面倒なアポイントの依頼や飲み会の誘いなどがあったとき、どうすれば角を立てずに断ることが出来るのでしょうか。清水克彦氏が、面倒な誘いを婉曲に断るためのフレーズを紹介します。
※ 本稿は、清水克彦著『「ものの言い方」「文章の書き方」を知らずに大人になった人へ』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。
角を立てず、婉曲に断るテクニック
特に会いたい人でもなく、会うメリットが感じられない相手から誘われた場合、角を立てないように断る必要性が生じます。
【アポイントの依頼を婉曲に断る表現】
・「あいにく先約がありまして」
・「申し訳ございません。その日は動かせない予定が入っておりまして」
・「せっかくですが、その日は都合がつきませんもので、またお声がけください」
【会合や宴席に出席したものの途中で退席するときの表現】
・「話は尽きませんが、もう一軒回るところがございまして」
・「申し訳ございませんが、次の約束がございまして」
たいていの場合、これらの表現を覚えておけば、特に会う必要がない相手から誘われたり、お付き合いで出席せざるを得なかった会合に居続けたりすることから、自分の時間を守ることができます。
では、仕事関連でお願いをされた場合について見ていきましょう。
・「佐藤さん、このクライアント、君に担当してもらいたいのだけど」
A「できません」
・「佐藤さん、このクライアント、君に担当してもらいたいのだけど」
B「今、別件で立て込んでおりまして厳しいです」
・「佐藤さん、このクライアント、君に担当してもらいたいのだけど」
C「今、別件で立て込んでおりまして、今すぐはいたしかねます」
たとえば上司からの依頼に、「できません」と言ってしまっては身もふたもありません。上司からの依頼は業務命令ですから、できないとなると評価が下がってしまいます。
Bのように実情を説明すれば、上司は納得しやすくなりますし、Cのように「今すぐはできない」=「少し時間をくれればできる」というニュアンスであれば、上司は他の部下に仕事を回すか、少し待つなどの配慮をしてくれる可能性が高くなります。
波風を立てないよう断るのは難しいものですが、ケースごとに参考例を挙げてみます。
【上司からの依頼を婉曲に断る表現】
・「今、〇〇部長(上司にとって上役にあたる人物)からお願いされた仕事で立て込んでおりまして、今すぐは難しいのが実情です」
・「その分野の経験がなく、安請け合いしてかえってご迷惑をおかけしてはと存じます」
・「身に余るお話ですが、私、とてもその任ではございません」
・「ほかに適任者がおりますし、私のようなものがお引き受けしていいものかどうか」
・「ありがたいお話ですが、今それに取りかかるとなると、別件の納品が大幅に遅れることになりますが、どうすればよろしいでしょうか」
【取引先など社外からのオファーやお願いごとを婉曲に断る表現】
・「お役に立てず残念ですが、今回は見送らせてください」
・「考えさせていただいたのですが、その件はお役に立てそうにありません」
・「結構なお話ではありますが、時期が時期だけに難しいと思います」
・「ほかを当たっていただいたほうがよろしいかと存じます」
・「これ以上の条件(値引き、納期など)はご容赦いただけませんでしょうか」
・「物理的に厳しく、今回はお受けいたしかねます」
結論を上手に先送りするフレーズ
先の項では、私自身、日頃、番組への出演を著名人やその所属事務所にお願いする際、上手に断られ続けてきたことを参考に、断られた方が気分を害さない婉曲な表現を紹介しました。
駆け引き上手になるという点で言えば、これまで述べてきた誘い方や断り方以上に、結論を先送りするテクニックも大事になります。
A「○○さんの送別会、三案ありますがどうしましょうか?」
B「○○さんの送別会、三案ありますが、幹事権限でイタリアンにします」
C「○○さんの送別会、三案ありますが、予算なども考慮し、もう少し考えて判断することにします」
これは、同じ部署で働いてきた先輩社員が他の部署に異動する際、送別会を催すケースです。
スタッフ内で希望を募ったところ、一般的な居酒屋、おしゃれなイタリアンレストラン、それに中華料理のお店の3つが会場の候補になりました。
Aのようにすぐに結論を出そうとすると収拾がつかなくなりかねません。またBのように幹事権限という伝家の宝刀を抜いてしまえば、「居酒屋のほうが楽しいのに」といった不満を増大させてしまうかもしれません。
企画案などもそうですが、どれに一本化しても、全員が満足する解決策はありません。もっと大きな話で、自治体が行う行政施策、あるいは国と国との外交なども、すべてが丸く収まるケースは稀です。
若者の就業訓練に手厚い予算を組めば、高齢者対策が行き届かず不満の声が上がりますし、韓国や中国などとの間で領土問題を一気に解決しようとすれば、大きな軋轢が生じます。そこで結論を先送りし、一定の冷却期間を設けることが重要になってくるわけです。
【上手に先送りする表現】
・「難しい問題ですね。皆さんのご意見を参考に、私のほうで検討してみます」
・「時間も時間ですから、あらためて話し合いましょう」
・「どれも決め手に欠けますね。検討してみますので、新たな案があればお願いします」
・「いい加減な答えは出したくありませんので、また話し合いましょう」