1. PHPオンライン
  2. くらし
  3. 動脈硬化を予防するには? 医師が推奨する「血管を強くする運動」

くらし

動脈硬化を予防するには? 医師が推奨する「血管を強くする運動」

伊賀瀬道也(愛媛大学医学系研究科教授、抗加齢予防医療センター長)

2026年05月06日 公開

動脈硬化を予防するには? 医師が推奨する「血管を強くする運動」

血管の健康は全身の健康に深く関わっています。しかし、加齢による血管の老化などが原因となり、動脈硬化が引き起こされてしまうことも。これを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?本稿では、書籍『百歳まで歩ける人の習慣』より、大血管を元気に保つために効果的な運動について解説します。

※本稿は、伊賀瀬道也著『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

大血管を元気に保つ

■血管は内膜、中膜、外膜の3層からなる

イギリスの医師トマス・シデナムの「人は血管とともに老いる」という言葉に象徴されるように、私たちの体の老化に最も大きな役割をもつのが血管です。ポンプとしての心臓が血液を送り出す量は、1回の収縮で約60〜80 cc前後ですが、この血液は秒速1.0メートル弱のスピードで大動脈に勢いよく飛び出していきます。

体の末梢まで進むと、毛細血管では秒速約1ミリメートル前後までスピードが落ちて、体の臓器に酸素などの栄養分を与えます。この役割を終えると、今度は静脈となって心臓に向かってもどってきます。

こうして、血液は1分弱で体のなかを循環します。この行程のなかで、大動脈から毛細血管までさまざまな大きさの血管が働いて、血液の成分を運んでいるのです。とくに、大動脈は高い圧に耐えながら、心臓から送り出される血液を全身に運びますので、構造も強くできています。

大動脈は、通常の動脈と同様に、内膜、中膜、外膜の3層構造になっていますが、内径は非常に大きく、胸部大動脈で約3センチメートル、腹部大動脈で約2センチメートルもあります。ちなみに、頸動脈で約1センチメートル程度です。

どの大きさの動脈でも、基本は、血液に接する内膜は1層の内皮細胞と、それを支える結合組織からなります。

昔は、内膜(内皮細胞)の機能についてあまりわかっていませんでした。でも、現在では、内皮細胞が正常に働いていれば、血液は血管内で凝固せず、血管内腔も適度な大きさに保たれることがわかっています。

中膜は、収縮ができる平滑筋細胞と、しなやかさを保つための弾性線維などからなり、血管は収縮と拡張をくりかえしながら血液を流すことで酸素や栄養素を運ぶことができます。通常は弾力性があり、しなやかですが、加齢による老化やさまざまな危険因子によって、厚く硬くなっていくのが動脈硬化です。

 

■動脈硬化になる危険因子を取り除こう

動脈硬化にはいくつかの種類があります。大動脈などの比較的太めの動脈に粥腫(じゅくしゅ/アテローム)ができるのが「粥状動脈硬化」です。内膜に血液中の悪玉コレステロールなどがもとになって粥腫ができ、その粥腫が時間をかけて増殖し、複雑な形態に隆起したプラークという病変をつくります。

プラークによって血管が狭くなることで、運動などをする際に、心臓に栄養を運ぶ冠動脈は酸素を十分に運べないため狭心症が起こります。

さらに、急激に血圧が上がるなどのなんらかのきっかけがあると、プラークが破綻(破裂)します。そこに血栓ができると、瞬時に血管が詰まり、心臓に栄養がいかなくなって心筋梗塞を引き起こします。

一方で、脳や腎臓のなかの比較的細い動脈が動脈硬化を起こした場合を「細動脈硬化」と呼びます。おもに加齢や高血圧が原因で起こります。たとえば、脳の血管で細動脈硬化が進行すると、脳の血管が破裂して脳出血を起こす可能性があります。

そのほかに、動脈の中膜にカルシウムがたまって硬くなる、「中膜硬化」(メンケルベルグ型硬化)というタイプの動脈硬化もあります。これらの動脈硬化は加齢以外に、喫煙、高コレステロール、高血圧、肥満、運動不足など、多くの危険因子が重なることによって発症しやすくなります。

まずは、健康な体を保つための"1丁目1番地"は、大血管を元気に保つことだと考えられます。

 

大血管を強くする運動

■有酸素運動では血糖や脂肪が酸素と一緒に使われる

大血管を元気にする有酸素運動として「歩く」以外にはどんなものがあるでしょうか。

たとえば、軽いサイクリング、水泳、エアロビクス、ダンスエクササイズなど、長時間継続して行える運動をやるといいでしょう。そのほか、各種球技も適しています。

有酸素運動は、比較的、運動強度の低い運動です。指標となる運動の単位に、「メッツ(METs)」があります。メッツとは、身体活動量を表すための単位です。

◉座っている状態......1メッツ
◉立っている状態......2メッツ
◉普通歩行......3メッツ
◉速歩き......4メッツ

有酸素運動の範囲としては、おおむね4メッツあたりまでです。消費カロリーが気になる人もいるかもしれないので、おおまかな計算式をあげておきましょう。

消費エネルギー(キロカロリー)=メッツ数×実施時間×体重×1.05

たとえば、体重60キログラムの人が、普通歩行1時間をした場合のカロリー消費は、

3(メッツ)×1(時間)×60(kg)×1.05=189キロカロリーになります。

 

■有酸素運動は中性脂肪や体脂肪の減少が期待できる

有酸素運動と無酸素運動のちがいについては、厚生労働省「e–ヘルスネット」から引用しておきましょう。

「負荷の比較的軽い(運動強度の小さい)運動は、筋肉を動かすエネルギーとして血糖や脂肪が酸素と一緒に使われることからエアロビクス(有酸素性運動)と呼ばれます。

一方、短距離走のように短時間で強い負荷がかかる(運動強度の大きい)運動の場合は、筋肉を動かすエネルギー源として酸素が使われないため無酸素性運動と呼ばれます。運動中に呼吸をしているかどうかという意味ではありません。

有酸素性運動は脂肪を燃料とするので、血中のLDL(悪玉)コレステロール・中性脂肪や体脂肪の減少が期待出来ますから、冠動脈疾患や高血圧などに効果があります。また運動そのものの効果として心肺機能の改善や骨粗鬆症の予防などが期待出来ます。

(中略)

通常の運動やスポーツは無酸素性運動と有酸素性運動が組み合わさっており、例えばジョギングよりもウォーキングの方が運動強度の小さい分、有酸素性運動の割合が高くなっています。この差が無酸素性運動の際に出る乳酸(疲労の原因物質)の違い≒疲労感の違いとなります。

有酸素性運動を継続して20分頃からエネルギー源が体脂肪に切り替わりますので、脂肪の減少を目的とする場合は長い時間継続出来る有酸素性運動が多いエクササイズを選ぶことが効果的です」

 

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×