家族が亡くなったら、まず行うのが葬儀の準備。突然、決めるべきことが次々に舞い込む状況に不安を感じる人も少なくないでしょう。30年以上、葬儀の現場に携わる株式会社ディライト代表・高橋亮さんは、著書『後悔しない葬儀とお墓選び』の中で葬儀やお墓に関する基礎知識や、トラブルの事例などを解説しています。
本稿ではそんな同書より、納棺から火葬までの詳しい流れをご紹介いたします。
※本稿は、高橋亮著『後悔しない葬儀とお墓選び』(クロスメディア・パブリッシング)より内容を一部抜粋・編集したものです
「納棺」の流れ
通夜の前日、または当日に、故人の身体を清め、死装束を着せて棺に納める儀式を行います。湯灌(ゆかん)という儀式を行ったり、故人がよく着ていた服に着替えさせたりすることもあります。通常、家族が立ち会い、葬儀社や納棺師の指示に従って旅立ちの準備を整えます。
「通夜」はいつ行われるか
通夜は通常、葬儀の前日の夕方に行われます。昔は親族が夜通しで故人に付き添う儀式だったことから、「通夜」と呼ばれています。現在では参列者への食事接待である「通夜振る舞い」も含めて、午後6時頃から2時間程度で終了するのが一般的です。
喪主は開始時刻の約1時間半から2時間前には式場に到着し、葬儀社と最終的な打ち合わせや準備を行います。式場スタッフとともに祭壇の飾りつけや席の配置などをチェックして、不備がないか確認します。
【供花の配置を確認する】
式場に飾られる供花(弔問に際して贈られる生花のこと)の並べ方は、葬儀当日に喪主が確認する重要事項の1つです。供花の配置には基本的なルールがあり、序列の順に内側、かつ祭壇に向かって右側から並べるのが通例です。身内や親族から贈られた花は祭壇に近い中央部に配置し、友人や職場関係者から贈られた花はその外側に並べます。こうすることで、故人と縁の深い方々の供花が目立つ位置に置かれ、序列に沿った敬意が表されます。
最終的な供花の数は当日にならないと確定しないため、配置順も当日に決定します。事前にある程度把握していても、供花の申し出や手配は葬儀当日直前まで増える可能性があり、天候や交通の事情で葬儀の開始直前に花が届くケースも考えられるためです。当日の状況を見て判断することで、全ての供花に対して失礼のない適切な配置が可能になります。
【宗教者への挨拶】
式を執り行う僧侶などの宗教者には、通夜および告別式の前に挨拶をします。「本日はどうぞよろしくお願いいたします。お勤めのほど、よろしくお願い申し上げます」などと丁寧に伝えましょう。
また、このタイミングでお布施(謝礼)をお渡しするのが一般的です。香典袋などと同様に、市販の「お布施袋」または奉書紙に現金で包んでお渡ししましょう。お布施は、告別式などがすべて終了した後に渡す場合もあります。いつ渡すべきか迷う場合は、葬儀社に相談しましょう。
式が滞りなく終わった後、可能であれば再度挨拶をします。「本日は誠にありがとうございました。おかげさまで無事に式を終えることができました」など、労をねぎらい、感謝の意を伝えます。
【参列者への挨拶(通夜)】
参列してくださった方々への挨拶も喪主や遺族の大切な務めです。読経が始まる前に来られた方には、席を立って軽く会釈をして出迎えます。読経中および焼香の時間には、参列者が焼香に来られた際に席から静かに頭を下げましょう。通夜が終わり、通夜振る舞いの席に移った後は、各卓を回り「本日はご多用のところお越しいただきありがとうございます」など感謝の言葉を伝えます。
「葬儀・告別式」の段取り
葬儀・告別式は通夜の翌日に執り行われ、火葬場の予約時間から逆算して約2時間前に開始します。喪主は開始時刻に余裕を持って式場に到着し、葬儀社と進行予定などを確認します。通夜を行っていない場合は、祭壇や供花の飾りつけや席の配置などに不備がないかも確認しましょう。
葬儀・告別式では、宗教者による読経や祈り、弔電の披露、喪主の挨拶などが行われ、故人との最後の別れの時間を持ちます。式が滞りなく終わると、棺に花などを手向けて閉棺し、ご遺体は霊柩車で火葬場へと向かいます。
【参列者への挨拶(告別式)】
参列者への対応は基本的に通夜と同様ですが、告別式では、出棺時に喪主による参列者への挨拶があります。例えば、「本日は亡き父〇〇の葬儀に際しまして、ご多用の中ご参列賜り厚く御礼申し上げます。これからも家族ともどもよろしくお願いします」など、短くまとめます。故人の生前のエピソードなどを交える場合もあります。
参列への感謝と故人への想いを簡潔に伝えるため、事前にある程度考えておくと安心です。葬儀社が一般的な内容を教えてくれる場合もあるので、不安な場合は事前に相談するとよいでしょう。
「火葬」が済んだら必要な手続き
【火葬】
遺族や親族は火葬炉の前で最後のお別れをしてから控室で待機し、火葬が終わるのを待ちます。火葬にはおおよそ1~2時間程度かかります。火葬後には収骨(遺骨を骨壷に収める儀式)を行います。日本の慣習では、2人1組で箸を使って遺骨を拾い、骨壷に収めるのが一般的です。この収骨をもって、一連の葬儀の儀式が完了します。
【埋葬許可証の発行】
火葬後、火葬場から「埋葬許可証」を受け取ります。埋葬時に必ず必要になるため、なくさないように骨壺を収める桐箱の中に入れておくのが一般的です。
【葬儀費用の支払い】
葬儀が滞りなく終了したら、葬儀社に費用を支払います。当日その場で支払う場合や、1週間や1カ月など、一定の支払い期間が設けられている場合もあります。また、前払いで全額または一部を先に支払うケースもあり、その場合は式の終了後に追加料金などを清算します。
以上が、葬儀当日における主な流れと各場面でのポイントです。葬儀は悲しみの中でも急いで進めなければならない行事です。事前に流れを把握し要所を押さえておくことで、心に余裕を持って故人と最後のお別れをすることができるでしょう。
「必ず火葬にしなければならない」決まりはない
法律上、遺体を必ず火葬にしなければならないという決まりはありません。日本では、遺体の処置方法として火葬か土葬を選択することができます。ただし、衛生上の理由から、いずれの場合も遺体は長く放置せず速やかに処置する必要があります。
とはいえ日本国内では、亡くなった方の約99パーセントが火葬によって弔われています。土葬をするには自治体の許可を受けた場所が必要で、国内では限られているためです。また、自治体の条例により、土葬禁止地域が定められている場合もあります。
一方、イスラム教では、教義により火葬が禁止されているため、日本国内でも土葬で故人を埋葬したいというイスラム教徒の方もいらっしゃいます。しかし、イスラム教徒向けの土葬が可能な霊園は非常に限られているのが現状です。
【関連情報】
『株式会社ディライト』https://delight.co.jp
『葬儀の口コミ』https://soogi.jp
『お墓の口コミ』https://oohaka.jp