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試合前に野村監督と落合監督が…伝説の打者たちの密やかな「打撃談義」

野村克也(野球評論家)

2020年03月13日 公開

試合前に野村監督と落合監督が…伝説の打者たちの密やかな「打撃談義」


(撮影:荒川雅臣)

名選手にして、名監督。日本プロ野球きっての"アイデアマン"でもあり、多くの著書を著した”作家”とも。多くの人々に親しまれた野村克也氏の逝去の報に、日本が驚きと悲しみに包まれた。

その野村氏が旅立つ直前に上梓した書『リーダーとして覚えておいてほしいこと』では、落合博満氏と豪華な「三冠王対談」を繰り広げている場面がつづられている。本稿では、同書よりその一節を紹介する。

※本稿は野村克也著『リーダーとして覚えておいてほしいこと』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです
 

中日ドラゴンズのマネージャーが試合前に野村監督を訪ねた理由

「落合(博満)が待っております。球場内の通路を通り中日監督室までお越し願えませんか」

06~09年の楽天監督時代、セ・パ交流戦の試合前、中日マネージャーがよく楽天監督室に私を訪ねて来たものだ。私はうなずき、彼の部屋を訪れる。

「ノムさん、お久しぶりです。すみませんね。記者連中に見つかるとうるさいですから」

「落合は、何でオレと話したがるの」
「そりゃ、ノムさんしか、野球わかる人いないでしょ」

「オレより記者に少しはリップサービスしなきゃ。それこそ野球を教えてあげないと」
「落合中日とか、野村楽天だとか、選手でなく、監督を前面に書かれるのがイヤなんです」

「だって監督はリーダーだから。先発投手や野手のスタメンを決めることからして監督の仕事だ。でも、やっぱりオレとは違うのう。オレが苦労して獲った三冠王を3回も……」
「本当はあと2回獲る予定だったんですけどね(笑)」

そんな野球談議の中で、「打撃の重心バランス」の話が出た。私も落合も、重心を「後ろ側」の足に残して打つ、いわゆる「軸回転打法」だ。

「ワシは、後ろ側の足と前側の足、構えたときの重心バランスは7対3だった」
「僕は9対1でしたよ」

速球を待っていて、遅い変化球に対応する。落合は体が前に突っ込むことによほど注意したということだ。そして「タメ」や「間」ができるから、あれだけ打てたのだろう。

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「間ができるとカネがたまる」の格言

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