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マラソン初心者が、42.195kmを完走するには? プロが教える準備のポイント

金哲彦(プロフェッショナル・ランニングコーチ)

2024年10月25日 公開

42.195kmを走り抜けるフルマラソン。想像もできないような距離ですが、一度挑戦すると多くの人を虜にする魅力があるといいます。『PHPくらしラク~る♪』2024年11月号では、フルマラソンに挑戦するメリットや準備方法について、プロフェッショナル・ランニングコーチの金哲彦さんのお話を聞きました。

(取材・構成・文:クリエイティブ・スイート)

※本稿は、『PHPくらしラク~る♪』2024年11月号より、一部を抜粋編集したものです。

 

一度走ればやみつき「フルマラソン」の魅力

東京マラソンや大阪マラソンなど、42.195kmを走り抜けるフルマラソン大会が日本各地で行なわれています。普段、あまり運動をしていない方にとっては、40km以上の距離を走るなんて、想像できない世界かもしれません。じつは、フルマラソンは、数々のランナーを虜にする魅力のつまった競技なのです。

走ることが習慣化するなかで、健康やダイエットにつながるのはもちろんですが、ずばり、その魅力は「人生が変わる」こと。フルマラソンは楽に走りきれる距離ではありませんし、こつこつとトレーニングを積み重ねなくてはなりません。しかし、トレーニングからレース完走までを通して、たくさんの壁を乗り越えゴールしたその時、何ものにも代えがたい達成感と、大きな自信を得ることができるのです。

 

目標レース選びが完走への第一歩

「フルマラソンに挑戦しよう!」と決心したら、まずは目標にするレースを決めましょう。初心者の方は、レース当日まで半年以上の準備期間を設けておくと安心です。

レースを選ぶ際、第一に注目すべきは「制限時間」。6時間や7時間など、大きい大会になるほど、制限時間が長い傾向にあります。また、大きな大会は都市部で行なわれるため、コースの起伏が比較的少ないのも嬉しいですね。大会の特設サイトなどで、コースの高低表が出ている場合もあるので、チェックしておきましょう。

ただし、有名な大会になればなるほど、応募者も多くなります。抽選の結果、惜しくも外れてしまう、といった事態も見越して、2つほど出場レースの候補を見つけておくのもいいですね。出場レースが決まれば、あとは練習あるのみ。自分のペースで軽やかに、楽しく走り始めましょう!

 

フルマラソン挑戦のための準備とトレーニング

1. 走り出す前にそろえたいもの

▲ランニングシューズ

一般的なスニーカーとは異なり、靴底のクッションが厚く、走行時の衝撃を和らげてくれます。

▲ウェア

できれば吸汗、速乾効果のあるものを。また、冬場なら手袋などの防寒具、夏場なら帽子やサングラスなどもあるといいでしょう。

▲ランニングウオッチ

GPSを搭載していて、走った距離やコースをスマートフォンアプリで見ることができるモデルもあります。心拍数を計測して、運動の負荷を管理してくれるのも魅力です。本番のレースでも、ペース管理に役立ちます。

 

2. ウォーミングアップで身体に合図!

どんな運動にもいえることですが、ウォーミングアップは非常に重要です。身体をほぐすストレッチや、ラジオ体操などを行なって、身体に「今から動くよ!」と合図を送ることで、ケガの防止にもつながります。また、長時間走り続けられる身体をつくるために、筋トレも効果的です。

とはいえ、ムキムキになる必要はありません。軽くスクワットをして足の筋肉を鍛えたり、プランクや腹筋で体幹を鍛えたりする程度でOKです。

 

3. まずはしっかり歩くこと!

初心者がやりがちな失敗に、負荷の高いランニングから練習を始めて、数週間で膝や足首を痛めてしまう、というものがあります。ちょっと息が上がるくらいのペースで、10分間ウォーキングをするところから始めましょう。慣れてきたら、20分、30分と歩く時間を徐々に増やしていきます。

最終目標は速歩きウォーキングを1時間続けること。1時間歩き続けられれば、かなり足が動くようになっていますから、10〜15分くらいのジョギングができるようになります。

 

4. 走る距離よりも、走る時間に注目

しっかりとウォーキングができるようになったら、ランニングを始めます。これもウォーキング同様、10分、20分と走る時間を少しずつ増やしていきます。目標はやはり、1時間走り続けること。走った距離よりも、走り続けた時間に着目して、トレーニングを続けてください。

1時間ランニングができるようになったら、走った距離をもとに自分のペースを割り出してみましょう。ペースを守りながら走ることが、本番のレースでも重要になってきます。

 

みんなのフルマラソン体験記

フルマラソンに挑戦した方たちの体験談を見てみましょう!

 

【沿道からの声援が力に!】

子育てが落ち着いたのをきっかけに挑戦した東京マラソン。広い車道を駆け抜ける気持ちよさもつかの間、30kmを過ぎて「もう無理!」と思ったその時......。沿道から「お母さん頑張れ!」と家族の声が。カッコ悪いところは見せられない、と踏ん張り、笑顔で手を振って完走しました。

――金先生からのひとこと

沿道の声は、走っていても結構聞こえます。家族や知人の声はもちろん、知らない方からの応援も、とっても力になりますね。

 

【緊張と混乱でオーバーペースに......】

初めてのフルマラソンに緊張してしまい、スタート直後から周囲のランナーに引っ張られて普段よりも速いペースに。折り返し地点まではついていけたけれど、後半で何度も足がつるハプニング。ヘロヘロになりながらも、なんとか制限時間内にゴールしました。

――金先生からのひとこと

まずは、冷静に。周りのランナーより遅い気がしても、自分のペースを守れていれば問題ありません。こうした場面では、ペースを可視化してくれるランニングウオッチが活躍しますね。

 

フルマラソン Q&A

Q. 練習のモチベーションがなかなか維持できない......

A. 練習仲間をつくりましょう!

一緒に走る人がいると、ちょっと面倒だなと思う日でもサボりづらいですよね。友人や夫婦でマラソンを趣味にしてはいかがでしょうか。また、景色のきれいな公園や知らない道を探検するように走ったり、音楽やラジオを楽しみながら走ったりするのもおすすめです。

 

Q. レースの途中でリタイアしたらどうなるの?

A. 収容バスがあります。

制限時間を超過してしまったり、ケガなどのアクシデントでレース中に走れなくなったりした場合は、近くにいる係員に指示を仰ぎましょう。フルマラソンを実施する大会では、リタイアした人を拾ってゴールまで移動する収容バスが必ず用意されています。

 

Q. レース当日、走る時に持っておいたほうがいいものは?

A. 基本的に、手ぶらでOK!

手荷物はスタート地点で預けることができる大会がほとんど。スタートとゴールの位置が違っても、ゴールまで運んでくれます。飲み物や軽食はコース途中のエイドステーションで配布されますが、心配ならカロリーバーや塩飴を持っておくのもいいですね。

 

Q. みんな、走っている時何を考えているの?

A. 結構いろいろ考えています。

コースの景色や沿道の人々を観察し、ゴールが近づいてきたら、「終わったら何食べようかな」と、ゴールのその先を思い描いています。ゴールの後って何を食べてもおいしいんです。ぜひ、この達成感を味わってみてください!

 

【金哲彦(きん・てつひこ)】
プロフェッショナル・ランニングコーチ。早稲田大学時代は箱根駅伝で4年連続山上りの5区を担当。1984年、85年の2連覇に貢献。大学卒業後は(株)リクルートで選手として活躍し、現役引退後はコーチとしてトップランナーの強化に関わる。現在はプロフェッショナル・ランニングコーチとして人気を博し、マラソンや駅伝競技の解説者としてもおなじみ。『金哲彦のマラソン100日練習メニュー』(実業之日本社)など著書多数。

 

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