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一流コンサルは商談中に落書き? ロザン菅×安達裕哉が語る「本音」を引き出す会話術

菅広文(ロザン・お笑い芸人)、安達裕哉(ティネクト株式会社 代表取締役)

2026年04月01日 公開

左:ロザン菅広文さん、右:安達裕哉さん

「初対面の相手と話すのが苦手」「通りいっぺんの表面的な会話しかできない」。そんな悩みを抱える人は少なくありません。17年間、番組の企画で8000人以上にも及ぶ人を道案内し続け、『学力よりコミュ力』を著したお笑い芸人のロザン・菅広文さんと、一流コンサルタントとして、クライアントの「本音」を引き出す訓練を積んできた『コミュ力が高い人が話しながら意識していること』の著者・安達裕哉さん。一見、対極にあるように見える「芸人」と「コンサル」の世界ですが、実はその根底には共通するものがあったようです。

構成:次重浩子(PHPオンライン編集部)
写真:中西史也(PHP研究所/ビジネス・教養出版部)

 

オープニングで10回ボケても1個しか使われない

安達:『学力よりコミュ力』には、17年もの間、テレビ番組の企画で見ず知らずの人を道案内してきたと書いていらっしゃいますが、初対面の人とうまく話すコツってあるんですか?
実は私どもは、初対面の人とうまく話すコツって教わらないんです。というのも、基本的に黙る方が推奨されていまして、話すのは8割がお客様で、2割だけ話しなさい、と言われています。

菅:「ロザンの道案内しよ!」っていう、テレビ番組の1コーナーで、道に迷っている人を目的地まで案内する企画があるんですけど、たしかに僕らも、自分たちの話をすることはあまりないです。ロケに協力してくれている方の話を聞くようにしていますね。そこからコミュニケーションを深めていきます。

初対面の人と話すコツについては、実はぶっちゃけて言ってしまうと、最初の頃は、「この人にはもう今後会うこともないだろうし、嫌われても好かれても、僕の人生に1ミリも影響ないし」っていう捉え方をしてました。

それも間違いではないと思うんですけど、だんだん考え方が変わってくるんですよ。
道案内する時間はわずか5分程度ですが、それがいい思い出になってくれたらいいなって思うようになったんです。楽しませてあげたいっていう気持ちが勝ってきた。素直にそう思えるようになってから、番組としてうまく回っていったところはありましたね。相手のことを思う気持ちって、やっぱり大事なのかなとは思います。

安達:本の中では、道案内をする時に3つを基本にして質問をしている、と書かれていましたね。
・どこに行くつもりですか?
・なぜそこに行くのですか?
・行った後は何をしますか?
話の入り口と真ん中と出口を決めて、初対面の方を楽しませているのかなと思ったんですが。

菅:そうですね。それで言うとね、結構若手の子にやりがちなミスがあるんですよ。
ロケに行くじゃないですか。オープニングがあって、現場のロケやって、エンディングがあって、と起承転結みたいな感じで、ある程度分けられるんですけど、若い子ってオープニングでしかボケてないんです。オープニングで10回ボケたところで、その尺は限られているから1個しか使われないです。だから「うわ!たくさんボケたのに、全然使われへんかった!」ってなる。

だから、最初でも真ん中でも最後でもボケるのが大事なんです。道案内でやってることも同じで、最初だけウケても真ん中や最後がおもしろくないと、最終的には「おもしろくなかった」ってことになってしまうから、ボケを分散させるんです。

安達:そういうことなんだ。結構テクニカルなんですね。

菅:そうなんですよ。だからコンサルとはちょっと違うかもしれませんね。

 

ロザンと日帰り温泉に行きたい

安達裕哉さん

安達:コンサルで大事なのは第一印象で、そのあと変なことをしゃべってボロを出さなければ問題なく進みます。だからあまりしゃべるなと言われるんですけど。

ただ、「こいつすごいな」って思わせる重要な行為がありまして。それは「相手が考えていることを言い当てろ」ってことなんです。たとえば「社長、今売り上げの話をされていらっしゃいますけど、もしかしたら先ほど話されていた営業マンの退職率の方を悩まれている感じがしたんですが、どうでしょうか?」と。そうするとすごく信頼してもらえる。プライベートでも「こういうのを食べたいと思っているのでは?」とか、「こういうところへ行きたいと思っているのでは?」と言い当てると、相手にめちゃくちゃ刺さる。

菅:おもしろい!安達さんからしたら、そういうの結構簡単なんでしょ。

安達:実は、前の日に聞いといた(笑)

菅:でしょう!(笑)僕も道案内している人の職業を当てられるんですよ。たとえば女性を道案内する場合、ロケをだいたい火曜日の午前中にやっているので、まずは「今日はお仕事お休みですか?」って聞くんです。そうすると主婦なのか、働いている人なのかがわかる。働いている人だとわかれば、爪をきれいに切っていたら保育士さんかなとか、きれいにネイルしていたら美容師さんかな、とか。顔つきや見た目である程度わかるようになってくるんですよね。

安達:確かに。上級コンサルタントほど、言い当てが本当にうまいです。お客様が抱えている本当の課題を見つけて解決法を提案できなければ「大丈夫です。社内で対応できますので」と言われてしまって、提案書を書かせてもらえないので。

菅:ちなみにロザンをコンサルするならどうします?

安達:まずですね。一緒に温泉行きたい。

菅:裸の付き合い?本当に普段されているんですか?

安達:やっています。都内の日帰り温泉によく行きます。

菅:何がいいんですか。一緒にお風呂入るって。

安達:「うちの部長、あの時はかっこつけてあんなこと言ってましたけど、実際やってることは別なんですよ」っていうのがすごい出てきます。

菅:おもしろい!やっぱ、裸の付き合いって意味あるんやな。体つきとかも気にされるんですか。コンサルとしたらあんまり筋肉隆々やないほうがええな、ちょっと緩めにしとこうか、とか。安達さんの体が緩めやって言ってるわけじゃないですからね(笑)。そこまで考えるんかなと思って、髪の色とかもあるじゃないですか。

安達:髪の色というよりは「若く見せるな」とはよく言われましたね。若い方って細身のスーツを着たがるんです。かっこいいから。コンサルティング会社とかに入ると「イキってる」感じになっちゃうんですよ(笑)。だから、まずお前はスーツをどうにかしろ、もっと四角いスーツを着ろって言われるわけです。

菅:あー、たしかにコンサルの人って、シュッとしてるイメージありました。でも安達さん、すごい安心感ありますもん。そういう風になっていくんですね。

安達:これは本当に最初の頃に指導されます。コンサルタントはただでさえ敵を作りやすい商売で、でも敵視されてしまったら仕事ができないから、できるだけカッコつけるな、その会社の雰囲気に合わせろと。だから、工場とかにお伺いすると、ラジオ体操は絶対一緒に参加してやります。

菅:結局そこが大事なんですよね。信頼を勝ち得るっていうのが。

 

営業中に上司が横で落書きしていた

ロザン菅広文さん

菅:失礼な言い方になっちゃうんですけど、コンサルの受注営業って全戦全勝にはならないですよね。うまくいかない時はどうするんですか。

安達:大体3か月ぐらいの期間で契約をいただけるかどうかが判断されるので、だいたい2週間に1回ぐらいお邪魔して、そこの担当者とどういうやり取りをしたら信用に繋がるか、会社に持ち帰ってみんなで議論します。これ、1人でやってると鬱になっちゃうぐらい辛いんで。

相手の関係者すべてのプロフィールをチームみんなで共有していて、攻略対象の方の役割を演じてもらいながら会話をシミュレーションしてみる。それで「これならうまくいきそうだ」っていうのを次回は試す。

菅:でも、誰が交渉するかで意味合いが違ってくると思うんですけど。僕らの仕事やったら、そのセリフ、菅は言ってもええけど、(ロザンの相方の)宇治原は言ったらあかんやろ、みたいな。

安達:そこがおそらく芸人さんとの大きな違いでしょうね。コンサルは個人のコミュニケーション力に頼りません。誰がやっても通用するものを作ることを考えます。入社1年目でも、初めてのお客様でもできないといけないので、その標準化をするんです。

菅:すごい!

安達:例のひとつとして「会話をかぶせるな」って言われるんです。「これどうなさいますか」ってお客様に回答を求める時があるんですが、そういう時、相手が話し出すまで絶対黙っていなさいと。

菅:でもずっと黙ってるの大変じゃないですか?

安達:ですよね。私も上司が本当にそれをやっているかどうかチラチラ見ながら確かめたことがあります。会社さんにお伺いして、「営業の強化をしましょう」っていうご提案を差し上げたんですが、社長さんはどうしようかなって感じで考えて、ずっと黙っていらした。そしたら、私の隣にいる上司がなにか書き出したんですよね。なに書いてんのかなって思ってちらっと見たら、落書きしてるんですよ。多分、落書きするぐらい暇だったんですが、そんな時もなにもしない。相手が話すのに完全に委ねている。

菅:なるほどね。

もうひとつお聞きしたかったのは、どういう風にコミュニケーションを取ればいいか、戦略が社内に浸透してるじゃないですか。社内の上司を説得する場合はどうされてるんですか。手の内がばれてますよね。会話をかぶせないで結論を委ねられてるな、こいつ落書きしはじめたんちゃうか、とか(笑)

安達:手の内を知っているもの同士では事情が違いまして、よく「結論から言いなさい」って言うじゃないですか。部下がそれに対応して「安達さん、ちょっといいですか。あえて結論から言わないんですけど」っていう前置きをしてくる(笑)

菅:なるほど!基本をわかった上でやってるんですね。

安達:コミュニケーションがいいのか悪いのかよくわからない(笑)

菅:お笑いでいうところの「絶対ボケれるよ」っていうとこでボケない、みたいな感じですよね。ボケへんのかい!みたいな。お笑いとコンサル、違うところもあるし共通するところもあっておもしろいですね。

安達:ほんとうですね。お話していておもしろかったです。

著者紹介

菅広文(すが・ひろふみ)

ロザン・お笑い芸人

1976年、大阪府生まれ。大阪府立大学(現大阪公立大学)経済学部進学。96年、高校時代の友人である宇治原史規(京都大学法学部卒業)と「ロザン」(吉本興業所属)を結成。著書『京大芸人』『京大少年』『京大芸人式日本史』『京大芸人式 身の丈にあった勉強法』『京大中年』など「京大芸人」シリーズは累計38万部の大ヒット。YouTubeチャンネル「ロザンの楽屋」、note「ロザン菅の1000字」をほとんど毎日更新。MBS「よんチャンTV」の人気コーナー「ロザンの道案内しよ!」では17年間で8000人以上を道案内している。

安達裕哉(あだち・ゆうや)

ティネクト株式会社 代表取締役

1975年東京都生まれ。筑波大学環境科学研究科修了。Deloitteで12年間経営コンサルティングに従事し、社内ベンチャーの立ち上げにも参画。東京支社長、大阪支社長を歴任。1000社以上にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。その後独立し、オウンドメディア支援の「ティネクト株式会社」を設立。コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行なう。自身が運営するメディア「Books&Apps」は月間200万PVを超え、ソーシャルシェア数千以上のヒット記事を毎月のように公開。「ビジネスパーソンを励ますwebメディア」としておもしろく役立つコンテンツを届け続けている。2023年に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行なう「ワークワンダース株式会社」を設立。

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