となる。それだけ中国の文化なり、歴史なり、音楽なりに愛着がないならたぶん続かない。だから1,000時間の忍耐が続く、強い愛情がある言語を選ぶのが一番いいと思う。

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