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コロナ暴落を“神回避” 森永卓郎氏にギリギリで全株売却させた「ある指標」

森永卓郎(経済アナリスト/獨協大学教授)

2020年06月18日 公開 2023年01月12日 更新

 

経済が低迷しているのに「史上最高値」を記録

バブルがはじけると断言した根拠はそれだけではありません。

アメリカで長短金利の逆転(逆イールド)が発生していました。通常、金利は長期のほうが高くなります。それが逆転すると、だいたい11カ月後からカ月後に景気が失速、後退期に入ります。

2019年8月に米国債市場で「逆イールド」が発生しました。したがって、経験則からするとバブル崩壊は2020年7月だと考えていましたが、少し早く来てしまいました。

根拠はほかにもあります。

たとえば、2019年の世界経済成長率は国際通貨基金(IMF)の見通しで3.0%となっています。実際は、おそらく2.6~2.7%程度でしょう。ちなみに、リーマン・ショック後5年間の景気低迷期の平均成長率は3.3%でした。つまり、2019年前後の成長率は、リーマン・ショック後より低かったのです。

それなのに、2020年2月12日にニューヨークダウが史上最高値を更新しました。これはどう考えてもバブルです。このようにあらゆる証拠がバブルを示し、専門家のあいだでは"もうすぐはじけるぞ"と予測できたのです。

 

日本株には目をくれなくなる

私はテレビの生放送で「バブルはまもなくはじける」と宣言したからには、宣言に沿った行動をしないのは視聴者に対して無責任だと思いました。

じつは、これまでの人生において投資用の株を売ったことはほとんどありませんでした。売ったのは、その会社が傾いたので整理しなければならない時だけです。しかしバブル崩壊宣言をした以上、自分が動かなければ「噓つきだ!」「いたずらに不安を煽あおっている」と批判されるかもしれない。

もっとも、早期のバブル崩壊を確信していましたから、株主優待目的で保有する株以外、すべて売りました。それがバブル崩壊前に株式を全売却した話の真実です。

金額にして3000万円ぐらいでした。4月上旬の時点で3割ほど下落しており、売らずに手元で持っていれば、株式資産が2100万円程度に目減りしていました。900万円の損失を出さずにすんだわけです。「年収200万円時代」なら4年間暮らせる額です。文字通り、命拾いしました。

じつのところ、ニューヨークダウは2020年2月12日の2万9568ドルの高値から3月23日には1万8213ドルまで約4割下落しましたが、その後、2万5000ドル(5月末)値を戻しています。

ニューヨークダウでいうと、25倍のバブル崩壊の水準は2万3000ドルぐらいです。その視点からすれば、いま新たなバブルが始まっていると言えます。もちろん、日経平均株価も、5月末現在で値を戻してはいますが、この株高が続くとは言えません。

実際に、米連邦準備制度理事会(FRB)は2020年5月15日に、「金融安定報告書」を発表して、新型コロナウイルス感染拡大で暴落した株式などの資産価格が、感染の影響が長引くと、「再び大幅に落ち込む恐れが依然ある」と警告しています。

ここからは投資家のマインドの問題なので予測が難しいのですが、私はニューヨークダウが1万5000ドルを割ったら、少しずつ買い戻そうと思っています。

ただし、私はもう日本株には戻しません。新型コロナウイルスと首都直下地震というリスクをはらむ日本経済は、いずれ「発展途上国レベル」に転落していくと見ているからです。

私ですら投資マインドが冷え込んでいるのですから、海外の投資家が日本(円)をどう見ているかは、さもありなんです。

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