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社会

「男性育休の義務化」が企業にとって“メリット”しかない理由

天野妙

2020年10月15日 公開 2022年08月01日 更新

 

男性育休がもたらす変化…―時間当たりの生産性が高い働き方にシフト

では、実際に育休を取得した男性社員は、どのような変化を実感しているのでしょうか。筆者が行なった当事者へのインタビューをもとに考察します。

まず、育休を経験した多くの男性が語るのが「働き方が変わった」ということです。

製薬会社の研究員である小寺さん(38歳)もそう語った一人です。「社内で同じ立場であり、同じ給料の妻を、出産のために1年も休ませるのは申し訳ない。とはいえ自分が1年も仕事を休むなんて耐えられない……」と思った事がきっかけで、妊娠判明時に小寺さんから「僕が半分育休を取る」という申し出をし、夫婦で半年ずつ交代して育休を取りました。

社内の研究所内の男性が育児休業を取得するのは初めてのことでしたが、上司や周囲の理解もあり、取得することができました。もともと、仕事に対するモチベーションが高かった小寺さんですが、育休取得後、最も変化を感じたのは自分自身の「時間」に対する感覚だったそうです。

以前は残業に対する意識もルーズで、今思えばダラダラと場当たり的に残業していたと言います。筆者が小寺さんの上司に話を聞くと、上司からも「復職後、小寺夫妻の時間感覚がより研ぎ澄まされた感じがします」という答えが返ってきました。

また、大手通信会社の小野さん(39歳)も働き方が変わった一人です。妻の海外留学に帯同するため、育休を取得。キャリア志向だった小野さんは海外で約2年間の子育てを経験し、生活は子ども中心に変化。復職後には、終業後の18時以降は子どもとの時間を尊重したいと思うようになったと言います。

その結果、より柔軟な働き方を求めて外資系企業への転職を検討。面接の際「子どもが起きている間は家族と過ごしたい。18時以降にはオフィスを出たいが、良いか」と尋ねたところ、企業側から「結果を出すことが前提だが、成果が出やすいように仕事をしてもらってOK」との返事をもらい、転職を決めたそうです。

大手ハードウェアの会社でカスタマーサポートをする永谷さん(38歳)は元々長時間労働も惜しまず、常に職場にいる社員でした。しかし、子どもが生まれた際に妻が子育てに不安を抱いたことから1カ月半の育休を取得。

そのことをきっかけに仕事中心の生活から家庭中心の生活に変わり、復職後は早く帰って家族と過ごす時間のために、いかに仕事を効率化するか、同僚と円滑に情報共有するかを意識して働くようになったと言います。「以前の自分と比較してみると、別人のようだと思う」と語ってくれました。

いずれも、育休取得によって、上司や人事からの指示がなくとも自主的に時間当たりの生産性を意識するようになり、短い時間で効率よく働く生産性の高い働き方へシフトしたことが読み取れます。

このように、男性育休は企業・社員双方にメリットをもたらします。本記事が、男性育休について考えるきっかけになれば幸いです。

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