持論を語っても煙たがられない方法とは?
今も昔も、「雑談が苦手」という悩みは尽きないもの。たとえば、「初対面で何を話していいかわからない」「話がつまらないと思われていないか不安」「とにかく沈黙が訪れるのが怖い」などなど...。
しかし、放送作家でありながら、科学的に研究されたトークメソッド「インプロ(即興力)」の養成講師として活躍する渡辺龍太氏によれば、雑談上手と雑談下手の違いは「紙一重の違い」に過ぎないと言う。
そこで今回は、そんな渡辺氏の著書『雑談がおもしろい人、つまらない人』(PHP研究所)の中から、「持論の扱い方」について語っていただいた。
なぜ持論をそのまま語ると「スベる」のか?
雑談をしていると、「なんかこの人、イライラする...」と感じる人に出会うことはありませんか? 実は、そういう人にはある特徴があります。それは、「〜すべき」という持論を語っているということです。
そもそも、人間はいつ、他人の言動に怒りを覚えるのかというと、自分の中にある「~ すべき」という考えを崩されたときです。たとえば、あなたが通勤ラッシュの電車に乗るため、ホームできちんと列に並んで待っていたとします。すると、あなたの前にスッと横入りする人がいました。
そのとき、多くの人は多かれ少なかれ嫌な気持ちになるでしょうし、怒り出す人もいるはずです。その理由は、多くの人が「列は横入りすべきではない(してはいけない)」という考えを持っているからです。
雑談でイライラする理由もこれと同じです。つまり、ある人が雑談の中で、「〜すべき」という持論を語り始めるとき、それを聞いた人には、また違う「〜すべき」という思いがあるかもしれません。
雑談というのは、基本的には、お互いに歩み寄りながら雰囲気を作り上げるものなので、そこで「〜すべき」が一致しない場合、モヤモヤが加速して、一気に相手の言動にイライラしてしまうのです。次の会話例を見てください。
A 「この前、オーストラリアに行ったときに飛行機に乗ったら、国際線なのにアルコールは有料ですって言われて。マジで驚いたんだよね」
B 「へー、昔はそんな会社なかったよね。LCCだったんじゃない?」
A 「LCCだけど、普通の航空会社とチケットの値段、全然変わらないんだよ。それなのに、サービスの質だけ下げるなんて、本当ボッタクリだよな」
B 「まぁでも、時代の流れじゃない? 飲みたきゃ買えば? そんな高くないでしょ」
A 「いやいや。たいしたことないビール1缶で、900円。1缶900円だよ!? しかも空港で買った酒を機内で飲むのも禁止とか言ってて、誰のためのルールだよって感じ。頭にきて、思わずSNSに愚痴っちゃったよね」
B 「えっ、ちょっと怖いんだけど。どうしちゃったの?」
A 「いやいや、普通だって。みんなが、文句も言わずに受け入れるから、会社がつけあがるんだよ。大体、お前はこういうことに対して甘すぎるんだよ...(以下、なぜかBさんへの文句に)」
ここでのAさんの持論は、「国際線の航空会社は、機内でお酒を無料で提供するべき」というものです。
しかし、話を聞いているBさんは、一見穏やかそうに見えますが、「LCC」「時代の流れ」といったキーワードから窺うかがえるように、「値段が安いチケットを選んだのはAさんなのだから、サービスが悪くても文句は言うべきでない」という、無意識に持っていた持論が見え隠れしています。
その結果、何だかギスギスした雑談になってしまいました。だから、雑談では、「〜すべき」という持論は、基本的には避ける方がベターです。