会社に社員が不要に? 「社員1人、オフィスなし」の企業が続々と成長している現実
2020年10月06日 公開 2023年01月13日 更新
現在のコロナ禍ならびにオンライン化によってその強さを発揮しているのは「小さな会社」。外部の資本や過剰な設備、多くの人員に頼ることなく、アイデアの最小単位でビジネスを素早く始め、市場で軌道修正を繰り返す…今後この考え方は重要になると考えられている。
そんな小さな存在の優位性を活用する経営手法「カンパニー・オブ・ワン」が世界各国の企業から注目を集めている。提唱者はであるポール・ジャルヴィス氏自身も、テクノロジー企業で活躍後に独立後、ヤフー、マイクロソフト、ワーナーなどの名だたる企業とビジネスをともにしてきた。
本稿では、各国で翻訳される同氏の著書『ステイ・スモール』より、この時代においてなぜ小さな会社が力を持ったのかについて言及した一節を紹介する。
※本記事は、ポール・ジャルヴィス著『ステイ・スモール』(ポプラ社)より、一部を抜粋編集したものです。
小さな会社は単なる出発点ではない
難しいルールと序列のもと、オフィスで仕事をするという従来の働き方は、仕事ベースで動き、勤務場所も問わないもっと自由な働き方に取って代わられつつある。ビジネスの世界は、つねに自動化とテクノロジーによって陳腐化している。
これはいいことだ。仕事のやり方が変わることで、最低限の投資、人員、時間で多くの売り上げを出せるようになるからだ。
従来、小さな会社は出発点だと考えられていた。あるいは、あまりうまくいっていないとみなされた。しかしいまは、新しいタイプの会社があえて小さく出発して小さいままでいる。
これはビジョンや戦略を欠いているからではない。最近はひとりでも(あるいは小さなチームでも)多くのことを成し遂げられるからだ。
テクノロジーは絶えず進化し、セールス・ファネルを自動化したり、倉庫やスタッフなしで商品を直送したり、機材や保管場所に投資することなくオンデマンドで印刷したりできるようになっている。
WordPressのソフトウェアは、インターネット上にあるウェブサイトの26%が利用している。
同社はサンフランシスコの豪華なオフィスを閉鎖した。資金不足のためではなく(むしろきわめて大きな利益をあげている)、従業員がほとんどオフィスを使わずに家で働くようになったからだ。およそ1400平方メートルのオフィスを使う人は、1日に5人ほどにすぎなかった。
ひとりあたり280平方メートルは広すぎる。テクノロジーのおかげでどこにいても、またどのコンピュータを使っても仕事ができるので、オフィスやそれに付随するものに経費をあまり割かなくてよくなったのだ。
「社員1人、オフィスなし」の会社がシリコンバレーの会社と肩を並べられる時代
オランダのプログラマでデジタル・ノマドのピーター・レヴェルズは、従来のビジネスのやり方を疑っている。
インターネットを使って世界中のあらゆる場所で仕事をしながら(現在はタイの村にいる)、ベンチャー・キャピタルから資金援助を受けて20人を超えるチームを抱えるシリコンバレーの企業と肩を並べるほどのソフトウェアをつくっている。
ピーターはオンライン・サービス、ノマド・リスト(Nomad List)を運営し、従業員を雇わずオフィスも構えずに年間40万ドルを稼いでいる(ノマド・リストは、ノマドにとっての仕事のしやすさを基準に世界の都市をランクづけするサイトだ)。
ノマド・リストはニューヨーク・タイムズ、『WIRED』、CNN、『フォーブス』でも取り上げられてきたため、PRやマーケティングのチームも必要なく、サービスをさらによくするのに集中できる。
ピーターひとりの会社で、必要に応じて数人に業務を委託するだけなので、アイデアを思いついたらすぐにそれを実行に移せる。市場に合うか否かをテストして、合わなければすぐに方向転換することも可能だ。
ピーターは、ひとりのチームではるかに大きな企業を押しのけて業界のトップに立っている。いまは住所すらない。
既存のソフトウェアを使って自動化することで、数週間まとめてインターネットから離れて休みを取ることもできる。そのあいだも着実に収入は得られるのだ。
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PCすら持たずに外出してしまう人が「過去最高の売上」?