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【初対面】 緊張してもうまく話せるテクニック

麻生けんたろう(ラジオDJ/パーソナルモチベーター)

2013年01月23日 公開 2024年12月16日 更新

そのためにも、まず大切なのは、相手に多くしゃべらせること。

「えっ!? 重要なのは話題選びじゃないの……?」こんな声が聞こえてきそうです。

確かに、話題選びはあなたの印象形成を左右します。

マラソン大会に出ている人に、「最近、走り始めたんですよ」と切り出せば、親しみを感じてもらえるでしょう。結果、お互いの気持ちが近づいて、その後の商談もしやすくなる。同じように、AKB48に興味のある人だったら、AKB48に絡む話から入ればいい。

ところが、相手が初対面だと、そうはいきません。

のっけから電車の中吊り広告のような話では、軽い人に見られる恐れがあります。第一印象でもっとも伝えたい「信頼感」を失いかねない。そもそも、相手の趣味、趣向などを知っているはずもない。

となると、やはり天気、天候、季節の話題が雑談には不可欠なのです。堂々と天候の話をしてください。

その代わり、同じ天気の話題でも、あなたがしゃべるのではなく、相手にしゃべらせるのです。

「今日はお時間をいただきましてありがとうございます」
「いえいえ」
「昨夜の台風は大丈夫でしたか?」
「ええ、途中、電車が止まって大変でしたけど、なんとか帰れましたね」
「うわあ……どこで止まりましたか?」
「恵比寿を出て、すぐですね。山手線に乗ってたんですけど」
「目黒との間ですか?」
「そうなんですよ。車内に閉じ込められたままになってしまって、動き出すまでに20分くらいかかりましたね」
「それは大変でしたね! 混んでいませんでした?」
「はい、20時半頃だったのでもう……」
「ラッシュですね~。それは痛い」
「ほぼ満員で、みんなため息ついてましたよ」

……先程との違いがわかりましたでしょうか。

「電車が止まって大変でしたけど、なんとか帰れましたね」の後です。

ここでの会話のターニングポイントは、「どこで止まったんだろう?」「何時頃かな?」「どんな苦労があったのかな?」と頭に引っかかるかどうか。

スルーしてしまえば場をもたせるために自分のことを話すしかないでしょう。それは、相手にとって「適当に聞いただけだな」という印象を少なからず与えます。

なるほど、言葉をきちんと受け止めて好意をつかむんだな。そのためにしゃべらせるんだな……。こう思ったあなたの推理は間違いではありません。

でも、本当の理由は別にあります。

相手の言葉から、本題につながりそうなキーワードを1つでも多くストックし、タイミングを見て、次のように展開するためです。

「ほぼ満員で、みんなため息ついてましたよ」

「それは、お疲れになったでしょうね……。でも、ご安心ください。今日は、ため息をついていただかずにすむような提案をお見せしますので!」

極端な例ですが、このように、雑談と本題を結ぶ架け橋に相手の言葉を利用するのです。

相手にとっては自分の口から出た言葉だからこそ無意識に受け入れやすく、スムーズに話を転換できます。

実はこれ、ラジオのインタビューには欠かせない技の1つです。ゲストの話に注意深く耳を傾け、キーワードを拾っておきます。キーワードさえ拾っていれば、途中どんな方向に飛んでも、最後はきれいに収められる。CM前残り30秒でも、時間内にまとめることができるのです。

とってつけたような雑談は、お互いの気持ちを近づけるどころか、逆にしらけさせてしまいますが、それは話題のせいではありません。

天気でも、芸能ネタでも、相手にしゃべらせることを忘れてしまった結果、架け橋となるキーワードを拾えていないだけなのです。

[雑談は 「that’s段!」。本題へのステップとなるキーワードを拾う。]

 

麻生 けんたろう

(あそう・けんたろう)

ラジオDJ/パーソナルモチベーター。

1967年東京生まれ。横浜育ち。東京電機大学工学部卒業後、オーディオメーカーに勤務。人見知りであがり症の営業マン時代を過ごすも、局アナをしている友人との出会いにより克服。アナウンサー養成学校に通う。
その後、札幌転勤を機に独立を決意。北海道のラジオ局を中心に喋り手として活躍。近年はその経験を活かし、話し下手で悩む企業の経営者、医療関係者をはじめ、就活生、PTAで活動する主婦など、延べ1000人以上にコミュニケーションカを伸ばす個別指導をしている。「あと1cm、相手の心に近づく」と題した講演にも定評があり、研修依頼多数。
著書に『「しゃべる」技術』『「しゃべらない」技術』(ともにWAVE出版)『さようなら!「あがり症」』(同文館出版)『「話がわかりやすい!」と言われる技術スケッチ・トーキング』(大和書房)他がある。

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