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大橋未歩「逆境を楽しむも、苦しむも、自分次第!」

大橋未歩(テレビ東京アナウンサー)

2012年03月14日 公開 2024年12月16日 更新

大橋未歩「逆境を楽しむも、苦しむも、自分次第!」

社内で孤立。台詞を「噛む」恐怖。仕事がなくなる不安。
 ――逃げなかったからこそ、得たものがありました。

テレビ東京アナウンサーの大橋未歩氏はそう語ってくれました。

アナウンサーというと、華やかな職業をイメージする人も多いでしょう。

しかし実際のところ、局の社員として働くいわゆる「局アナ」の仕事は、一般的なサラリーマンの仕事と寸分変わりません。指令とあればどんな仕事も引き受け、時には「あなたの社内での評判が非常に悪い」とはっきり忠告されます。

話すのも苦手で、何をやっても上手くいかなかった大橋氏が今、スポーツ番組からバラエティまで幅広く活躍しているのはなぜなのか?

そこには、逆境をチャンスに変える「逃げない力」があったといいます。

スポーツ選手、タレント、芸人、そして制作スタッフ……各界のプロフェッショナルとの現場で学んだ、テレビ東京ならではの珠玉の仕事術に迫ります。(写真 (C)永井浩)

※本稿は、著 『逃げない力』 (PHPビジネス新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

組織のなかで生きるということ

自分を売り込まない、すがらない。

「アナウンサーは芸者。お座敷にお呼びがかかってナンボなんだよ」

アナウンス部に配属されてすぐの頃、先輩が自嘲気味に言っていた言葉をいまでも覚えています。

数値化による客観的な評価をしにくいのが、アナウンサーという仕事です。

番組の視聴率で評価するといっても、内容や共演者によっても数字は変わるし、同じ時間帯に他局がどういった番組をやっていたかでも視聴率は影響されます。

結局は番組プロデューサーに起用されるかどうかが、アナウンサーの評価そのものだといっても過言ではありません。

「大橋とだったら気持ちよく仕事ができる」とか、「また大橋を使いたい」と思ってもらうためには、スタッフとの関係性が大きく影響します。

だからといって、仕事をもらうためにスタッフの機嫌をとったり、迎合するということでもありません。

そういった下心は相手にすぐ伝わります。それはかえって自分の品を下げてしまうと思うのです。あくまでひとりの人間として、どう振る舞うかが問われます。

若手アナウンサーの頃は、番組改編のたびにドキドキしたりワクワクしたり。キャスティングされていないと知ると、落ち込んだりしました。

しかし、中堅になってたどり着いた答えがあります。それは「キャスティングは恋愛と一緒」だということです。

選ぶ理由は、実力はもちろんのこと、外見、性格、相性、タイミングなど、いろいろありますが、結局のところは論理的に説明できる理由などほとんどありません。

「私を使ってください」とか「ずっとレギュラーでいさせてください」などと自分を売り込むのは野暮なことです。怪訝な顔をされるのがオチです。

起用する側と使われる側、どちらかの気持ちが冷めてしまったら、その時点で終わってしまう関係なのです。「大橋は次は外すから」と言われた時に、すがってしまえば逆に芽はなくなります。

だからこそ、選んでもらえる自分になる。これが唯一の答えです。つまり、自分自身を磨き、実力をつけて、声がかかるのを待つのです。

 

悪い評判は2倍速

アナウンサーは、社内でもつねにみられている存在です。

「自分がスタッフのことを知らなくても、スタッフは全員あなたのことを知っていると思え」

先輩から代々伝わるアナウンサー訓、です。

さらに教えは続きます。

「アナウンサーの悪い評判は、2倍速で社内に広がることを肝に銘じておきなさい」

たとえば、エレベーターでたまたま居合わせた相手が、自分の知らないスタッフだったとしても、相手は間違いなくアナウンサーである自分の存在を認識しています。

もしそこで、相手に挨拶をしなかったり、不快な印象を残してしまえば、その噂はあっという間に広がってしまう。

相手が2人なら4人、4人なら8人……。 新人時代のなごりで、私はいまもエレベーターでは必ずボタンの横を陣取り、率先して開閉をするようにしています。

重い荷物を持っている人などがスムーズに乗り降りできたらいいなという思いはもちろんありますが、それは同時に自分のためでもあるのです。

仕事では、出演者として、綺麗なメイクをして華やかな衣装を着せてもらってテレビに出ることもありますが、エレベーターの開閉を自分がすることで、自分は社員であり、スタッフの一員であるという自覚が促され、自分をリセットできる気がするのです。

 

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