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乗り間違えから復帰までに3時間!? インドの駅は「超難解なダンジョン」

さくら剛

2020年02月25日 公開

 

インド鉄道リアルファイト一発!

バンガロール行き電車の発車時間は、10分後である。本来ならばもうとっくにホームに停車していてもいい頃だが、まああまり細かく考えるのはやめよう。

インドの鉄道と大作RPGの発売日は、遅れて当たり前なのである。

きっと大作RPGと同じくバンガロール行きの電車も、遅れることによって完成度を高めているのだろうから、多少の遅延は認めるのがユーザーのマナーだろう。

ところが、今日のインド鉄道はいつもと違うのであった。なんと、出発5分前にちゃんと電車がやって来たのである。車両の表示板にはちゃんと「デリー←→バンガロール」と書いてある。

デリー発バンガロール行きの列車が、奇跡的に時間通りに正確に、線路を挟んで反対側の2番ホームに滑り込んだ。

なんのためにオレはポーターを雇ったんだ……。

あっち側に移動するには、また荷物を全部持ち直してホームの端まで歩いて階段を上がって陸橋を通って階段を降りて2番ホームまで行かなきゃならんじゃないか。

プオ~~~~~~~~~ン(発車の汽笛)

おおいっ!!!ちょっと待てっ!!!

こうなったら、もはや直線移動しかない。オレはすかさずアクションスターに転職して線路に飛び降りると、ホームからバックパックを引き摺り下ろして背負い、その他荷物を両手に抱えた。

そのままレールの上を横切って、対面の車両へ。幸いなことに、こちら側もドアは開放されている。

よし、なんとか間に合いそうだ……と入り口へ伸びるハシゴに足をかけようとした瞬間、いきなり電車が動き出した。

オレはジワジワ逃げて行く電車のドアを追いかけ線路を走り、かろうじてハシゴを掴み足をかけた。やっとのことでオレは、入り口のドアを抜け車両内に突入することができたのだった。

 

オレの席はどこですか?

座席の間を縫って移動し、寝台車の「A2」車両を目指した。いくつかの連結を越え長い距離を歩き、冷房まで効いて一気に金持ちの空気が漂っている、A2の37番に着いた。

おばちゃんが寝ている……。

オレの指定席では思いっきり体を伸ばして、インド人おばちゃんが我が物顔で寝ていた。人の席を取っている罪悪感など一切感じさせない無邪気な寝顔で。

さて……。起きろーーーッ!!!!

「わっ!な、なにあんた?」

おばさん、ディスイズマイシート。今すぐあなた自分の席に戻ってください。

「いきなり失礼な人ね!!ここは私の席よ」

オレはおばさんからチケットをふんだくり、勝ち誇った態度で座席の数字を見た。どういうこっちゃ……、オレとおばさんのチケットに書かれている指定席は、どちらも全く同じA2の37。

向かいに寝ていたこのおばさんの旦那さんも出てきて、やはり2枚のチケットを照らし合わせ確認するが番号は全く同じで首を捻る。

ダブルブッキングか……。ホテルや電車、飛行機などで、全く同じ部屋や席を2人に同時に割り振ってしまうことを、ダブルブッキングと呼ぶ。

今までオレも何度か喰らったことがあるが、ダブルブッキングの場合は、車掌に抗議してなんとかさせなければいけないのはその席に後から来た方という暗黙の了解がある。

だから、今回はたとえ正しいチケットを持っていたとしても引かねばならないのはオレの方なのだ。言葉も満足に喋れないのに……。

とその時、まだ2枚のチケットを見比べていた旦那さんが、何かに気付いたかのごとく、オレに聞いた。

「あれ?おまえ、バンガロールに行くのか??」

そうだよ。マンマドからバンガロールまでの切符を買ったんだから。

「おまえこの電車はバンガロール行きじゃなくて、バンガロール発の、デリー行きだぞ?」

───しばらく、時が止まった。

車掌さん!!すみません、この電車はどこ行きですかっ!!

「なんだ??この電車はバンガロール行きじゃない。デリー行きだ。次の駅で出ていきなさい」

おばさん、おじさん……。すいませんでした!

「いいのよいいのよ。気にしないで。まあ次の駅からマンマドに引き返して、それで明日にでもバンガロールに向かうといいさ」

そういえば、肝心のバンガロール行きの電車は、発車時間にもかかわらずさっきはまだ来ていなかった。

ということは、遅れているということではないか。すぐさま次の駅で降りてマンマドまで引き返せば、まだ間に合うかもしれない。

車掌さん!!すみません、次の駅への到着まであと何分くらいですかっ!?

「そうだな。次はジョルガオンの駅だから、だいたいあと3時間くらいだな」

…………。

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