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「老いた犬や猫を見捨てないで」 身勝手な飼い主に苦しめられるペットたち

鈴木聖子(動物看護師/彩の国動物愛護推進員)

2020年07月29日 公開 2024年12月16日 更新

 

痴呆で夜中に徘徊することもある「ペットの老後」

犬や猫を飼おうと考えているとき、その子の"老後"まで想像できている飼い主さんは多くないと思います。最初はいくら小さくてかわいいペットでも、人間と同じように命を持った生き物として歳をとり、やがて老後を迎えることとなります。

老後があるということは、介護が必要になるということも意味します。そしてペットの介護というのは、実のところ決して簡単なものではありません。飼い主自身に大きな負担がかかってきます。

ペットは歳をとるとだんだん、病気や怪我をしやすくなり、動物病院へ連れていく頻度も高くなります。まだこのあたりであれば、お金と通院にかける時間があれば何とか対応はできます。

しかし、さらに重篤な病気の場合は寝たきりの状態になってしまったり、痴呆になることもあります。

寝たきりになってしまった場合、床ずれを防ぐために、2~3時間に1回姿勢を変えてあげなければいけません。

もちろん、飼い主はこれを寝る間もなく繰り返します。そして立ち上がれなくなってしまった老犬・老猫は食事や排泄も人の手を必要とするため、つきっきりのお世話が必要です。

また、痴呆を患ってしまうと家中をぐるぐると徘徊し、昼夜逆転して夜中に鳴き続けることもあります。

そういった際には2次的に怪我をしてしまわないよう、動ける範囲を制限したり、家具の角などをスポンジで覆いぶつからないように工夫するなどの対策も欠かせません。

犬の老後というのは比較的よく見聞きしますが、猫にもまた違った形式の介護が必要になります。特に猫は1日でも食事をしっかり行えないと急激に弱ってしまう特性があるほどに繊細な動物なんです。

そのため、介護の際は四六時中そばにいて、つきっきりの世話をしなくてはいけません。「飼い始めたペットは、どんなことがあっても最後まで自分が世話をするんだ」という強い心構えをしておく必要があります。

 

ペットも大切な家族の一員として

ペットも人間と同じように命を持った生き物ですが、ひとつだけ「しゃべれない」という点では異なっています。

では、口がきけないペットとどのように向き合えばいいと思いますか?

この問いに明確な答えはありませんが、私は「飼い主側がペットを家族の一員だと思って接すること」だと考えています。

相手が言葉を発さない動物であっても、こちらから積極的にしゃべりかけ、愛情を伝えながら一緒に暮らしましょう。そうすることでペットも飼い主のことをちゃんと「家族」なのだと認識するようになり、家族以外の人間とは異なる反応を示すようにもなります。

警戒心の強い子は特に、他の人には一切触れさせないこともありますが、唯一の飼い主と絶大な信頼を築けているのは日頃の接し方から「家族」だと認識できているからです。

もちろん、最初のしつけには手を焼くこともあり、こちらの思い通りにならないこともあるかもしれません。興味津々なペットは、いたずらだってたくさんします。きっと頭を悩ませることが次々と起きるでしょう。

ですが、それは人間の子を育てるときでも同じこと。

赤ちゃんも最初は言葉を話せませんが、一緒に過ごすうちに泣き声や仕草、表情の違いで自然とどんなことを求めているのかわかるようになります。しゃべらなくたって、感情を伝えることはできる。生き物だから。

誰だって、なにかをすぐに覚えられるわけではありません。じっくりと確実に関係を深めていけば、きっとその後も決して離れることのない強い絆で結ばれるはずでしょう。

ですからまずは「一生面倒をみる覚悟」があるか、自問自答してみてください。

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