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「言いたいことが言葉にならない」がなくなる 言語化のシンプルな3ステップ

ひきたよしあき

2026年03月26日 公開

自分の気持ちをうまく言葉にできず、モヤモヤしていませんか?今日から実践できる「言語化」のコツを、ひきたよしあきさんが教えてくれます。

※本稿は、『PHPスペシャル』2026年4月号より内容を抜粋・編集したものです。

 

「言葉が出ない」のは、あなただけじゃない

目の前にある花を見て、「きれい」と口に出す。これが「言語化」です。言語化とは、頭の中にあるイメージや感情などを言葉にすることで、誰もが日常的にしていると思います。

では、その花の様子を他人に伝えるときは、どうでしょうか。「きれい」だけでなく、「花びらの形が繊細で美しい」「赤と白の色合いが鮮やか」「サイズが小さくて、かわいらしい」など、他人がその花をイメージするための情報が必要ですよね。

このように、自分の伝えたいことが相手に正しく伝わるように言語化する力を「言語化力」と言います。

現代人の言語化力は、低下の一途をたどっています。「イメージはできているのに、言葉が出てこない」「説明しても、相手にうまく伝わらない」「気持ちを表現するときに、LINEのスタンプに頼ってしまう」という人も多いのではないでしょうか。

その背景にあるのが、インターネットやスマホの急速な普及による情報化社会です。

たとえば、スタンプや絵文字など言語に代わるさまざまな表現方法でのやりとりが当たり前になったり、TikTokから日々大量のショート動画が流れてきたり……。人間は、細かいインプットの量が増えすぎると、アウトプットを面倒に感じてしまうものなのです。

また、生成AIで文章が書ける時代になり、自分の気持ちや体験を自分の言葉で語らずに済んでしまうという状況も、言語化力が下がる原因の一つです。「多様性の尊重」「顧客満足の最大化」など、巷にあふれている型にはまった言葉を入力して語った気になってしまう人も少なくありません。

今を生きる私たちは、意識して言語化力を上げていく必要があります。言語化がうまくできないと、気持ちが相手に伝わらずにモヤモヤするだけでなく、そのモヤモヤまでも頭の中に閉じ込めてしまい、ストレスを感じやすくなるからです。

とはいえ、難しく考えなくて大丈夫。簡単なトレーニングをするだけで、言語化力は必ず向上します。それではさっそく、具体的な方法を見ていきましょう。

 

言語化が苦手な人が陥りがちな3つのパターン

まずは、自分が普段どんな言葉を使っているかを振り返ってみてください。

①物事への感想が、短い形容詞になる

何かにつけて「やばい」「すごい」「かわいい」「きもい」など、反射的な一言で片づけてしまっていませんか? これらはすべて、LINEのスタンプでも代替可能な表現です。「言葉のスタンプ化」に慣れてしまうと、どんな物事や状況に出合っても、そう感じた理由などを説明できないまま、感想を一言で終わらせてしまいます。

②指示語や専門用語を頻繁に使う

自分や一部の人にしか理解できない言葉をよく使うのは、言語化力が低い人の特徴です。「これお願い」「あれが良かった」などの指示語、「シズル感」「コンバージョン」などの専門用語やビジネス用語のほか、社内でしか通用しない「社内方言」や、年齢層によって浸透の度合いが異なる「若者方言」の多用にも、注意が必要です。

③話が長くなりやすい

言語化が苦手な人ほど、「最初から話したほうがいいのではないか」「先ほどの内容は、もっと詳しく言っておこうか」などとあれこれ考えすぎて、話が長くなりがちに。結局、相手はもちろん、自分でも何を言いたいのかわからなくなってしまいます。

 

言語化力を高めるための3STEP

言語化がうまくなるヒントを、3STEPに分けて紹介します。1度きりで終わらせず、日頃から意識しておくことが大切です。

【STEP1】物事を観察し、「なぜ」を明確に

私たちがつい使ってしまいがちな「やばい」は、あらゆる状況に対して使える便利な言葉です。しかし一方で、状況や気持ちの細部が伝わらず、相手の記憶に残りづらい表現でもあります。そこで、「やばい」という言葉を使うときは、「何がどうやばいのか」を合わせて言葉にするようにしましょう。

具体的なテクニックとしては、「やばい」に2つのフレーズをつけ加えると◎。たとえば、おいしいラーメンを食べて「やばい」と思ったら、ラーメンの味や見た目をよく観察し、「なぜそう思ったか」を明確にします。

その後、「スープがさっぱりして」+「チャーシューが大きいから」+「やばい」などと言語化しましょう。「やばい」という言葉自体が悪いわけではありません。一方で、「やばい」と思った理由を深掘りするうちに、「おいしい」「すばらしい」「危ない」といった、別の表現に変わることもあるはずです。

ほかの短い形容詞についても同様です。「なぜ」を考えることを習慣にしていると、物事に対する観察眼が鍛えられ、言葉選びが上手になっていきます。

【STEP2】文章にして、声に出す

何かを語る際は、誰にでもわかる文章にして語るようにしましょう。チャットなどであれば、そこだけを読み返したときにも内容がわかるのが理想です。

たとえば「A案で!」というセリフは「私はA案のデザインが素敵だと思います」、「そんな感じ」は「私は送ってもらった写真のような色味で進めたいです」というように、面倒でも主語や述語を添えることが大切です。この作業を「プロンプト化」と言います。

プロンプト化の上達にもっとも効果的なトレーニングは、アナウンサーが行なうような実況中継です。自分の日常を細かくシナリオにするイメージで、「今、私は右手を動かしてマグカップの取っ手をつかみ、ゆっくりと口元に持っていきました」などと、自分の行動を声に出して中継しましょう。

さらに、五感を働かせて得た気づきも言葉にしていきます。「窓の外には、気持ちのよい青空が広がっています。赤い屋根の家も見えますね。窓を開けると朝の澄んだ空気の匂いがして、私は早起きして通学していた頃のことを思い出しました」といった具合です。

脳がとらえた情報を、五感を使いながらどんどん言葉にしていく。それによりプロンプト化が自然とできるようになり、言語化力がアップします。

【STEP3】伝えたいポイントを絞る

人に何かを伝えるときに長々と語っていると、相手が途中で飽きてしまったり、「結局のところ何が言いたいの?」と思われたりするものです。書いた文章も、長すぎると読んでもらえず、スルーされがちに……。

せっかく頭の中に浮かんだイメージを言葉にしても、相手に拒否されてしまっては、元も子もありません。

言語化力を向上させるための最後のSTEPは、ポイントを絞って語るということです。たくさん伝えたいことがあったとしても、あえて3つに絞るようにしましょう。

一人で過ごす時間を使って、「テレビや映画を観ておもしろかった点を3つ挙げる」「その日の楽しかったことを3つ挙げる」など、日頃からポイントを絞る練習をしておくのがおすすめです。慣れてくると、いざ他人を前にしたときも、端的な説明を難なくできるようになります。

また、頭の中がスッキリと整理されることで、自分自身の気持ちやストレスにも気づきやすくなり、毎日を快適に過ごせるようになるはずです。

 

<実践ワーク>あなたが好きなカフェを紹介してください。

ここまでに学んだことを活かして、自分のお気に入りのカフェを、相手はそのカフェについて知らないと仮定し、声に出して紹介してみましょう。紙に書き出すのでもOKです。

【悪い例】
やっと見つけたこのカフェ、やばいです! 入ってみたら、とってもかわいい。都会にありながら静かで落ち着くし、本を読んだり考えごとをしたりするのに最適です。気がついたら3時間も過ごしちゃいました。長居もしやすい。明日も行きたいと思う、まさに神カフェです!

【良い例】
ふらりと立ち寄って読書や考えごとができる場所があったらいいなと思いませんか? 私が見つけたのは、にぎやかな銀座という街にありながらも静かなカフェ。読書に適した机や、一人で落ち着ける半個室があるのは、嬉しいポイントです。あなたもきっと素敵な自分時間を過ごせると、私は思います

●解説 ここがポイント
やばい」「かわいい」「神」といった抽象的な表現に頼らず、「何がどうなのか」を具体的に説明しましょう。そのカフェが気に入った主な理由(例では、街中なのに静か・読書に適している・一人で過ごしやすい)を簡潔にまとめて伝えてください。

また、自分の感想や体験ばかりを話すのではなく、相手の存在を意識して語ることも大切です。

 

失敗しても落ち込まないで

常に適切な言語化をするのは、難しいものです。どんなに練習し、意識していても、「相手に理解してもらえなかった」「言葉選びを間違えた」など、うまくいかないことはあるでしょう。

でも、落ち込む必要はありません。言葉はあくまでコミュニケーションツールであり、相手がいる限り、「完璧」「正解」はないからです。言語化において自分一人の力で目指せるのは、せいぜい60点くらいで、残りの40点は相手側にゆだねられているということを覚えておいてください。

何より大切なのは、「どんな言葉を使えば相手に伝わるのか」を意識しながら、言語化を続けていくことです。その経験を積み重ねれば、「いつのまにか細部まで丁寧に語れるようになった」「相手に伝わる言葉が自然と出るようになった」「語彙力が増えた」など、自分自身で成長を感じられるときが必ず訪れます。

最後に、私が続けている「3行日記」をご紹介しましょう。私は1日の終わりに、言葉に関する気づきを3行の短い文にして書いています。

書き込むのは、「いいな」と思った言葉や、うまく伝わらなかった言葉など。書き溜めた日記は、自分だけの言葉辞典です。言語化力アップのための貴重な資料として活用できます。あなたもぜひ、「3行日記」をつけてみてはいかがでしょうか?

【ひきたよしあき】
早稲田大学卒業後、博報堂に入社。クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。現在はスピーチライターとして活動するほか、講演や執筆、大学での講義などを通して、コミュニケーションスキルを発信している。『人気スピーチライターが教える モヤモヤを言葉に変える「言語化」講座』(PHP研究所)など著書多数。

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