お尻がタレる原因は骨盤の後傾と猫背
お尻の筋力が衰える根本的な原因として考えられるのが、「骨盤の後傾」「猫背」になります。骨盤は本来、床や椅子に対して平行・垂直になるポジションになくてはなりません。骨盤が後傾すると、お尻の筋肉に力が入らなくなってしまうので、徐々にお尻がタレていくのです。
骨盤が後傾した状態では、お尻の筋肉を使うことはできません。骨盤を後ろに傾けた姿勢で立ち、お尻を触ってみてください。お尻はふにゃふにゃで、筋肉にまったく力が入っていないことが分かるでしょう。
そもそもお尻の筋肉は、上半身と下半身をつないでカラダを支える役割を担っています。そのため、本来であれば、立っているときは常にお尻の筋肉に自然と力が入っているものです。
しかし、骨盤の位置が少しずつ傾いていくと、お尻は「カラダを支える」という業務をサボりはじめます。お尻がいくら仕事をしなくても立つことができるのは、カラダを支えるために太ももの筋肉やふくらはぎにある筋肉が無理をしているからです。腰やヒザへの負担が増すため、腰痛が生じたり、ヒザが痛くて歩けないといった症状も引き起こされます。
お尻がタレるのは、骨盤の後傾だけが原因ではありません。猫背になり、背中のS字カーブが崩れることでもお尻の退化は進みます。背中のS字カーブがなくなってしまうのは「背中にある筋肉」が弱ってしまうことが原因です。
背中の筋肉と言うと「広背筋」や「僧帽筋」を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、S字カーブをつくりだしているのは、こういったカラダの表面にある筋肉ではありません。
ヒトのカラダには、首から腰にかけての深部に無数の小さな筋肉が存在します。これが「深層背筋群」と呼ばれるものであり、S字カーブをつくる筋肉です。
深層背筋群は、本来、背骨をまっすぐ垂直に立てる役目を担っています。しかし、加齢によって徐々に力を失っていきやすい筋肉群でもあるのです。高齢になるにつれて背中が丸まっていったり、腰が曲がってしまうのは、深層背筋群の衰えによるものだと言えます。
美尻をキープする「歩き方」と「階段の上り方」
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【お尻を使った上り方】
ややお尻を突き出して前傾姿勢で上る。お尻を突き出すことで自ずと骨盤も前傾するので、必然的にお尻の筋肉を鍛える。
【お尻を使えていない上り方】
カラダをまっすぐに起こして階段を上ると体が後傾してしまう。結果的に太ももとふくらはぎの力に頼ることになり、お尻の筋肉を使えない。
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外回りの多い職業に従事している人や、立ち仕事の人、散歩を趣味にしている人など、日常的に立っている時間や歩いている時間が長い人は、お尻の衰えとは無関係だと思いがちです。
むしろ、それにもかかわらず、お尻がタレていくことが「不可解だ!」と思っている人も多いかもしれません。普段から歩いていたり運動をしている人でも、お尻が衰えていくのは「姿勢」と関係があるからです。
普段まったく歩かない人と、毎日歩いている人では、たしかに、後者のほうがお尻は衰えづらいと言えます。ただし「歩く姿勢」が正しければという条件つきです。
歩いてお尻を鍛えたいのであれば、まずは、そもそもの「姿勢」を改善することを優先してください。普通に立っているときにお尻を使えなければ、当然、動いているときにも使えません。理想的な姿勢が自然とつくれるようになれば、自動的にお尻を使うこともできるようになります。
健康のために、普段からエスカレーターやエレベーターを使用せず、階段の上り下りを心がけている人も多いのではないでしょうか。しかし、階段を上り終わったときに「太もも」や「ふくらはぎ」がパンパンになってツラいという人は、しっかりお尻を使えていないと言えます。
お尻をしっかりと使えている人は、お尻の力で階段を上ることができるため、疲労を感じることはありません。お尻を構成する抗重力筋は、とても持久力に優れています。また、発揮する力も大きいので階段の上り下り程度で疲れることはないのです。
一方、お尻の筋肉を正しく使えない人は、太ももとふくらはぎに頼りながら階段を上ることになります。
太ももの裏側にある筋肉と、ふくらはぎの腓腹筋は、どちらも推進筋です。推進筋は瞬発的な力はあるものの、持久力に乏しいと言えます。そのため、すぐに足が疲れてしまうのです。
また、お尻は、階段を下りるときにも活躍します。衝撃を吸収したり、バランスをコントロールしたり、ヒザを正しい位置に維持して関節を守っているのです。正しい階段の上り方や下り方を知っておけば、タレ尻を回避しながらいつまでも歩けるカラダを維持することもできるでしょう。
15分に1回立ち上がり抗重力筋をリセット
シドニー大学が行った「世界20か国における平日の総座位時間」という調査によると、日本はサウジアラビアと並んで「世界でもっとも座っている時間の長い国」だということが分かっています。
長時間座り続けると、カラダの骨格には徐々にズレが生じます。なぜなら、骨格は、カラダの表側と裏側の筋肉が均等に働くことで正しい位置を維持することができるからです。
座りっぱなしで背中が丸まっている時間が長いと、カラダが前に倒れないように必要以上に背筋が緊張します。そのため筋肉のバランスが崩れ、骨格も理想的な配列をキープできないのです。
また、座っているときは、カラダを支えるために存在する抗重力筋のスイッチが「オフ」になっています。極端な話、骨盤が椅子にのっかっているだけの状態なので、抗重力筋はどんどん弱くなり骨格にも歪みが生じていくのです。
とはいえ、一般的な社会人にとって「座っている時間を減らす」のは容易ではないでしょう。この問題は、「たまに立つ」というとても簡単な心がけで解消に導くことができます。
ただ「立つだけ」でも抗重力筋はリセット可能です。具体的には「15分に1回立ち上がる」ことが理想ですが、難しい場合は少なくとも30分に1回は椅子から立ち上がる習慣を身につけてほしいと思います。