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無神経な言動にモヤモヤ...「一緒にいると疲れる人」と距離を置く5つの方法

みきいちたろう(心理カウンセラー)

2024年05月24日 公開 2024年12月16日 更新

心が疲れる原因の多くは、人間関係にまつわることだと言われています。一緒にいて疲れる人とは、無理をしてつきあうよりも、上手に距離を取りながら、ほどほどにつきあうことが大切です。心理カウンセラー、公認心理師のみき いちたろうさんが人付き合いのコツをお話します。(取材・文:洪愛舜)

※本稿は、『PHPスペシャル』2024年6月号より内容を抜粋・編集したものです。

 

「友だち100人できるかな」が、人間関係の悩みを生む

自分が疲れてしまう相手とは距離を取るのが一番ですが、そんな人ともうまくつきあっていかなければと思う人が多くいます。なぜそのように考えるのかというと、日本における人間関係は、大人になっても学校時代のカルチャーがベースになっているからです。

まず小学校では、「みんな仲良くしましょう」「友だち100人できるかな」という考え方が基本で、苦手な人とも仲良くすることが求められます。

中学生くらいになると第二次性徴で心が発達して、学校での人づきあいも急激に複雑になりますが、コミュニケーションの方法について詳しく学ぶ機会はなく、我流でなんとか乗り切ろうとすることが大半です。その結果、人間関係の悩みを解決できないまま、卒業してしまうこともあります。

 

固定観念にとらわれていませんか?

「みんなと仲良くしなければならない」という固定観念や、学生のときにうまくいかなかった経験、反対にこれでうまくいったという経験が、人間関係のベースになっている人が多いのですが、大人の人間関係は自由です。

「合わない」と感じる人とは距離を置いてもいいですし、仲良くしていた人であっても、状況が変わればつきあい方を変えてもいいのです。人間関係に、「こうあらねばならない」はありません。それは、たとえ家族であっても同様です。

まずは、自分が持っている人間関係における固定観念や、学校時代のカルチャーを脱ぎ捨てたうえで、次からの基本スキルに進んでいただければと思います。

 

疲れる人と距離を置くための5つの基本スキル

固定観念を脱ぎ捨てたら、距離を取るための基本スキルを押さえましょう。

1. 無理に共感しない

近年、「共感すること」や「相手に寄り添うこと」が人間関係において大切だと言われています。もちろん、共感することが必要な場合もあります。ただ、基本的に「共感する」というのは、相手に巻き込まれている状態であり、相手を支配しようとしている人からの被害に合いやすいということも覚えておきましょう。

大切なのは、「自分」と「他者」とをしっかり区別すること。無理に相手の領域に入り、共感する必要はありません。「共感しないと冷たい人だと思われるのでは」と恐れずに、自分の気持ちを優先するようにしましょう。

 

2. 「ガットフィーリング」で判断する

「ガット」とは腸のこと。「ガットフィーリング」とは直訳すると「腸の感覚」ですが、いわゆる「腑に落ちるかどうか」ということです。

相手の言っていることが正しいか正しくないかを、頭で考えて判断しようとすると、間違えることが多いのです。そのため、頭ではなく体で判断することが大切。相手の言葉を受け入れるべきかどうかは、胸から上ではなく、へその下あたりや腸あたりの感覚で判断してみましょう。最初はよくわからないかもしれませんが、意識すればできるようになります。

 

3. 役割の範囲内で対応する

疲れる人間関係に共通しているのが、「いい関係を築きたい」「いい人でありたい」という思いから、自分の役割の範囲が無限に拡大していき、何でも受け入れなければならなくなっているところにあります。相手は受け入れてもらえるとわかると、さらに求めてくるでしょう。

「この人といると疲れるな」と感じたら、本来の自分の役割がなんであったかを思い出してください。たとえば仕事の同僚であれば、仕事に関係するときだけ。義母であれば、夫の母としてだけ。その範囲だけで対応することを徹底してみてください。

 

4. 相手の「偽ルール」に惑わされない

「常識でしょ」「これはルールだよ」と言いながら、じつはその人の個人的な感情を、ルールと称して押しつけているだけ、ということがよくあります。これを私は「偽ルール」と呼んでいます。

人は「常識」「ルール」などと言われると、「守らなければならない」という心理が働いてしまうもの。相手はその心理をうまく利用して、自分の言動を正しいことのように強弁しているのです。  

2の「ガットフィーリング」を働かせながら社会の常識と照らし合わせ、本当に正しいのか、支配しようとしているだけなのかをチェックするように心がけましょう。

 

5. ダメ出しの言葉は受け流す

一緒にいて疲れる相手は、「You are NOT OK」と、あなたにダメ出しの言葉を伝えてくることが多いのではないでしょうか。「あなたはダメだから、私の言うことを聞きなさい」と因縁をつけてきているのです。「あなたの態度に傷ついた」「あなたのこういうところが、私を不機嫌にさせている」という言葉も、要注意です。

相手は自分が優位に立つために、もっともらしい言葉でダメ出しして、あなたを支配しようとしています。どんなに信頼する人であっても、あなたを侵害する筋合いはないので、ダメ出しの言葉はすべて聞き流しましょう。

 

あなたの心を疲れさせる「要注意さん」別 対処法

一緒にいると疲れる人に対して、どのように対処すればいいのか、「依存タイプ」「モラハラタイプ」「マウントタイプ」「無神経タイプ」の4つに分けて、ご紹介します。

 

タイプ① 依存タイプ

依存する人は、依存できる相手を見極めています。正義感が強い人や、「自分が助けてあげなければ」「お世話してあげなければ」と思いがちな人は、依存されやすいので注意が必要です。

【対処法】「NO」をゆっくりと言う

一番大切なのは、相手のペースに巻き込まれないこと。相手はあなたの面倒見がいい性格や、見捨てることができない性分を見抜いて依存しているので、相手と同じペースでやり取りをしていると、距離を取ることができません。

断るときは、いったんその場を離れるなどして時間を置き、「それは私の役割ではありません」「私にはできません」などと落ち着いたトーンでゆっくりと伝えましょう。「少し冷たい人」と思われるくらいがちょうどいいです。

 

タイプ② モラハラタイプ

モラハラタイプの人は、自分だけで自分を肯定することができないので、常に満たされない気持ちを抱えています。他者に対して「NOT OK」と言うことで自分を肯定し、心を満たそうとしているのです。

【対処法】言葉を自分の中に入れない

自分を否定する人の言葉を、自分の体の中に入れないことが何よりも大切です。自宅に来客があったとき、いきなり自分の寝室まで案内する人はいないでしょう。まずは玄関先で対応しますよね。これと同様に、相手の言葉には必ずチェック機能を働かせ、自分を否定する言葉はシャットアウトすること。「アドバイスの顔をしたダメ出し」もあるので、注意しましょう。

 

タイプ③ マウントタイプ

マウントを取る人は、自分を認めてもらいたいという願望が強い人です。あなたより自分のほうが上だと顕示したいのは、あなたに対して劣等感を抱いているからかもしれません。

【対処法】漫才のように「つっこむ」

相手のマウントに対して反論すると、相手の劣等感が刺激されて、さらに状況が悪化することがあります。おすすめしたいのは、漫才のような「つっこみ」です。

「なんか上からですね!」「きついですね!」など、漫才師のつっこみを真似てみてください。「つっこみ」はハードルが高いという人は、「東大を卒業!?」「海外に!?」のように、相手の言葉をそのまま繰り返すといいでしょう。黙って聞いているのとは違って、立場を対等にする効果があります。

 

タイプ④ 無神経タイプ

無神経な人は基本的に悪気がないことが多く、自覚もないので、指摘しても変わりません。また、相手の気持ちを考えることもないので、こちらの言うことを真剣に聞こうともしないでしょう。

【対処法】「別の文化の人」と流す

無神経な人に対しては、「なんでそんなことをするんだろう」と、相手の言動について頭で分析しないことが大切です。分析している時点で、相手に巻き込まれています。

相手のことは、「別の文化の人間」と認識するといいでしょう。自分の常識や価値観だけを基準に考えるのではなく、「あの人はああいった文化で生きている。自分とは全然違う価値観を持った人」と割り切ることで、距離を取れるようになります。

 

「侵しがたい雰囲気」を身にまとおう

疲れる人間関係に巻き込まれないために、心がけてほしいことがあります。それは日頃から「侵しがたい雰囲気」を身にまとっておくことです。侵しがたい人とは、「この人は大切に扱わないと」と思わせる雰囲気のある人のことです。

そのために最も大切なのは、自分が一番、自分自身のことを大切に思うこと。「私は大切に扱われる価値のある人だ」と、心の中でいつも思っておきましょう。それだけでも、相手の対応が変わってくるはずです。

 

【みき いちたろう】
心理カウンセラー、公認心理師。大阪大学文学部卒業、大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。大手電機メーカー、応用社会心理学研究所、大阪心理教育センターを経て、ブリーフセラピー・カウンセリング・センター(B.C.C.)を設立。トラウマ、愛着障害などのケアを専門にカウンセリングを行なう。著書に『プロカウンセラーが教える 他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)などがある。

 

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