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注目を集める「墓じまい」...都市部と地方で温度差がある理由

釋龍音(僧侶)

2023年02月13日 公開

 

遠くのお墓より近くの納骨堂

しかし、お寺のほうもさすがに時代の変化を感じとっています。その家を継いだ男子(長男)が代々お墓を引き継ぐという原則では、立ち行かなくなっていることに気づいているのです。

最近は、男子がいない家では女子が承継したり、長男に限らず、きょうだい全員そのお墓に入れたり、夫婦墓を認めるところが出てきています。また、夫と妻の両家の家名を記銘した「両家墓」もあります。

宗派にこだわらず門戸を開くお寺も増えています。

公営や民営の墓地、霊園が、宗派を問わず購入できる(法的には使用料を払う借地と同じで、使用権を買う)自由度の高さで人気があるのを見て、これはイカンと思ったのでしょうか、お寺の境内の一角に納骨堂を建てるお寺が急増しています。

いえ、境内の一角とは限りません。宗教法人が石材業者や不動産会社などと連携して、お寺の敷地とは別の場所に建てる場合もあります。納骨堂が急増しているのはニーズがあるから。

そのメリットをまとめると、

・近場ですぐにお参りできる
・お墓に比べると購入費が安い
・雨に濡れたり寒かったり暑かったりすることもなく、快適
・管理する必要がない(管理料を払うだけ)
・お墓を維持するよりずっと気楽

などが挙げられます。

納骨堂にも種類があります。大きく分けて、アナログな仏壇・ロッカー・棚に骨壺を納めるスタイルと、ICカードを読ませて参拝スペースに骨壺が運ばれてくるデジタル方式の、2つです。

都心で目下、増えているのは後者のデジタル方式。近未来のビルに仏教アートをちりばめたような造りで、音響・照明ともお金をかけているなと感じます。

骨壺を納めた容器(厨子と呼ぶところもあるようです)も蒔絵で豪華、自動搬送で参拝スペースの墓石の上に設置される様を見ると、これがこれからの潮流になるのかとさえ思えてきます。

実際に、どの電車の吊り広告にも宣伝文句が躍っているし、マーケティングのプロが運営する側にいるのでしょう、ビジネスとして稼働している印象があります。

私のように田舎の小さなお寺で、母親が門徒さんに手作りの煮〆や野菜のバラ寿司を振る舞う姿を見てきた身には縁遠い世界で、ふと心配になってしまいます。地震大国ニッポンで、また巨大台風や洪水に見舞われて、電源が喪失したら、どうなるのだろうと。

自然災害だけではありません。

つい最近、倒産した納骨堂の話がニュースになりました。2022年10月、札幌市の白鳳寺が運営する納骨堂、御霊堂元町が経営破綻し、遺骨を引き取りに来た人たちが中に入れず、宗教法人代表に説明を求めている由。

7月にその建物は競売にかけられ不動産会社が落札したのですが、その後も宗教法人の代表が納骨壇を販売し続けていたことがわかり、札幌市役所や裁判所が解決に乗り出す構えとのこと(2022年11月時点)。

この倒産の報を聞いて、青くなった宗教法人も多いのではないでしょうか。

納骨堂は、大きいところになると何千基(壇)もの容れ物を擁しています。

お寺の住職が思いついたアイデアで建設できるものではなく、建築業者や機械メーカーをはじめ、複数の利益が絡み合い、億単位のお金をかけて完成させます。従って、供給過多になると、あっという間に火の車になってしまうのです。

納骨堂を建てられるのは公益法人か宗教法人のみ。お寺にそんなお金がない時は民間企業がお寺の名義を借りて資金を出し、建設します。民間企業は営利目的なので、慈善事業としての志は低く、お骨を納めた遺族の気持ちまで推しはかることは難しいかもしれません。

経営破綻するのはデジタル方式に限りません。

市街地だから需要があるだろうと見込み、建てたものの、思うように売れなくて困っている納骨堂もあります。

少子化、多死社会、墓じまいの増加という時代の波に乗ったはいいけれど、リスクを考えなければ、大きな負債を背負うことになるのです。

2020年(令和2年)の時点で、納骨堂は全国に1万3038施設あります。それまでのお墓を閉じて納骨堂などに改葬する(遺骨を移す)件数は約12万件。

一見、改葬の受け皿は納骨堂だろうと思いがちですが、実は以前のお墓の形態から別のスタイルを選ぶ人も多いのです。

そもそも論になってしまいますが、納骨堂は本来、遺骨を安置する施設です。お骨に向かって手を合わせる(合掌する)のは、骨に魂が宿っていると考えるからでしょうか?

モニュメントとして祈りを捧げる対象はお骨だけでしょうか?

亡き人を偲び、その死を悼んで、拝む場所はほかにもあるはず。

 

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