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拡大が止まらない「所得格差」…カール・マルクスが大著に込めた“願い”

大賀康史(フライヤーCEO)

2021年04月20日 公開 2022年10月06日 更新

拡大が止まらない「所得格差」…カール・マルクスが大著に込めた“願い”

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイス。

今回、紹介するのは『資本論』(カール・マルクス(著)、大月書店)。イギリスの産業革命後に、急拡大した"資本主義"経済。19世紀後半頃から、資本家と労働者の格差が浮き彫りになったことを受けて、思想家のカール・マルクスが資本主義を分析し、問題点を論じた一冊だ。

この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

NHK「100分de名著」で取り上げられ、見直される大著 

大賀康 『資本論』カール・マルクス著

カール・マルクス。19世紀を代表する作品とも言える『資本論』や『共産党宣言』の著者で、共産主義のイデオロギーの源になった人物とも言われています。

20世紀に共産主義そのものは衰退している一方で、今も残る思想のため、触れることが難しい本でもあります。

マルクスの主著『資本論』では、共産主義という言葉そのものはほとんど語られず、主に労働の集積としての価値の定義、資本の性質、資本家の特性というような資本主義の原理が考察されている本だと言えます。

資本主義が導く経済の発展にともない、貧困率は大幅に減りました。世界銀行の統計によると、1990年時点で36%だった貧困率は2015年には10%にまで改善しています。

一方で、国連の報告書から、同時期に先進国を中心とした世界の3分の2の国で所得格差が広がっているようです。貧困率が改善と、不平等の拡大が同時に起きています。

この不平等の拡大が資本主義の泣き所になっていて、批判を集めやすい箇所です。その痛い所の構造も、本書『資本論』は明らかにしていきます。

 

カール・マルクスの生涯

マルクスはどのような人だったのか、簡単に紹介します。

マルクスは1818年、プロイセン王国(現ドイツ)の西端のトリーアで生まれます。父はユダヤ教ラビ(宗教的指導者)の弁護士、母はオランダ出身のユダヤ教徒で、マルクスは第3子でした。6歳のときに、家族とともにプロテスタントに改宗します。

その後ボン大学とベルリン大学で、法学を学んでいきます。ただ、法学には興味があまりなかったようで、徐々に哲学に軸足を移していきます。その頃、他の裕福な家庭の子供以上のお金を使い、借金までしていたので、放蕩息子とも言えるような生活を送っています。

ヘーゲル哲学を解説しながらも、革命の思想を込めた本の出版にも関わることで、政府から危険視され、教授職や官職への道が閉ざされます。

そして、ジャーナリストを務めながら本の執筆を行い、次第に共産主義の思想を強め、革命運動に関わっていきます。プロイセン政府から目を付けられたため、無国籍者になって各地を動き回ります。

終生の地となるイギリスでは貧困外国人居住区に住んでいたように、経済的にはめぐまれていませんでした。そして1866年、『資本論』の第一巻を出版します。晩年も放浪生活が続き、1883年、64歳の生涯に幕を下ろします。

マルクスの伝記を書いたエドワード・ハレット・カーによると、「マルクスは破壊の天才ではあったが、建設の天才ではなかった。」といいます。国家体制や資本主義に対する批判が鋭く、孤高の存在だったのかもしれません。

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労働時間が価値を表すという“労働価値説”

著者紹介

フライヤー(flier)

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