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「ただ休んでも疲れは取れない」 アメリカのエリートが休日は趣味に没頭する理由

河原千賀(アメリカ在住ジャーナリスト)

2026年04月06日 公開

「ただ休んでも疲れは取れない」 アメリカのエリートが休日は趣味に没頭する理由

膨大なタスクに追われ、毎日クタクタになって帰宅する......そんなビジネスパーソンは多いだろう。変わらない日々を過ごしがちだが、グーグル社員をはじめとするアメリカのビジネスエリートは、休日はダラダラせず「趣味に熱中」するという。それはいったい何故か。ロサンゼルス在住の河原千賀佳氏が解説する。

※本稿は『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)より抜粋・編集を加えたものです。

 

過酷なトレイルランの末に見えた絶景

『アラフィフからの自分探しの旅―アメリカ大自然を走る』(つむぎ書房)というタイトルの本を読み、衝撃を受けた。ロサンゼルス在住の著者・出口岳さんは、40代半ばにして、ひょんなことからランニングを始めた。

ロサンゼルスマラソン10年連続完走、スイム・バイク・ラン合計226キロのアイアンマンレース完走、そして100マイル(160キロ)レースのような過酷なトレイルランをしている。

繰り返すが、40代半ばからのスタートだった。

大企業に勤め、2児の父親でもある彼は、どのように家族との時間を大切にしながら、フルタイムで働き、レースの準備をしているのか。そのことに興味を持った

私のインタビューの要請にも気軽に応えてくれた。

日系の大手保険会社に勤務する彼は、火曜と水曜日だけオフィスに出勤。その他の曜日は自宅で働く。トレーニングは、在宅勤務時の平日夕方に10キロくらいを「さっと」走るそうだ。

土曜日は20キロから30キロ走るので、家族との朝食の時間から逆算して、早朝4時に起きる。朝食は家族と必ず一緒に取ることに決めているからだ。

そんなスケジュールなら睡眠時間が気になるところだが、毎日7、8時間しっかり眠るという。「人生で起きられる時間は決まっている」という彼なりの仮説を持っていて、長生きするためにも、睡眠時間は日々しっかり確保する。

では、なぜ走るのか。

出口さんは「理想とする自分に、一歩でも近づくため」と答える。

そんな彼のアイデンティティは、家族を大切にして、探究心を忘れない人間であること。走ることで、50代半ばにして自らの真の姿が見えてきた。

走り続けて得た自信。そして、自らを肯定する力。それは、鏡に映る自分の姿を見れば、一目瞭然だ。

初めてウエットスーツを着てウナギのように見えた過去の姿も、いまではなかなかのものだと満足している。何百時間というトレーニングを積んできた、その努力の積み重ねの成果が目でも確認できる。

当初、大海原で泳ぐのは恐怖だった。エイドステーションの栄養補給が体に合わないこともあった。職場の課題を解決するように、試行錯誤して知恵を積み重ねていった。

こうして身につけた障害を乗り越える知恵は、仕事にも活かせている。取引先を前にしたプレゼンの緊張は、大海原で泳ぐことに比べたら何てことはない、と思えるそうだ。

習慣化すること。6階のオフィスまでは階段を登る。仕事は立ったまま。スナックにはナッツ。仕事を終えて夕方のランニング。考える余地を与えず、"Just do it"。すべて、走ることを始めて得られたスキルだ。

 

「自然の中を走ると、仕事の悩みが軽減される」

もうひとつ、出口さんから聞いた印象的な話がある。

マラソンを続けていると、速く走ることに気を取られて(時計ばかりを見てしまう)、途中の景色が目に入らない。そのことに気づいてからは、森の中や海沿いのロードを選んで走るようになった。

「車に乗っていたら見えない景色に出合えると、仕事やプライベートの悩みが軽減されていく。感性が研ぎ澄まされていくような気分。あまりの美しさに涙を流すこともあった」と言う。ランニングの途中、岩の上で瞑想する日もあるそうだ。自然の中を走るメリットは、ほかにもある。

単純な反復運動をしていると、良いアイデアが浮かんだり、思いつきがあったりする。奥さんの誕生日に花をプレゼントするといった大事な約束を思い出すことも。それらを忘れないように、走りながらスマホに吹き込む。

出口さんにとって、未来は日々の積み重ねの先に存在するものなので、いまが幸せなら10年後も幸せに違いない。

考え過ぎるより、まず行動する。

出口さんにとっての自己実現とは、一つずつ楽しい「いま」を積み上げていくこと。一歩、一歩、着実に前進するマラソンのように。

彼の将来の計画は、奥さんとフランスからスペインに続く800キロの巡礼の道、カミーノ・デ・サンティアゴを歩くことだそうだ。その未来に向けて、今日も走る。

 

ただ休むだけでは「休息」にならない

週に40〜60時間もコンピュータやスマホのスクリーンを見つめていれば、心身ともにヘトヘトになってしまう。だからといって、休日にダラダラと過ごした結果、かえって疲れを感じたりしないだろうか。

アメリカでは「ディーププレイ(深い遊び)」が注目されている。本業のほかに没頭できる趣味や活動は「休息」につながるという関連性も明らかになっている。『シリコンバレー式 よい休息』(アレックス・スジョン=キム・パン著、野中香方子訳、日経BP社)によれば、ディーププレイの特徴には、次の4つが挙げられる。

1. 問題解決に、時間を忘れるほど没頭できる
2. 仕事で使うのと同じようなスキルを、違う分野で使う
3. 仕事以外のことで、仕事で得られるのと同じような報酬がある
4. プレイする人の過去と結びついている(たとえば、子どもの頃習ったバイオリンを大人になってしっかり習い直してみる)

思考停止でスマホの動画を見ているような、受け身の休息とは明らかに違う。スポーツで汗を流したり、楽器を弾くことであったり、どのような趣味であっても、仕事と同じくらいのエネルギーを使って本気で遊べば、しっかり心身を休ませられて仕事にも良い影響を与えるのだ。

 

著者紹介

河原千賀(かわはら・ちか)

ジャーナリスト

大阪府生まれ。1988年よりアメリカ在住。大谷大学短期大学部幼児教育学科、カリフォルニア州立大学心理学部卒業、同大学院教育心理学部修士課程修了。2018年より、ロス・パドレス国立森林公園内のプライペートコミュニティに在住。星空の美しい自然の中で、人間力を回復するための数々の活動を行なっている。河原氏の初の著作『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)が絶賛発売中!

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