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脳疲労に「甘いもの」は逆効果 医師に学ぶ“疲れを回復する食べ方のコツ”

市原淳弘(東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科教授)

2026年02月10日 公開

「疲れたときに甘いものを食べると、疲労回復に効果がある」と思いがちですが、実は逆効果になってしまうこともある。日本高血圧学会理事などを務める市原淳弘氏は、そう語ります。

では、疲れをとるためには、どのような食事の摂り方をすればよいのか――市原淳弘氏の著書『疲れとり大図鑑』より、食べ方のコツや注意点を紹介します。

※本稿は、市原淳弘著『疲れとり大図鑑』(世界文化社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

疲れで発生した酸化ストレスを食事でカット

「なんだかいつも疲れる...」その疲労感、実は体内で起きている"炎症"のサイン。ストレスや寝不足、偏った食事が重なると、細胞内で"小さな火事"が発生します。その火種は、ミトコンドリアから生まれる「活性酸素」です。

私たちは1日約360リットルの酸素を吸っていますが、そのうち約2%──500ミリリットルのペットボトル14本分にあたる7リットルが活性酸素に変わり、細胞を傷つけて炎症を起こすのです。これが「なんとなく疲れる」の正体!

「疲れたら寝る」は正解。でもそれだけでは足りません。傷ついた細胞を修復し、体を立て直すには"材料"である栄養が不可欠。食事こそが、疲労回復の決定打なのです。

疲れのモト・活性酸素は1日7リットルも発生。睡眠や運動だけでは除去できません。唯一、栄養を摂ることが細胞修復と予防を兼ねています。だから食事こそが疲労の根本治療なのです。

【疲れをハンバーガーに見立てると...】

・上のバンズ(パン)=ストレス

日々のストレスや精神的な負担が、バーガーを上から押さえる厚いバンズとなり、疲れをがっちり閉じ込める役割。ただ、限界を超えると、厚みのボリュームが減ってストレスからの防御力が減る。

・チーズ=酸化ストレス

とろけたチーズが周囲に広がってベタつくように、活性酸素によるダメージが体中に波及して疲労を悪化させる。

・パティ(肉)=炎症

肉厚のパティの肉汁のごとく体内にじわりと広がる炎症は、疲労感をどっしりと重くさせる。その重みはほかの具材のボリュームを減らすことに。

・トマト=栄養不足

しおれて張りのないトマトは栄養が不足している状態。栄養が足りないと回復力が失われ、疲れがとれない状態が続く。

・レタス=代謝低下

シャキッと感を失った萎びたレタスは代謝低下のサイン。体がエネルギーを作り出せず、疲労が慢性化する原因に。

・下のバンズ(パン)=睡眠不足

土台である下のバンズが不安定になればバーガーが崩れるように、睡眠不足は疲労回復を妨げ、翌日まで疲れを引きずることに。

これらの具材(要因)が積み重なって最終的な「疲れ」を作り出します。具材が増えるほど、疲労感も増えます。

 

疲労を回復する「食べ方」にはコツがある

実は、食生活を少し変えるだけで、疲れがぐんと減ることがあります。ある研究では、食事を見直すだけで疲労感が44%減少したという報告も。そこで、脳・体・心、それぞれに効く"3つの食べ方ルール"をチェックしましょう。

①脳が疲れたら、"ベジ・ファースト"

白ごはんから先に食べていませんか?血糖値が急上昇・急降下し、脳が"燃料切れ"に。野菜→たんぱく質→炭水化物の順に食べると糖の吸収がゆるやかになり、集中力の低下が防げます。ブロッコリーから食べるだけで、白米の糖吸収が最大40%抑えられます。

②体がだるい日は、"30分ルール"

運動後30分以内に糖質+たんぱく質を補うと、筋肉の回復がスムーズに。バナナ2本+ギリシャヨーグルトで筋合成は3倍になるという報告もあります。

③心がしんどいときは、"腸をいたわる"

腸と脳はつながっています。発酵食品と食物繊維をとると腸内環境が整い、ストレスが32%減少したという研究も。さらに、サバやサーモンに多く含まれるオメガ3脂肪酸は脳の炎症を抑え、気持ちも軽くしてくれます。

【脳疲労メニュー】

・集中力が必要な作業は食後1時間以上経ってから。大事なタスクの1時間前にシュガーレスガムを30 分噛むと集中力向上。

・朝食や間食に加えて脳細胞の酸化ストレス軽減、記憶力や注意力を高めるブルーベリーやイチゴがおすすめ。1日あたり100g程度。

・アーモンド、クルミ、カシューナッツを食事30分前に摂取すると満腹感を高め血糖値の上昇を抑制。1日あたり20~30g。

・野菜→たんぱく質→炭水化物の順序で摂取すると食後120分の血糖が73%減少、インスリン分泌量も42%抑制。

【筋肉疲労メニュー】

・運動後30分以内にたんぱく質を摂ると筋肉の合成や修復を促す作用を最も高める。

・運動直後に糖質(おにぎり1.5個、バナナ3本程度)を食べると筋肉の再合成が3倍加速。2時間後では50%もダウン。

・糖分を液体で補給する場合5~8%の糖度が最適。10%超えると吸収速度低下。自宅なら水500ml+はちみつ大さじ2+塩ひとつまみがおすすめ

【精神疲労メニュー】

・メンタル疲労が蓄積しているときは、腸内環境を整える発酵食品やトリプトファンを含む食材がおすすめ。ヨーグルトや味噌汁、バナナ、ナッツ類などを軽めに摂ると、睡眠ホルモン「メラトニン」が脳に届きやすくなります。就寝直前は消化を妨げるため、遅くとも3時間前までに済ませるのが◎。

・オメガ3脂肪酸(サバ・鮭・くるみ)は神経細胞の修復やセロトニン分泌をサポート。最大20%回復因子が増加。

・夜遅い食事や不規則な食習慣は精神疲労を悪化させます。研究では夜8時以降の食事でうつ病リスクが1.5倍との報告も。

・トリプトファンは体内でセロトニンの前駆体になる成分。バナナ、鶏肉、乳製品に含まれ、朝食時がベスト。1日250~500mg程度を目安に。

 

「甘いもの」が疲労を増す原因になることも

疲れると甘いものが欲しくなりますよね。でも疲労回復には逆効果です。実は、摂り方には5つのポイントがあります。

①加工糖は控える

脳は1日120gのブドウ糖が必要。でも、果糖25g(飴玉6個分)でもブドウ糖に変わり脳のエネルギーに十分なります。ケーキなどの加工糖は脳疲労には逆効果です。

②16時以降の加工糖は×

夕方の糖分はメラトニンの分泌を10〜20%妨げ入眠も5〜10分遅れて結果、睡眠の質も下がります。

③起き抜けの朝ジュースは危険

空腹時に果糖を摂ると血糖が急上昇し、「ジェットコースター血糖」になるため、疲労が加速します。

④飲料の糖に注意

液体糖は固体の砂糖の3倍の速さで吸収。オレンジジュースなどは角砂糖7個分の糖量になるので注意。

⑤「甘いものは別腹」は脳に負担!

食後すぐの甘味は認知機能を20%低下。最低でも1時間あけてからが正解。

【甘いものの良い食べ方×悪い食べ方】

・バナナ:午前中の認知力約19%向上

バナナは脳のエネルギー源・ブドウ糖を含み、GI値は51と低め。血糖値の上昇もゆるやかです。食物繊維も豊富で糖質の吸収をゆっくりにします。また、疲労回復に効果のあるトリプトファンが多いので、すぐにインスリンの分泌を促し、疲れを解消できます。

・チョコ+アーモンド5粒:血糖値の上昇37%抑制

ダークチョコ25g+アーモンド5粒で血糖値の上昇を3割以上抑制!ナッツやベリー類は抗酸化力が高く、疲れたときの「おつまみ」に◎。

・ヨーグルト:就寝前に摂るとインスリンを37%改善

夕方以降はインスリンの分泌が少なくなり、糖の処理能力が低下しますが、就寝前のヨーグルトでインスリン感受性が夜間に37%改善との報告が。さらにアミノ酸豊富なヨーグルトに蜂蜜を加えると、自然な甘さとたんぱく質を同時に補給できます。

・緑茶:酸化ストレスを30%抑制

緑茶に含まれるエピガロカテキンは、デンプンを含む食事と一緒に摂ると血糖値上昇を抑制。酸化ストレスも30%抑え、疲れで炎症した脳や体に◎。

・フルーツジュースや甘い飲みものはさける

フルーツジュースなど甘い飲料は砂糖の3倍速く体内に吸収され、血糖が乱高下しやすくなります。ジュース1杯で角砂糖約7個分、スポーツドリンクは11個分も!飲み方には注意が必要です。

・疲れているときほど、"デザートは別腹を"をしない

食後すぐに砂糖たっぷりのデザートを食べると、集中力や反応速度が0.2秒ほど遅れ、脳の処理能力が2割低下します。

・16時半以降の過食は 睡眠力低下

メラトニンの分泌量が15〜20%減り、睡眠の質、時間ともに低下します。

【甘いものを食べると疲れる、これだけのこと】

・1時間後にはエネルギー切れ

甘いものは30分で元気が出ますが、1時間後には疲労に逆戻り。10分歩くほうがスナックを食べるより1.2倍エネルギーが持続し、脳も疲れにくくなります。

・72時間で脳細胞に異変!

高血糖状態が48時間続くと脳の代謝が低下し、72時間以内には細胞の生存率が下がり、細胞死の兆候が現れます。脳細胞は過剰な糖によってエネルギー生産が追いつかず、「糖のオーバードーズ」状態に陥ります。

・ミトコンドリア50%機能不全

砂糖の過剰摂取は、神経細胞のミトコンドリアが50%ほど膨張します。酸化ストレスが増加し、集中力が低下する原因になります。

著者紹介

市原淳弘(いちはら・あつひろ)

東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科教授

東京女子医科大学 高血圧・内分泌科教授。日本高血圧学会理事・評議員、日本内分泌学会評議員なども務める。慶応大学医学部卒。高血圧や内分泌疾患を診る専門医として数々の実績を重ねてきた国内屈指の存在。内分泌疾患や、高血圧を「管理する」から「治療する」、病気に変える挑戦を続けている。併せて、企業との連携で減塩食の開発に携わったり、市民向けの講座を開いたりと、様々な活動を展開。メディアでも数多く取り上げられ、反響を呼ぶ。著書に『血圧リセット術』(世界文化社)。

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