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次期大統領選の結果は「分裂国家アメリカの過去」から見えてくる

水川明大

2020年10月14日 公開

次期大統領選の結果は「分裂国家アメリカの過去」から見えてくる

世界が一変してしまったコロナ禍。マスクが、アクリル板が、人と人とのつながりを断ち、ひいては社会と人とのつながりをも分断していく。そのようなコロナ禍において、貧富格差、黒人差別問題といったいくつもの暗部を曝すことになったアメリカ合衆国。

かつて、南北分断という大きな危機を乗り越え、統合国家としての道を歩んできたかに見えたアメリカは、今また、1人の大統領とともに、分裂への道筋をたどる瀬戸際にある。

トランプ大統領はアメリカ国民にとって悪魔か救世主か。アメリカは、再び分裂への坂道を転がり落ちていくのか――。11月、今後のアメリカの行方を左右する大統領選挙が行われる。『分裂国家アメリカの源流』の著者、水川明大氏に聞いた。

 

共和党と民主党の支持層は「別世界の住人」

今、アメリカ社会は深刻な分裂危機に直面していると言われている。その要因となる嫌悪・憎悪の火に油を注ぎ、分裂を助長しているのは、現職の大統領その人に他ならない。

2016年の大統領選において、対立候補のヒラリー・クリントンを「悪魔」と呼び、「監獄に入れろ」と叫んだ人物は、大統領となった今も、民主党を攻撃し続けている。

アメリカの党派対立(共和党vs.民主党)は、今や単なる政党間の抗争という枠を大きく超え、国民そのものを二極化するまでに至っている。

共和党支持層の45%、民主党支持層の41%は、相手の政党を「国に対する脅威」と見ており、共和の55%、民主の65%は、相手の政党を支持する友人がほとんどいないのが、今のアメリカの現状なのである。

なぜそんなことが起こっているのか。1つの理由として、トランプを熱烈に支持する共和党支持層の大多数は、右派のFOXニュースなどに情報源が偏っているという現状がある。

ここでは民主党寄りの見解が展開されることはほとんどなく、CNNやNYタイムズなど、民主党支持層が接する情報とはまるで違う情報をベースにした現実認識が生まれる。

結果、それぞれの党の支持層は、同じアメリカという国にいながら、お互いが別の「世界」の住人となり、共有している部分がますます無くなってしまっているのだ。まさしく「分裂国家」といってよいだろう。

 

転落への不安から起こった南北戦争

しかし、歴史を振り返ってみると、この国の分裂は今に始まったことではない。それどころか、アメリカは建国初期から著しく分裂した国家だった。 苛烈な党派対立も建国当初から存在していた。

当時は、連邦制(中央政府)の強化をはかろうとする「連邦党」(主に北部)と、州権や人民の権利を重視する「民主共和党」(南部)の対立が熾烈を極めていた。

連邦党は、民主共和党を「大衆を扇動し、フランスと結託して政府を転覆させようとする反乱分子」と見ており、一方の民主共和党は、連邦党を「イギリス寄りで、ひそかに君主制の復活を企んでいる裏切り者」と考えていた。

現在と同じように、両党とも互いを嫌悪し、「相手が独立革命の遺産の致命的な脅威になると感じていた」のだ。このように、創生期から分裂していたアメリカは、その後、3度(1819年、1832年、1850年)にわたる分裂の瀬戸際を経て、とうとう1861年、本当に分裂してしまった。

南北戦争の勃発である。こうして見ると、分裂はアメリカの宿痾と言えるだろう。60万人を超える死者を出した血みどろの南北戦争は、南部の奴隷州が合衆国を離脱したことで始まったものだが、彼ら南部人は、単に奴隷制を維持するためにそうしたわけではない。

南部人の心理の底流を流れていたのは、主流派・支配層のステータスを維持できなくなっていく不安と苛立ちだった。

南部は、1820年頃までは大統領職を独占し、下院の多数派勢力であったが、1830年代以降、北部に大量の移民が入り、その人口が増えると、連邦議会における南部の地位は下がっていった。

当然、次第に北部の望む政策が実現するようになり、南部は防戦側となっていく。こうした状況において、南部人の間に、「北部は南部を支配し、(反奴隷制を名目に)南部のすべてを押しつぶそうとしている」というパラノイア的な妄想が浸透していった。

少数派へと転落し、ジリ貧になっていくことへの不安、苛立ちが積もり、最後は暴発して合衆国からの離脱に走った。

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白人層の不満をついて支持を得たトランプ

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