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生き方

「このままでは済まねえようにしてやる」後輩・談生を先に昇進させた立川談志の真意

立川談慶(落語家)

2021年12月16日 公開

 

どうして談生を私より先に昇進させたのか

ここで今再びあの頃を思い出してみます。私より、入門3年程度の談生を先に二つ目にさせた師匠の真意って一体何だったんだろうと。

「もしかしたら、自分へのルサンチマンを増幅させることで、弟子たちを本気にさせたかったのでは」という仮説を立てています。メタ認知力が人一倍ある師匠のことです。「こう振る舞えばこう来るだろう」はお見通しのはずです。

「前代未聞の、弟弟子が先に二つ目になるという荒療治で、途轍もない悔しさをバネにして、這い上がってこい。歌舞音曲を身に付けてよかったと思う日は必ず来る。結果、俺は恨まれても構わないんだ。いいか、それが立川流なんだ」

師匠のそんな声が聞こえてくるようです。

後年「お前がどんなに嫌いな奴だったとしても、二つ目の基準を満たしていたら俺は即座に認めてやる。逆にお前がどんなに好きな奴だったとしても、二つ目の基準を満たしていなかったら、永久に認めない。俺は自分の作った基準に自分を縛っているんだ」とも言いました。やはり談志はあくまでも悪魔でも天使でもなく、天才でした。

 

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