ネコはいつ、どこから来たの?
2016年11月10日 公開 2024年12月16日 更新
※本記事は、黒瀬奈緒子著『ネコがこんなにかわいくなった理由』(PHP新書)より一部を抜粋編集したものです。
最古のネコはどこにいた?
ネコはいつ、どこで、どうやって飼い慣らされ、ヒトのそばで生活するようになったのかをみていきましょう。世界的に研究が進むなか、分子系統学も新しい発見に寄与しています。
最初は時期について。これまでは、古代エジプト人が約3600年前にネコを飼いはじめたといわれていました。
しかし、2004年、地中海のキプロス島で驚くべき発見がありました。9500年前のお墓にヒトとネコが一緒に埋葬されていたのです。ネコとの「同居」の歴史は、従来考えられていたより3倍近くも長かったことになります。
農耕が始まった時期には諸説ありますが、最終氷期が終わって温暖な気候になり、ヒトが移動しながらの狩猟採集生活から農耕生活に切り替えて定住するようになった証拠は、おもに約10000年前の遺跡から多く見つかっています。
農作物をつくって倉庫に貯蔵するようになると、それを狙ってネズミが倉庫に侵入し、繁殖していきました(イスラエルにある約10000年前の最古の穀物貯蔵庫跡から、ハツカネズミの骨が見つかっています)。ネコは、このハツカネズミを狙ってヒトのそばで生活するようになったと考えられています。
さて、話をキプロスのネコにもどしましょう。キプロス島の9500年前のお墓から見つかったネコは8カ月の子ネコで、埋葬されていたヒトからちょうど40㎝ほど離れた小さなお墓のなかに、ヒトと同じ西向きに埋葬されていました。
当時もいまも、キプロス島を含む地中海のほとんどの島に野生のネコ科動物はいないので、ヒトが船に乗せてネコを連れてきたのだと考えられます。
これは近くのレバント(東部地中海沿岸地方)あたりから運ばれたとも推察されています。わざわざネコを船に乗せて運び、ヒトと一緒に埋葬する……約10000年前の中東で、ヒトとネコが深い関係にあったことがわかります。とくにお墓まで一緒に、という行為からはヒトの、ネコに対する愛情や信仰のような強い執着がうかがえます。