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ゲームでは嫌われ者? 戦国公卿・山科言継と、珍味「鯨のアレ」との意外な関係



2020年04月21日 公開

黒澤はゆま(歴史小説家)

山科言継と鯨のアレとの関係とは?(黒澤はゆま)

あのとき、あの武将はいったい何を食べていたのか。

薄味を供した料理人を殺せと命じた信長、糠味噌汁を残して叱られた井伊直政、逃避中に雑草を食べた真田信之、生水は水に浸してから食べよと心遣いする家康……。

さまざまな文献から戦国の食にまつわる面白いエピソードを紹介し、さらには文献に登場する料理を実食して、どれだけまずいかを味わう『戦国、まずい飯!』。新聞や雑誌の書評やインタビューなどで紹介され、インターネットでも話題となっています。

今回は、著者である歴史小説家の黒澤はゆまさんが、新たに味わった珍しい料理をレポートいたします。食事を通じて、当時の暮らしぶりを知り、戦国の世と先人たちに思いを馳せてみましょう。

※本稿は、黒澤はゆま著『戦国、まずい飯!』(集英社インターナショナル新書)より一部抜粋・編集したものです

 

医術で人助けしたら「鯨のアレ」を食べさせられた公卿・山科言継

あなたは医者だ。旅先にも関わらず、宿の娘が病気だったので、施薬してあげた。

「あぁ、よいことをした」

心地よく目覚めた翌朝、朝食の膳に、お礼のつもりなのかどうか、鯨のペニスがのぼっていたらどう思うだろうか?

そんな滅多に出くわさない目にあった人が、戦国時代の公卿、山科言継(やましな・ときつぐ)である。

彼の日記「言継卿記」は、戦国時代の京都周辺の状況を克明に記す一次史料として有名だが、歴史ゲームファンなら「信長の野望」で官位をくれるオッサンといえば、あぁあの人かと分かる人もいるだろう。

ゲームのなかでは朝廷への献金の窓口もつとめていたが、なかなか渋ちんで、頑張ってお金を貢いでも、

「大儀であった」

くらいしか言わないし、貢献度が足りないのに官位を求めると、

「今より高い位などやれるか」

と怒られるのだった。

やけに偉そうな態度だが、山科家は家格で言えば羽林家、精々、参議か中納言、よくて大納言になれる家柄なので、公家としては中堅どころである。

山科家は、代々、内蔵頭として朝廷の財政を管理してきたが、自家も朝廷も戦国時代が始まると、所領を次々と諸国の大名に横領されてしまう。そのため、燃え盛る二つの火の車を消し止めるため、言継は、生涯、各地を駆けずり回る羽目になった。

ゲームでの銭ゲバ的なキャラ付けはそんなところも反映しているのかもしれない。何と言ったって、言継は蚊帳を質入れするほど、窮乏していたのだ。

 

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弘治2年(1556年)、言継は義母中御門氏を訪ねるため、駿府へ下向する。

当時の駿府は今川義元の全盛期で、義元の母親で女戦国大名としても有名な寿桂尼は、中御門氏の姉だった。中御門氏はその縁で戦乱の京都を逃れて、駿府へ身を寄せていたのだ。

9月11日、京都を発った言継は、六角義賢の庇護のもと、陸路で伊勢の楠に向かい、そこからは船を仕立て、伊勢湾を突っ切って三河を目指した。

その途上、志々島(未詳だが現愛知県篠島に比定されている)で一晩帆を休める。

ここで宿の息女が淋病を患っており、脈を取って欲しいと言われたため、言継は五淋散を七包、三光丸を百粒施薬してやった。五淋散は泌尿器、三光丸は胃腸に効く薬である。

そして、その翌日、目を覚まして、

「今日の朝ごはんは何かな」

とウキウキしていた言継の前にあらわれたのが、

「鯨のたけり二きれ」

だった。

たけりは陰茎、男性器のことである。

私はこのエピソードを『戦国、まずい飯!』を書くために参考にした吉田元氏の『日本の食と酒』で知ったのだが、日記には味について何の感想も記されていないため、「昔は変なものを食べてたんだな」程度の関心しか持たず、拙著のなかでも「味が気になるところだが、何の感想も残していないので、想像する他ない」と簡単にしか触れなかった。

ところがである。

出版後、ふと「鯨のたけり」でググってみたところ、何と和歌山県東牟婁郡太地町の〆谷商店さんのHP(https://www.simetani.com/c1511.htm)がヒットし、現在でもネットで簡単に手に入ることを知ったのである。

『戦国、まずい飯!』は、戦国時代の食を再現するために「手に入るだけの文献を手に入れ、調べられるだけのことを調べた上」で書くのが趣旨のはずの本だった。

それが勝手に「もう手に入らないだろう」と早合点し、試さないものがあったというのは、とんでもない失態である。リベンジせざるを得ないのである。

さあ、実食!合うのは塩?醤油?酒?

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実際に食べてみた「鯨のたけり」 >



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