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「細かいことに口を出す管理職」がたいがい失敗する理由

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

2019年08月28日 公開 2023年07月12日 更新

 

「ボトムアップ」という聞こえのよい言葉の落とし穴

他方「リーダーはボトムアップで部下の声を吸い上げろ」という考えもありますね。それはその通りですが、部下が言っていることに乗っかっているだけのトップでは意味がありません。

失敗例は、旧民主党・鳩山由紀夫政権です。鳩山さんは、「現場の声を調和させるのが私の役目だ」と言っていましたが、その考え方だと現場の各メンバーの自己主張が強くなって収拾がつかなくなってきたときに、対応ができません。

現場の声を調和させることはトップがやらなくてもいい。いわゆる調整役というのは、トップの1つ下か、2つ下のポジションに担ってもらうことです。

トップは大きな方向性を示して、組織をリードしていくのが役目であり、その大きな方向性の中で、現場を調整するのは現場のまとめ役の役割です。

確かにボトムアップというのは、聞こえはいい。しかしトップにとって、ラクをしようと思えばラクができてしまいます。「良きに計らえ」と言って、すべてを部下に任せてしまうこと、部下から上がってきた書類にハンコを捺すことも、ある意味ボトムアップです。

 

細かなことに口を出さず、大きな問題点を見つけよ

ですから、ボトムアップで現場の声を聞くことは否定しませんが、現場の仕事とリーダーの仕事を明確に分けて、「リーダーは現場のできないこと、現場がやらないことをやるものだ」「リーダーは決断・判断・決定が主な仕事、現場はオペレーション(実務)が主な仕事」と認識しておくことが重要です。

さらに、リーダーが現場の実務の細かなことに口出しをすると、たいがい失敗します。細々としたところにまで、「これは違うんじゃないか」「あれは違うんじゃないか」と口を出すと、現場から「何も知らないくせに」と思われますし、実際リーダーは現場のことをそこまで知りません。これについても、失敗例は、鳩山政権。

旧民主党は、「脱官僚、政治主導」を掲げて大臣、副大臣、政務官が役所に乗り込みました。何をやったかというと、電卓を横に置いて、パッパッパッと数字を弾いて、「ここの数字はこうじゃないか」という細かい実務的な指示など。

そうなると、大臣、副大臣、政務官が本来やらなければならない決断・判断・決定が滞ってきて、課題が滞留してしまい、霞が関の官庁組織が動かなくなってしまいました。

現場における実務上の問題点というものは、探せば山ほど出てきます。細かい問題点を指摘し始めたら切りがありません。実務的な問題の解決は現場に任せればいいのです。

やはり、それよりも現場が気づいていない大きな問題点を探り出して、それについて現場ときちんと話し合いながら、最後は決断・判断・決定をしていくことがリーダーの役目です。僕はその視点で、現場のことを勉強していきました。

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