未知の世界に踏み出せないから離婚できない
不幸な女性ほど過去に執着する。そして執着すると、自ら不安を引っ張ってくる。
彼女が社会で働くことに不安があるから、冷酷な夫はそこをついて勝手放題をする。
未知の世界に足を踏み出すのは、不安で恐ろしい。
そこで彼女は、先に踏み出すまいと命がけで現在の不幸にしがみつく。
こういう人たちは、不安から離婚はできないが、離婚をしないからといって今が安心だというわけでもない。
未来に向かって行動を起こしていないからである。
「将来、不安なんですよねー、いろんなことに疲れましてねー」と言う。
現状にしがみつく人は、今を生きていない。
不幸な女は、過去の男がくれたペンを捨てられない。
そのペンに心理的に依存しているから捨てられない。
もしこの奥さんが、「自分はどうなってもやっていける」と思えば、離婚を恐れない。
生活の変化を恐れない。
しかし、「自分はどうなってもやっていける」と思えなければ、生活の変化は怖い。
今、現在がどうにもならなくなっているときは、現状を「守る」のではなく、「破る」ことである。
「破る」とは「捨てる」こと。
執着を捨てる。
過去をすべて捨てる。
捨てるとは、不幸をうけいれること。
不幸をうけいれれば、今を生きられる。
うつ病になりそうな人は、「今がどうにもならなくなっている」のに、不幸をうけいれないで自分の身を「守ろう」とするから、結局、うつ病になってしまう。
今、濁流に喘あえいでいる人はその濁流を離れない。
「あっちの川に行け」と言われても行こうとしない。
でも、未知の不安を乗り越えた人は、次の川に行く。
現状にしがみつくから、挑戦できない
今、離婚を例に挙げたが、会社でも同じである。
この会社が自分には向いていないと思っても、その会社を辞めないのは、その先がどうなるか不安だからである。
殺したいほど憎らしい上司と一緒に仕事をするのは、会社を辞めた後の生活の不安、社会的威い信しんを失う不安があるからである。
不幸よりも不安の感情のほうが強いように、怒りの感情よりも不安の感情は強い。
会社を辞めた後の生活の不安、社会的威信を失う不安、それらの不安ゆえに、ビジネスパーソンは、どんなにイヤな会社でも辞めない。
「家族のため」というのは、会社を辞めない口実である。不安だから今の会社に固執する。
今の状態に固執するから、これをやってみようかと、なにかに気軽に挑戦できない。
失敗したら失敗したでいいやとは思えない。
不安な人は、家を変わるのも、職業を変わるのも、困難である。
よく、延々と会社の悪口を言っているビジネスパーソンがいる。
飲み屋で延々と上司の悪口を言っている。
「そんなにイヤなら、会社を辞めればいい」。こちらがそう言うと、「今の会社を辞めたら食べていけない」と言う。
しかし、じつはそうではないのだ。今なら、ホームレスになっても食べていける。
本当は、会社を変わることが不安なのである。
あるいは今の会社を辞めたら、次の会社が見つかるかどうか不安なのである。
だから、「会社を辞めたら家族を食べさせていけない」と言う。
住んでいる地域でも同じである。この地域が自分には向いていないと思っても、引っ越さないのは、その先が不安だからである。
未知の世界は不安だから、現状がどんなに矛盾に満ちていても、人は現状にしがみつく。