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住所は東京都なのに「埼玉県が突き刺さった」県境の謎

田仕雅淑(たし・まさよし,イラストレーター)

2022年07月15日 公開

 

埼玉県が「突き刺さった」東京都の駅

西武池袋線秋津駅とコンビニ。県境は駅舎右側から写真奥へ行き、鋭角に戻って左のコンビニの真ん中辺りを通る。西武池袋線秋津駅とコンビニ。県境は駅舎右側から写真奥へ行き、鋭角に戻って左のコンビニの真ん中辺りを通る。

先の「西大泉町」で、「県境」にはさまざまなタイプがあるという意味がお分かりいただけただろうか。「都府県の境」としての機能は同じでも、その場所、形態は千差万別。

マニアからすると、それぞれに個性的で、同じものはどれ一つない所に魅力を感じる...前置きはこれくらいにしよう。次に紹介する県境は、あえて分類すると「駅構内を通る県境」といえるだろうか。

全国には県境をまたぐ駅というのがいくつかあるのだが、この「西武池袋線秋津駅」はなかでも特に有名な駅である。県境が店内を通るコンビニと、県境を複数回またいでいく鉄道路線、さらに「三市境」のおまけつきなのだ。

現地の訪問は簡単だ。西大泉町からなら、最寄りの西武線保谷駅から電車で10分。駅に降りたら、そこが県境スポットだ。車なら駅北口に有料駐車場がある。

秋津駅北口に出ると、すぐ東側にコンビニがあるのが見えるだろう。その辺りで、所沢市が駅に鋭角に切り込んできている。「東京都で寝ている秋津駅に、上から埼玉県所沢市というナイフが突き刺さっているような形状」といったら想像できるだろうか。

Untitled

そのナイフは駅を貫通し、駅舎の南側の辺りで止まっている。そして、ナイフの切っ先の地点が都県境であり、東京都清瀬市と東村山市の市境でもあり、所沢市と合わせて「三市境」となり、駅の反対口は違う県?!になるという訳だ。

駅北口は所沢市の"ナイフ"の中に完全に入っており、北口利用者は埼玉県側から改札を通って直接電車に乗る。北口から跨線橋を渡って南口改札へ抜けようとすれば、そこはもう東京都である。駅係員は業務中、何度も越境を繰り返すことになるだろう。なんとうらやましい。

「何度も越境」といえば、秋津駅を通る西武池袋線もそうだ。「東京都から埼玉県へ行く路線」というイメージが強いが、池袋-所沢間で実に9ヶ所も東京都と埼玉県の県境が横切っている場所がある。この事実を知らずに、日に何度も東京都と埼玉県を往復している池袋線ユーザーは多い。

残念なことに、秋津駅も県境が通るコンビニも、県境がまたいでいることをアピールするつもりはないらしく、現地に行っても県境のラインが引かれたりしていない。もし行かれたら、道路にある境界標や鉄鋲を見つけ出してそれをたどり、境界線をイメージしていただきたい。想像力は県境マニアにとって大事な素養である。

 

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