掃除と清掃は別物…世界一清潔な空港のカリスマ清掃員の”プロ意識”
2019年07月01日 公開 2021年07月29日 更新
清掃と掃除はまったく違うもの
清掃と掃除、似ている言葉です。そのため、同じような意味で使っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、私は清掃と掃除はまったく違うものと考えています。
たとえば、家のなかをきれいにする作業は「掃除」です。年末などに大「掃除」と言いますが、大清掃とはなぜか言いません。また、「清掃」員は掃除員とは言いませんし、業界の呼び方も、「清掃」業界であり、掃除業界とは言わないものです。
違いに気づいていなくても、多くの人は清掃と掃除を知らないうちに使い分けています。
では、2つの違いはなんでしょうか。私は、
掃除……自分や家族、会社の仲間などのために行う無償の作業
清掃……技術や知識をもつプロが、お金をいただいて行う作業
だと考えています。
私にとって、掃除は「家事」ですが、清掃は「仕事」です。掃除は自分や家族が満足すればOKなのに対して、清掃は「品質」が要求されます。
さまざまな道具や機械、洗剤などを使い分け、すみずみに気を配り、清潔な環境を維持するのが清掃員の仕事です。
そのため、掃除にくらべて、ワンランク上の仕上がりにしなければなりません。おもてなしの心でお客さまの視点に立って作業すること。これが「清掃」です。
私は、「清掃員」である以上、プロの仕事をしなければならないと思っています。
清掃はサービス業。大切な手順と技術
清潔な空間は、おもてなしの基本です。そういう意味で、私は「清掃はサービス業」だと思っています。
もちろん、清掃には決まった手順があり、クリーニング技術も必要ですが、単にガシガシ汚れを落とせばいいというものではありません。
どこに目をくばり、どういうふうに清掃するか。
お客さまにとっての清潔とはなにか。
そういった視点がなければ、けっしてよい清掃にはならないからです。
たとえば、床の清掃を例にとってみましょう。
空港にはさまざまなお客さまがお越しになります。赤ちゃんはちょっと目を離したすきにハイハイをはじめますし、活発なお子さんは平気で床に寝ころんだりします。そんなときに、床が汚れていては服が台なしになりかねません。
あるいは、万が一の可能性で落ちているゴミを口にするようなケースもあってはならないことです。さらには、アレルギーをお持ちの方は、ちょっとしたホコリにも敏感に反応してしまいます。
また、ぬれた床はころびやすいので、ケガや事故につながりかねません。体の不自由な方やお年を召した方には、特に危険です。
他にも、あまり知られていませんが、お弁当に入っているつまようじ1本でさえ、丸いタイプのものは転がりやすく、お客様のスリップの原因になります。
見た目のきれいさだけでなく、安心で安全な空港にするためには、きちんとした清掃が欠せないのです。