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生き方

脳科学者が分析する「運がいい人」の2つの特徴

中野信子(医学博士)

2023年10月27日 公開

運がよければ、人は幸せになれるのでしょうか? また、幸運・不運な人の間には違いがあるのでしょうか? 幸運に生きるヒントを探るために、医学博士の中野信子さんが「運」を科学的に分析します。

※本稿は、『PHPスペシャル』2023年11月号より内容を抜粋・編集したものです。

 

「ツイてる」「ツイてない」は  思い込み!

幸運・不運というのは、誰しもに公平に起きている、ということは実験的に確かめられています。しかしながら、平等に降り注いでいるそれを、しっかりと受け止めたり、拾い集めて自分のものにしたりする能力には、人によってかなりの差があるのです。これは、その人の性格傾向によって変わってくるという研究もあります。

さらに、脳科学的に見ると、人間には、よくないことがしばらく続くと「不運」、いいことが続くと「幸運」と捉えてしまう特性があります。実際は、幸運・不運の連続は偶然によって生じていても、脳はそのことを受け入れられず、どちらかに偏っているように錯覚してしまうのです。

また、運について語る際、あわせてお伝えしておきたいのは「幸運」と「幸福」はイコールではないということ。多くの人は幸運であることを望んでいますが、本当に得たいのは満足感や喜びの感情、つまり幸福感であるはずです。

ところが、脳は「ラッキー!」という一時の快感と幸福感をうまく区別できません。たとえば、甘いものを食べると脳内にドーパミンが出て一時的に快感を覚えますが、だからと言って食べ続けていると、その味に飽きてしまいますよね。一時的な「ラッキー」によって得られる快感は、回数を重ねることで薄れていくからです。

つまり、幸運に恵まれ、一時的な快感を繰り返すほど、脳は幸福を感じにくくなってしまう。だからこそ、幸運=幸福とは限らないのです。

まずは自分にとって、どんな状態が「幸福」なのかをハッキリさせておくことが大切です。そうすることで、その時々で訪れる「幸運」が自分にとって必要なものかどうかを見極め、一時の快感に振り回されることなく人生に生かしていけるようになるでしょう。

 

お金持ちは幸せなのか

「あの人、運がいいな」と言う場合の多くが、対象となる人が金銭的に恵まれていることを指しているように感じます。ここでも幸運と幸福を分けて考える必要がありますが、そもそも、お金をたくさん持っていること=幸福なのでしょうか。

本来、貨幣の定義は「物事を定量化するもの」。つまり、物やサービスの価値を決めるものです。

ところが私たちは、お金を「人間の価値を決めるもの」と思ってしまいがちです。そのため、自分よりも多く稼いでいる人を見ると、「それに比べて自分は......」と惨めになるのです。でも、いくら稼いでも、上には上がいるもの。惨めな気持ちに終わりはありません。

人間が「お金が欲しい」と思うとき、その理由は大きく分けて2つです。

1つめは、生きていくのに困っているから。この場合は、たしかにお金が必要です。

2つめは、自分の価値を認めていないから。この場合、多くのお金を稼ぎ、周囲の人に「すごい!」と尊敬されることで、自分を肯定したいという欲求が潜んでいます。けれど、お金を多く稼いだら、本当に自分を肯定できるのでしょうか。それがわからない限り、稼いでも稼いでも、砂漠に水を撒くようなものです。

「金運を上げたい」「お金をたくさん手に入れたい」と思ったときは、自分は生活に必要なお金が欲しいのか、はたまた、自分の本当の望みはお金ではないところにあるのか......などと考えてみることも、必要かもしれません。

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著者紹介

中野信子(なかの・のぶこ)

脳科学者

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所に博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。

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