Voice書評から
2011年01月28日 公開 2022年08月17日 更新
『ストーリーとしての競争戦略』
楠木 健 著
東洋経済新報社/2,940円(税込)
「優れた競争戦略はストーリーとして語られる」。これが本書の主張だ。それは「静止画」を「動画」にした、つながりのあるもので、「思わず人に伝えたくなる話」だという。
戦略論といえば概念提示の域を出ない類書が多いなかで、マブチモーター、ガリバーインターナショナルなどの具体例を数多く採り上げ、その背後にある競争戦略の論理を読者に語りかけるようにして、丁寧に読み解いていく。
本書のストーリーのエンディングを飾る第七章「戦略ストーリーの『骨法10ヵ条』」は必読だろう。
日本経済への悲観論とともに受け身思考の議論が蔓延するなかで、「思わず人に話したくなるようなビジネスができているか」と、自身に問う契機にもなる一冊。(T・F)
『日本を元気にする古事記の「こころ」』
小野善一郎 著
青林堂/1,890円(税込)
『古事記』は根強い人気を保ち続けている、まさに日本人の「心のふるさと」である。この古典中の古典へのアプローチは数あれど、湯島天満宮権禰宜である著者の講義をまとめた本書は、『古事記』に秘められた日本人の宗教観・道徳観を、きわめてわかりやすく解説している点で出色である。日本とは、そして日本人とは何かを考えるときに、有益なヒントに満ちた書である。(T・K)
『昭和の思想』
植村和秀 著
講談社/1,575円(税込)
「一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル神州不滅ヲ確信シツツ」という遺言を残し、昭和20年8月15日早朝、自刃した陸相・阿南惟幾。その報が伝わるや、各地の陸軍将兵の継戦意欲は一気にしぼむ。天皇を陸軍のクーデターから護ろうという忠臣の自決。その思想的な背景とは――。政治と思想が過度に密接な関係にあった昭和前期を振り返ることで、日本独自の思想がもつ可能性を探った話題作。(T・N)
『告白は12時半、辞表は金曜。』
マーク・ディー・ヴィンチェンツォ 著、飯島奈美 訳/金子哲雄 監修
マガジンハウス/1,260円(税込)
冬物の服やエアコンお得な買い時は知る人も多いだろうが、ジーンズ、パソコン、電子レンジのそれを知っている人はいるだろうか? 本書は生活のあらゆる場面をお得に過ごす知恵が詰まった一冊。「昇給を願い出る」「転職を考える」「外部と契約を結ぶ」「解雇を言い渡す」最適な時間や、ナイアガラの滝・モナリザ・ピラミッドを観にいく最高の時期など、楽しい情報が満載。(E・T)
『マボロシの鳥』
太田 光 著
新潮社/1,575円(税込)
お笑い芸人である、爆笑問題・太田光氏が書いた初の小説集。九編からなる本書は、それぞれが、まるでおとぎ話のように、汚れた世界のなかでみえなくなってしまった「希望」を導き出し、「人間」そのものを色濃く描く。テレビに映る著者からは想像できないような美しい文章で、絶望と希望をない交ぜにした、しかし、人間のなかに存在する美しさをしっかり描き、感動を与える一冊だ。(M・T)
Voice 2011年2月号
失策続きの民主党政権、新興国企業に追い上げられる日本メーカー、将来不安を増大させる医療&年金問題......2010年は暗い話題が多く、なんとなく元気を失ってしまった日本人。 そこで、今年こそ自信を取り戻すべく、『日本人を元気にする「10の特効薬」』を大特集。政治&経済から結婚&育児まで、いまの日本人が抱いている不安を「診断」し、その「処方箋」を実行すれば、2011年は必ず、自信と希望に満ちた1年になるはずだ!もう1本の特集は、「近代史に学ぶ『政治の決断』」。併せて、ご堪能ください。