職場や学校では、苦手な人との会話を避けるのはなかなか難しいもの。冷たい人、圧が強い人...どのようにコミュニケーションをとっていけば良いのでしょうか? 本記事では、アナウンサーで声・話し方の総合プロデューサーとしても活躍する下間都代子さんが、「苦手な人との会話」で使いたい質問のコツを教えます。
※本稿は、下間都代子著『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方」(日本実業出版社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
興味ゼロから興味津々に変わるものの見方
「私の隣の席の上司がずっとつまらない話をしてくるんです。どうしたらいいですか?」
あるとき、私の生徒さんから相談を受けた。確かに、そういう人はいる。
「この人面白そうだなあ」「素敵な人だな」と、第一印象で興味を持つと、人はその人のことを「もっと知りたい」と思う。そうなると、かなり前のめりで、目を輝かせて話を聞き始める。そしてリアクションが大きくなり、相手からも好印象に見られたいがために、大袈裟に笑って喜ばせることもある。みんな本当にわかりやすいのである。
しかし逆に、大のオトナが、「相手に関心がないから」と、無表情でリアクションもしないとなると、当然のことながら相手がよほど鈍感でない限りはこう感じる。
「ボクのこの話に興味がないのかな」から始まり、そのうち「この人はボクの敵だ」となって、シャッターガラカラ。ヨロイを脱がせるどころか違う武器まで持ちだしてくるかもしれない。これを職場や接客の場、学校、家庭、男女の間、あなたにとって大切な人にやってはいけない。
よく、コミュニケーション本などで「まずは相手の良いところを褒めることから始める」と書いてあるが、それも有効な一つの方法だ。
例えば、どこにも興味をそそらないものの、唯一持っているスマホケースがイケていたならこう声をかけよう。
「それ、素敵ですね。どこで買ったのですか?」
好意的な興味から会話をスタートさせると、たいていの相手は嫌な気持ちにはならないので少し心を許してくれる。ヨロイこそまだ脱がないが、手にしていた武器は下ろすかもしれない。ただ、問題は「なんとなく苦手」「そもそも嫌い」な人と人間関係・信頼関係を構築しないといけないときだ。こういう相手と対峙したとき、まずは自分に問うてみよう。
「私はなぜこの人が苦手なのだろうか」
この「苦手な理由」をまず探すことが重要。理由は必ずしも明確でなくても良い。「雰囲気が苦手」「顔が嫌い」「声がいや」「話し方が好きになれない」など。初対面の相手の場合は性格までわからないので、このあたりが理由として浮かんでくると思う。
一方、以前から知っている相手の場合は「いつも嫌味」「不愛想」「軽薄」など、苦手な理由が山ほど出てくるかもしれない。とにかく苦手な理由を探してみて欲しい。そして次にこう考えるのだ。
「この人、なんでこんな感じになったんだろう」
お気づきだろうか。すでにこの時点で、あなたはこの人に興味・関心を抱いている。「素敵だから」「面白いから」というポジティブな興味だけでなく、このような「苦手」な点も興味の対象になる。
ここから、相手のことを「知ってみよう」「調べてみよう」「探ってみよう」という気持ちに繋げ、答え探しを、まるでゲームのように進めていけば良い。こうすれば、苦手な人の話も興味深く聞けるようになる。
ゲーム感覚で分析を楽しむ
ところで、このような「苦手な人」に興味を持ち、探っていくと、面白い発見に出会うことがある。私は年間100人以上にインタビューをしているのだが、当然、なかには「いかにも気が合わなさそうな人」もいる。
しかし、先ほどの考え方で、私はその人に興味を持ってしまう。「声が冷たいな」「愛想笑いがすごいな」「声が小さいな」「圧が強いな」などといろいろと気が合わなさそうな理由がある。
これらの印象を与える人すべてに言えること。それは「ヨロイを身につけている」ということ。それぞれのヨロイに隠された心を覗いてみよう。
・声が冷たい人...深入りされないように防御しているタイプ
・愛想笑いの人...明るいふりをしているタイプ
・声が小さい人...自信がないのか怯えている印象のタイプ
・圧が強い人......負けないように虚勢を張っているタイプみなさん大変そうだ。
なぜこんな重いヨロイをつけたまま我慢しているのかしら? と思うと、おせっかい魂に火がついて、ヨロイを脱がせてあげたくなってくる。「私はそんなあなたに興味を持っています」なんとかしてこの気持ちを伝えたい。
とはいえ「興味あります!」と単刀直入に言うと、拒絶反応を起こして、ますます防御され、心の距離が遠ざかることがあるので、まずは「無難な質問」からスタートすることが大切だ。
苦手な人への質問の方法
苦手な相手への質問はどのようにすれば良いのか説明しよう。ここで大事なのが【妄想と仮定】である。私は苦手な人ほどワクワクしてくる。自分の妄想で、その人が「なぜこんなふうになってしまったのか?」を当てにいく。いわばゲーム感覚だ。
だからこそ質問するときには、この【妄想と仮定】が欠かせない。
「この人にはもっと奥深いところに本音の感情が隠されているはず!」
「見た目とは違う何かがあるかもしれない」
「仕事とプライベートでは違う顔を持っている気がする」
このように、今まで苦手だと思っていた相手の表面的な情報だけがすべてだと思わずに、勝手に妄想し、「もしかしたらこうだったのでは?」と仮定しながら質問をしていく。この妄想は単なる「1人で心の中でやるゲーム」なので、当たらなくても構わない。それよりも【妄想と仮定】によって、相手に対して興味を持つことが大事だ。
理由はどうであれ、あなたが相手に興味を持っていることが伝わると、その相手の感情が動きだす。そして、質問をされるたびに心が動き、熱くなり...そして、「この人なら」少しヨロイを脱いでも良いかなと思い始める。
事実、私は苦手な相手、なんとなく「合わない」と感じている相手にも、まるで興味津々なふうでインタビューする。私は音声SNSで、これまで200冊を超えるビジネス書の著者にインタビューしてきた。なかには、初対面(初対話)のときに、かなり壁を感じるタイプの人もいる。そういう人にリラックスしてもらえるよう、日々心がけている。