冷やしトマトのアールグレーティー風味
料理家・樋口直哉さんが料理をつくるうえで意識する"3"。そのうちのひとつが"1皿に盛り込む食材は3種類がベスト"ということ。フランス料理の巨匠、故ジョエル・ロブションは「1皿に3つ以上の風味はいらない」と言っていたそう。
樋口さんのレシピでは、この"3"を活かした思いもよらない食材の組み合わせが登場します。トマトにアールグレイ、みかんと唐辛子、かにかまとコーヒー豆でつくるブラマンジェ……意外な組み合わせがなぜおいしいのか? その理由を樋口さんが教えてくれます。
今回は新刊『ぼくのおいしいは3でつくる 新しい献立の手引き』より、前菜1品をご紹介します。
※本稿は『ぼくのおいしいは3でつくる 新しい献立の手引き』(樋口直哉 著、辰巳出版刊)より一部抜粋/編集したものです。
食材は3つだと簡単
1皿に盛り込む食材は3種類がベストです。フランス料理界の巨匠、故ジョエル・ロブションは「1皿に3つ以上の風味はいらない」と口酸っぱく言っていましたが、一見すると複雑そうなロブションの料理ですら、風味は3つが限度なのです。ましてや、技術に劣る我々が 1皿にたくさんの食材を盛り込もうとすれば、散漫な印象になるのは当然。
定番とされている料理をよく見てみると、食材は自然と3つに落ち着いているものが多いことに気づかされます。
例えば豚の生姜焼きの風味は「豚肉」「生姜風味のソース」「キャベツの千切り」ですし、カレーはご飯とソースだけでは物足りない部分がありますが、福神漬けがあるとまとまります。もちろん、すべての料理が3つの食材で構成されているわけではありませんが、闇雲に食材を増やさないのが肝要。
食材の比率は6:3:1くらいに収めるとバランスがとれます。メインとなる食材(例えば魚)が6割であれば副食材のトマトは3、味を引き締めるアクセントになるケッパーやハーブが1というバランスです。
もちろん、この比率は5:4:1でも別に構わないのですが、主素材を引き立てる構成を心がけ、なにを食べたのかわかることが重要です。旬の食材を主役に据えれば脇を固めるメンバーは自然と決まってきます。
紅茶の風味がトマトのうま味を強調「冷やしトマトのアールグレーティー風味」
トマトと紅茶は、「共通する香り成分が含まれている食材同士は相性がよい」というフードペアリング仮説に基づいた組み合わせです。ハーブやフェノール類の風味を持つ紅茶がトマトのうま味を強調してくれます。茶葉ごと食べるので、その食感もアクセントに。
紅茶は料理に使うと意外に活躍します。ハーブ代わりの香りづけだけではなく、紅茶のタンニンが口のなかに残ったタンパク質と結合し、さっぱりさせる効果があるからです。
材料(2人分)
トマト…2個
玉ねぎ…1/4個
米酢…小さじ1
塩…ふたつまみ
はちみつ…小さじ1
オリーブオイル…大さじ1
紅茶の茶葉*…小さじ1
*ティーバッグ用の細かい茶葉を使用
玉ねぎはみじん切りにして水にさらし、キッチンペーパーで包んで絞ります。これで辛味が抜けて食べやすくなります。トマトは湯剥きするか、フォークにさしてガスコンロの直火で炙ってから皮を剥きます。ひと口大に切って、ボウルに入れましょう。
別のボウルに米酢、塩、はちみつを入れ、泡立て器で混ぜます。塩が溶けたところに、オリーブオイルを少しずつ加えながらさらに混ぜ、乳化させます。
トマトに玉ねぎ、ドレッシング、アールグレーの茶葉を加え、ざっくりと混ぜます。すぐに食べても、冷蔵庫で寝かせてもおいしいです。