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産業革命は「コーヒー」のおかげ? 世界が求めたカフェインという快楽

大宮理(河合塾講師)

2022年03月31日 公開

 

コーヒーの成分を化学する

コーヒーの成分で有名なものはカフェインです。カフェインはコーヒー豆、茶葉に多くふくまれるアルカロイド(植物体にふくまれる有機化合物)の一種で、大脳皮質を刺激します。神経の興奮を鎮め、眠気を引き起こす原因となる分子の誘導体の合成をブロックするのです。

この作用により眠気がなくなり、覚醒した感じになります。そして、膨大な数の分子がフレーバーとなって、私たちの嗅覚を刺激して快楽を生み出すのです。

チョコレートのカカオの成分であるテオブロミンと、カフェインとは、構造的にほんのささいな違いしかありません。CH3-(メチル基)があるかないかです。このほんのわずかな構造上の違いが、体内では大きな違いを生み出します。

現代では、コーヒーやカカオの生産・流通が国際的に巨大なマネーを動かし、クーデターや軍事政権を支える財源や奴隷労働を生み出しています。私たちが脳の受容体レベルで、コーヒー、チョコレートのアルカロイドなどの快楽をつかさどる分子を欲しがってしまうところが出発点なのです。

 

コーヒーは人類を救った!?

コーヒーが普及するまで、人びとが朝から飲んでいたものはビールでした。いまでは信じられないですが、老若男女、子供までが、朝からビールを飲んでいたのです。

これには理由があります。飲み水は当時、上水道が整備されていなかったので、たいへん危険でした。そこで人びとは、アルコール飲料を安全な飲み物として、朝から水分補給のために使っていました。このような不健全な生活から、コーヒーは人類をまともな社会へと更生させてくれたのです。朝からアルコールまみれでは、産業革命も起こらなかったでしょう。

例外として1人、朝からアルコール漬けになっていたために偉大な仕事を成し遂げた人がいます。20世紀のイギリスの首相ウィンストン・チャーチルです。朝からウイスキーのソーダ割りを飲み、昼はシャンパン、夜はワインと、酒のあいだにイギリスの窮地を救う仕事をしていたような人です。私から見ると、うらやましいかぎりです。

 

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