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次期大統領選の結果は「分裂国家アメリカの過去」から見えてくる

水川明大

2020年10月14日 公開

 

分裂国家に立ち向かった「アメリカ建国の父」

たしかにアメリカは、建国期から南北戦争に至るまで、たえず分裂危機に曝されてきた。しかし、堅い信念をもって、アメリカの「統合」を目指した政治家もいたのである。

建国期の政治家では、初代大統領のジョージ・ワシントン、そして、その右腕として活躍したアレグザンダー・ハミルトンが挙げられる。ワシントンはともかく、ハミルトンは日本ではあまり知られていないが、現在の10ドル紙幣にその姿が描かれている、建国期の最重要人物の一人である。

彼は、天才的な先見の明と確固たる信念をもって、13のStates(州ではなく邦)の緩い連合に過ぎなかったアメリカを、強固な統合国家に作り替えようとした。

そのため、彼は、合衆国憲法制定への道を拓き、その成立に奔走し、新たな憲法で権限が付与された連邦政府(中央政府)の初代財務長官として、新生国家を財政破綻の危機から救った。しかし最期は、合衆国の分離を画策していた政敵の銃弾により非業の死を遂げている。

 

分裂は進むのか、阻止されるのか…

ハミルトンの死後も、分裂危機が訪れる度、この国にはハミルトンの衣鉢を継ぎ、連邦の維持に尽くした政治家が現れた。

南北戦争前の3度の分裂危機を防いだヘンリー・クレイ、1850年の大妥協の立役者ダニエル・ウェブスター、そして、南北戦争を乗り越え連邦の統一を守ったエイブラハム・リンカーン……彼らは、地域的な利害を超え、大衆の激情に迎合することなく、アメリカの分裂を食い止めようとした偉大な政治家だった。

アメリカが持つ「分裂国家」のDNAは、トランプという扇動政治家を生んだ。しかし、この国は、分裂国家を超克しようとする真の政治家も生んできた。合衆国憲法は次のような序文で始まっている。

『われら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここにアメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確定する。』

今後、アメリカが「より完全な連邦」へと舵を切るのか、それとも、さらに分裂への道に突き進むのか。そして、日本の将来にはどんな影響が及ぶのか……。不安と期待を抱きながら、見守っていきたいと思う。

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