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PTA、町内会、会社の忘年会… 「自由参加だけど義務」の矛盾が嫌悪され始めた理由

太田肇(同志社大学教授)

2022年12月12日 公開 2022年12月12日 更新

近年、PTAや町内会の制度や運営方法が問題視されている。本来なら自主的活動であるはずが、半ば強制的に参加させられている会員も少なくない。一体なぜ、このような運営体制をとっているのか。同志社大学教授の太田肇氏が、PTAと町内会の構造的矛盾について解説する。

※本稿は、太田肇著『何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造』(PHP新書)から一部を抜粋・編集したものです

 

自衛策としての「不熱心」な態度

ただ負担の大きさについていえば、PTAも町内会も、役員と一般会員との間にはかなり太い線が引ける。仕事や生活へのしわ寄せなど深刻な問題に巻き込まれるのは、主に役員である。

しかし一般会員も、本人の意思と関係なく役員を引き受けなければならない場合がある。また両者の関係は会社の上司(あるいは管理職)と部下との関係に近く、役員が張り切ってイベントを増やしたり、行事に力を入れたりすると、巻き込まれる会員たちにしわ寄せが及ぶ。

京都新聞社が2022年4月に行った調査では、PTAへの加入経験がある人のうち「活動に強制的に(やりたくないのに)参加させられたことがあるか」という質問に、「ある」と答えた人が57%と過半数に達してい(注3)る。

PTAにしても、町内会にしても、行事や活動に半ば強制的に参加させられるのは主に役員だ。そのため会員であっても、できるだけ役員になるのを避けようとする。

それでも役員の選出は回り持ちや選挙で、否応なく引き受けさせられることが多い。ただ役員のなかでもとくに負担の大きい会長などは、あらかじめ個別に依頼されるケースが少なくない。

いずれにしても活動に熱心な人ほど、役員に選ばれる可能性が高くなる。そこで、会合や活動の場では役員に選ばれるのを避けるため、できるだけ目立たないようにするのだ。

「2022年ウェブ調査」では、PTA、町内会それぞれについて「会議では、できるだけ発言しないほうがよいと思っていますか?」と聞いてみた。

すると予想どおり、PTAについては59.0%の人が「そう思う」または「どちらかといえば、そう思う」と回答した。いっぽう町内会についても57.9%の人が「そう思う」または「どちらかといえば、そう思う」と答えている。

PTAにしても町内会にしても、意識して消極的な態度を取っている会員が多い事実が明らかになった。

このことは、後述するように消極的態度をとらざるを得ない仕組みさえ見直せば、本来の趣旨に近い組織に変えられる可能性があることを示唆しているといえよう。

 

PTA、町内会の「問題の核心」

PTA、町内会に共通する問題の核心は、組織の性格に合わない運営を行ってきたところにある。

PTAや町内会は任意団体であって、本来、参加するか、しないかは自由なはずだ。しかもメンバーが自分たちの直面する問題を解決し、よりよくするための自発的・自治的な組織である。

ところが現実にはPTAは全国組織(日P)、地方ブロック、都道府県、市町村、そして各学校の単位PTA(単P)というようにヒエラルキー(階層)をなしており、主役であるべき現場のPTAは末端に位置づけられている。

町内会もまた地域単位で組織され、行政の下請的な役割も担わされているのが現状だ。そして地域住民であるかぎり会員になることが暗黙の前提とされ、役員を輪番や選挙などによって、半ば強制的に割り当てる。

つまり任意団体であるにもかかわらず、企業や行政機関などの法人と同じようにトップダウンで運営されているのである。強制力、言い換えれば権限行使の基盤を欠く組織でトップダウン型の運営をしてもうまくいくはずがない。

ちなみに私が海外諸国で聞き取りをしたかぎりでは、欧米のほか中国などでも日本のPTA、町内会のような強制色の強い組織は存在しない。地域の環境整備などは行政が責任を持って行い、その他の活動はボランティアで行うのが普通だ。

日本ではなぜこのような体制がつくられ、今日まで温存されてきたのか。背景には、つぎのような事情がある。

PTAは戦後、アメリカによる民主化政策の一環として設けられたが、子どもを取り巻く教育環境の整備と体制づくりを急ぐあまりに、全国組織を頂点とするピラミッド型の組織が形成された。いっぽう町内会は民主化の過程でいったん廃止されたものの、その後大半の地域で復活した。

PTAにしても町内会にしても、いったん体制ができると、いわゆる権力側にとって使い勝手がよい。PTAは学校の支援組織として、町内会は行政の役割を補完する組織としての役割を果たしてきただけでなく、地方議員の票田にもなったのである。

いっぽう主役であるべき保護者や住民は、役員を経験し、本来の趣旨とかけ離れた活動に不合理さを感じても、任期が1年もしくは数年とかぎられているので改革に取りかかるだけの力量が得られず、意欲もわかなかった。

たいていの人たちは「長いものには巻かれろ」でやり過ごしてきたのが現実である。

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善意と同調圧力に甘えてはいけない

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