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疲れやすい原因になる「帰宅後の過ごし方」 ベストな入浴のタイミングは?

中根一(鍼灸師)

2025年04月29日 公開

東洋医学では、「陽」が生まれれば、同じだけ「陰」が生まれ、相殺されることを通してバランスのいい状態に落ち着くものと考えています。同様に疲れ(陰)は、日々の活動(陽)の中で生み出され、そして解消されていきます。ですから、疲れることはごく自然なことであり、私たちの体とは切っても切り離せないものなのです。

そこで、本稿では鍼灸師の中根一さんが「疲れにくい体」になるために生活に取り入れたい、誰にでもできる「帰宅後の過ごし方」をご紹介します。

※本記事は中根一著『寝てもとれない疲れをとる本』(PHP文庫)の内容を一部抜粋したものです。

 

「入浴」と「食事」の順番が疲労度を決める

仕事などで外出した日、帰宅してから寝るまでの間の時間をあなたはどのように過ごしていますか?

趣味や勉強、家族団らん、翌日の準備......など、色々なことをすると思いますが、多くの方に共通するのが、

・食事
・入浴

だと思います。

入浴は体温、血流、自律神経、心理面など様々な観点から効果を求めることができるので、毎日の疲労回復にはいい習慣ですね。

もともと元気な人はこれまで通りの入浴習慣でよいのですが、「疲れやすい人」「疲れきってしまった人」や自律神経が過緊張な人は、この食事と入浴の順番を意識していただくだけで、疲れの溜まり方、抜け方が変化します。

ぜひ一度試していただきたい順番は「入浴→食事→就寝」です。これは、東洋医学はもちろん、自律神経の働き方から見ても正しい順番といえます。

 

「食事→入浴→就寝」で、疲れやすくなっていく!?

東洋医学では、「昼は筋肉を働かせ、夜は内臓を働かせる」というのが、基本的な考え方です。交感神経を働かせる「活動系の時間」と、副交感神経を働かせる「休息系の時間」を昼夜でバランスよく切り替えて、「陰陽のバランス」をとっているのです。

食事をとると、内臓が働き始め、体は消化・吸収をするためのモードに切り替わります。消化・吸収がスムーズに行なわれるのは、副交感神経が働いているときです。

睡眠に入る前には血流量が一時的に上がりますが、これは心拍数が速くなっているのではなく、副交感神経の働きによって血管が拡張している「休息モード」のサインなのです。

一方、お風呂に入ると、上がった体温を下げるために心拍が速くなり、体の表面に血流を多く循環させます。心拍が速くなるのは、交感神経が働いているときです。脈が速くなっている状態は「活動モード」ですので、温かいという感覚によって気持ちはリラックスしているけれど、体は頑張って血流を循環させているというわけなのです。

つまり、「食事=副交感神経モード」「入浴=交感神経モード」「就寝=副交感神経モード」となります。

そして、体の陰陽バランス(=自律神経)の切り替えがシンプルなほど、体はスムーズに休息モードに入ることができるので、「入浴」→「食事」→「就寝」という流れのほうが、効率のいい回復ができるのです。

都内で某製薬会社に勤務をしているCさんは、寝る前に食事をすると太ってしまうと聞いたため、会社から帰るとすぐに食事をとり、その後入浴、就寝という生活をしていたそうです。しかし、起床したときには胃がムカムカし、慢性的な疲労感を抱えていました。

そんなCさんに対して私がしたアドバイスが、「毎日を、温泉旅行にしましょう」でした。

私たちは温泉旅行に行けば、誰に教えられたわけでもなく本能的に夕食前に入浴します(もったいないから、寝る前にも入浴しちゃいますけど)。つまり、「帰宅(到着)→入浴→夕食→就寝」という、皆さんが温泉旅行でする流れを自宅でも取り入れましょう、とお伝えしたのです。

「夕食が遅くなるとますます消化不良になるのでは?」

と心配になる方もいるかもしれませんが、それは献立と量次第。ステーキやトンカツなど、消化に時間のかかるものを食べれば胃もたれしてしまうかもしれませんが、内臓を労わった軽めのメニューにすれば問題ありません。

実際にCさんにも入浴→夕食の順番にしていただき、献立を「1杯の味噌おじや」から始めてもらいました。すると、胃のむかつきが軽くなったのはもちろん、疲労も溜まりにくくなったといいます。

入浴のタイミングは、それぞれの家庭によって違いますが、今ほど日常が気忙しくなかった頃は、多くの家庭では、夕方頃に入浴し、そしてその後に夕食でした。

内科医だった私の祖父も、野球の阪神―巨人戦を観ながら夕涼みをして1杯。軽く夕食をとってから就寝していたものです。90歳まで現役を続け、96歳で逝去するまで医学書を読み続けた、滋養上手な人でした。

ちなみに、温泉の作用は、湯の効果・効能だけではありません。「心地いいシチュエーション(=あなたがどう感じるか)」もまた、重要な癒やしの効果です。ゆったり余裕のある時間の過ごし方にこそ、疲れない生活のヒントがあるのです。

 

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