脳が巨大化して、がんも増やしてしまった人間
二つ目が、脳の巨大化。
石器を使い始めたといわれているアウストラロピテクスと、さらに高度な知性が備わって道具としての石器を作り始めたといわれているホモ.エレクトスを比べると、脳の容量はなんと2倍になったそうです。
アウストラロピテクスの脳は450ミリリットルほど、ホモ.エレクトスは1000ミリリットルほど。
数十万年の間に、どうして、こんなにも脳が巨大化できたのか?
そのカギが「FAS」という脂肪酸を作り出す酵素にあります。ちょっとややこしい話ですが、とても重要なことなので、もう少しお付き合いください。
FASとは、「Fatty Acid Synthase」の略称で、日本語では「脂肪酸合成酵素」といいます。
ほとんどの生物が持っている酵素ですが、人間のFASは大きく変化して、脂肪酸を作る能力がパワーアップしたのです。そのおかげで実現したのが脳の巨大化。
脳は「脂っぽい臓器」といわれるほど、脂肪が多い臓器です。水分を除くと、7割が脂肪でできています。
FASの変化によって脂肪酸を大量生産できるようになり、人類は脳を巨大化させることに成功したのですが、一方で、実はがんも増やしてしまいました。
がん細胞が分裂を繰り返すときにFASが作り出す脂肪酸を使っていることがわかってきたのです。