多様性重視の時代に若者が生きる道
多様性が重要視されるようになり、個人の内発的な動機や違和感に会社でもしっかり向き合うことが求められています。ただその解釈には誤解もあります。
Z世代は仕事よりもプライベートを重視しているので、仕事へのコミットメントが弱く扱いにくいという誤解です。
Z世代や20代などの世代をくくる大きな主語で話をすると、実際は人によって違っていることを見落として、間違いが生じやすいように思います。多様性は、まさに言葉の通り、「多様」性であり、中には仕事へのやりがいや挑戦を重視している人もちゃんといて、その人に対しては適切な挑戦を与えることがむしろ求められているのです。
会社の人事戦略としては、概ね2つの方向性があるように思います。一つは、コミットメントと成長意欲の高いいわゆる優秀な人をできるだけ多く集めるように、採用活動から日々のマネジメントまで一貫した方針を持つこと。
もう一つは、会社の中でも多様性を重視して、様々な立場の人を尊重しながらしなやかに組織の形や人を変えて運営する、ということです。
どちらが良いということでもなく、いずれの運営スタイルでも過去と比較すると運営の難易度は高いと言えるでしょう。さらに、どちらかの運営方針に統一することは長期的には難しいので、双方の方針を組み合わせたハイブリッドになることが現実だと思います。
個人の選択肢が広がってよりよい世界になってきて、多くのビジネスパーソンの生き方の自由度は高まってきています。この流れは不可逆的なものに見えます。
個人の尊重と、組織のミッション達成を両立しなければいけない今の時代は、リーダーシップやマネジメントが複雑化しています。その困難な道を乗り越えるためには、まず今の20代の実態を高い解像度で把握することが求められます。
本書『ゆるい職場』は、一般的な世代論に流されず実態をよりクリアに示している点で、他の本にはない新しい気付きが得られる一冊です。