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台湾人に日本食は濃い? 料理研究家・小河知惠子さんが解説「台湾の意外な食事情」

小河知惠子(台湾料理研究家)

2024年10月02日 公開 2024年10月15日 更新


市場にズラリと並んだ米や豆類

台湾料理研究家として活躍する小河知惠子さん。8月に出版した『秘密にしたい台湾のおいしいお土産』(辰巳出版)は、台湾の食に魅せられた小河さんの「台湾に来たらコレ買って帰って!」という思いが形になった一冊です。お子さんと台湾で暮らして5年が経ちます。台湾特有の食文化についてお話をうかがいました。

(撮影:五味稚子)

 

台湾と日本の家庭料理の違い


金針排骨湯(ジンジェンパイグータン) ウコンカンゾウの花とスペアリブのスープ

――日本食と台湾食の文化の違いは何ですか?

違いはいっぱいあります。

例えば米。日本で作られている米は、ほぼうるち米ともち米ですよね。台湾も主食は米ですが、主に売られているのは、うるち米、タイ米のような長細いインディカ米、丸いもち米と長細いもち米の4種類です。それぞれにちゃんと役割があって、うるち米は日本と同じように炊いていただくお米、インディカ米は砕いたり粉にしたりして使われることが多いお米です。

丸いもち米は団子や甘いお菓子にすることが多く、長いもち米はおこわやちまきなど塩気のある炊き込みごはんなどに使われます。丸いもち米でおこわを炊くことはほとんどありません。

こちらでは、米粉といえばインディカ米で作ったものが主になるのですが、その米粉を使った料理も無数にあります。

日本では、アレルギー対策や健康のため、小麦粉の代用品として米粉を使うことが多いですが、台湾では、米粉でなくては作れない料理がたくさんあり、大根餅などもそのひとつです。

また、同じ食材でも調理法が違うことが多いです。

例えば、鶏肉。日本だと、焼いたり、唐揚げにしたり、ということが多いと思いますが、台湾では新鮮な鶏肉が手に入ったら、まずスープにします。2日以上経過して鮮度が落ちてきたら、焼いたり揚げたりする、という調理法になるんです。

柔らかいブロイラーは揚げものに、歯ごたえのある地鶏はスープに、などといった使い分けの仕方もありますよ。市場で購入する時は、オスかメスか、ということも念頭に入れます。しっかり焼くなら脂が多く硬くなりにくいメス、さっぱりした蒸し物やスープなどには、筋肉質で引き締まったオスが適しています。

――調理法のお話がありましたが、家庭では、どんなものを作ることが多いですか?

やはり、スープはどの家庭でも定番のメニューです。

日本のみそ汁のように添えるものという感じではなく、一品料理として野菜や肉などがたっぷり入ったものが多いです。

調理法はけっこう豪快で、鍋や電鍋(電気鍋)に下茹でした肉を入れて、生姜や野菜類などを入れて、煮るだけ、みたいな作り方をしている人が多いですね。酒や塩などは後から加えることが多いです。
あとは、炒める料理と蒸す調理が多いです。煮込む料理も多いですが、少しだけ気合が入る、という感じでしょうか。

 

台湾料理の伝統的な味付け


魯肉飯(ル―ローファン)

――台湾で外食するとき、どういう傾向の店が人気ですか? 

全般的に薄味の店が人気です。

薄味で美味しいということは、食材が良く、下処理も丁寧で、食材のうまみが出ているということになるからです。濃い味でごまかしていない、ということでしょうか。おいしいと言われる店の多くはその傾向です。「薄味のほうが健康的」という感覚が強いのも大きな要因ですね。

日本食は台湾人には味が濃いことが多いのですが、日本食、特にラーメン屋やハンバーグ店などは人気です。また、商品名やメニューの紹介に、「北海道」や「九州」などの地名が入ると注目度が上がる傾向にあると思います。

――台湾の中でも台北と台南では味が違うものでしょうか?

日本人がイメージする台湾料理は、魯肉飯など八角や五香粉が香るものだと思います。

しかし、元々の台湾料理はほとんどスパイスを使わず、比較的甘めです。その味が台南には残っています。なので、南部の魯肉飯からは五香粉の香りがしません。

味だけでなく、料理そのものの形状が違うこともあります。例えば、南部で「魯肉飯」をオーダーすると、角煮サイズの大きいお肉がドンと乗ったご飯が出てきます。日本人が思い描く魯肉飯を食べたい場合は「肉燥飯(ロウザオファン)」という必要があります。反対に北部で「肉燥飯」というと、挽肉のような細かい肉を使った魯肉飯が出てきます。

余裕があれば、台南などにも行って、昔ながらの台湾の味を楽しんでみるのもおすすめです。

 

スープは最後の締めに。ミニトマトは果物


市場で売られている果物

――台湾で食事をするときに、マナーで気をつけることはありますか?

台湾の人たちはすごくおおらかなので、特に気をつけることはありません。お箸の持ち方は、日本人のほうがずっと上手です。

しいていえば、スープの器は手に持ちません。さらに少し年齢の高い人であれば、スープは食事の最後に飲む、といった習慣がある人が多いです。

あとは、何種類かの果物が同時に出された時は、甘くないものから食べるのがいいと思います。
例えば、ミニトマト→グァバ→マンゴーの順です。台湾ではミニトマトは果物という認識なので、ミニトマトが出てきたら、とにかく最初に食べます。マンゴーは、甘い果物の代表格なので、最後に食べるのが無難です。

マナーではなく、「甘味がわからなくなってしまう」という理由で、親しい間柄では「食べる順番間違ってるね」と笑いながら注意されることがあります。食へのこだわりが深い台湾人らしい考え方ですね。

著者紹介

⼩河知惠⼦(おがわ・ちえこ)

台湾料理研究家

料理研究家歴15 年。台湾料理と台湾が好きすぎるあまり、2019 年から幼稚園児の息⼦とともに⻑期親⼦留学中。現地発の台湾料理や⾷⽂化を研究、紹介している。NHK、⺠放問わず、多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2021 年、台湾に⽇本法⼈の駐在員事務所を設⽴。著書多数。

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