拡大が止まらない「所得格差」…カール・マルクスが大著に込めた“願い”
2021年04月20日 公開 2022年10月06日 更新
資本家は“剰余価値”を上げることが宿命づけられている
自分が持つ商品を販売し、欲しい商品を得るプロセスをW(商品)→G(貨幣)→W(商品)という形で紹介されています。つまり必要なものを買うために(今持っているものを)売るプロセスです。
これに対して、より多くの貨幣を得るために行うプロセスをG(貨幣)→W(商品)→G(貨幣)と表現しています。これはいわば売るために買うプロセスになります。ここに資本の定義が込められていることに注目です。
この前後のGがもし同じ量であったとしたら、貨幣を増やす目的は果たせていません。一方で、そのプロセスを通じて貨幣を増やせたならば、より正確にはG→W→G’(つまりG+ΔG)となります。この貨幣の増加分ΔGを「剰余価値」と呼びます。
このプロセスでは、GをG’に増やすという目的が実現できています。このように貨幣を自己増殖させることを目的に取引をするための貨幣が、「資本」となります。さらにその運動をする貨幣を持つ人を「資本家」と呼びます。著者によると、資本家の目的は、この価値の増殖にあるとされています。
さらに、労働者の賃金に対する、資本家が享受する剰余価値の比率を「剰余価値率」と呼びます。(本の中では不変資本と可変資本という言葉で定義されていますが、ここでは割愛します。)
剰余価値率が高いほど一回の取引の効率が良いため、資本家は剰余価値率を上げる方向に動機づけられます。この剰余価値率の高さこそ、資本家による労働者の搾取の度合いを表現すると、著者は言うのです。
詳しくは『共産党宣言』に記載されますが、資本家階級と労働者階級を示す言葉が、かの有名なブルジョアジーとプロレタリアートです。
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「平等な社会」というマルクスの願いとピケティの答え