会社に社員が不要に? 「社員1人、オフィスなし」の企業が続々と成長している現実
2020年10月06日 公開 2023年01月13日 更新
PCすら持たずに外出してしまう人が「過去最高の売上」?
たとえば、Eメールの自動化とトレーニングのコンサルティングを提供するブレナン・ダンは、カスタマイズされたセールス・ファンネルを慎重に設計して戦略的に活用することで、指一本動かすことなく製品を市場に出すことができるのである。
ブレナンは、コンピュータさえ持たずに家をあけていても、過去最高の売り上げを更新している。すでにシステムをつくりあげたからだ。
理想的な顧客をウェブサイトに呼び寄せ、その人たちにメールマガジンを購読させて、サイト上での行動をもとにカスタマイズしたメールを送り、商品を買わせることができる。
この仕組みのおかげで、ブレナンがいてもいなくても売り上げが入ってくる。月にわずか数百ドルの費用で使えるソフトウェア、MailChimpやDripといったEメール・サービスによって、これがすべて可能となる。
ブレナンは最初、おきまりの道を歩んでいた。従業員を雇い、オフィスを設けて、人と投資とリソースを増やすことによってビジネスを成功させようとしていた。
しかしいまはオフィスはなく、業務を委託する人が外部に少しいるだけだ。ブレナンが仕事に割く時間は少なくなり、経費もはるかに小さくなったが、既存のデジタル技術を使うことで収入を増やしているのである。
企業規模の拡大がゴールではなくなった
ソフトウェアも、かつては業務用の高価なものしかなかったり、そもそも開発されていなかったりしたものが、いまは安く利用でき、簡単に使い方を習得できて、時間をかけずに手軽に活用できる。
たとえばわたしは、3万人のメーリングリストを使ってそこから収入のかなりの部分を得ているが、それにかける時間は週におよそ1時間だけだ。
Googleドキュメントを使えば、世界中で編集・共有できる文書を無料で作成できるし、Dropboxのようなサービスがあれば、どんな大きさのどんなファイルでも共有できる。IT部門を持つ必要はなく、ベルリンにいるシステム管理者と契約を結んで1か月に1、2時間作業をしてもらうだけでいい。
それに、ウェブサイト訪問者について知るには、無料のアクセス解析ソフトウェアがあればこと足りる。テクノロジーのおかげで、以前は高額の費用がかかったり大勢の人員が必要だったりしたことが、簡単にできるようになったのだ。
ビジネスを取り巻く現実によって、規模拡大を最終目的とせずにカンパニー・オブ・ワンになることが、かつてなく容易になっているのである。