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「有季定型」をどう生かすか? 夏井いつきさんが唸った、千原ジュニアさんの句集に収めた17音

千原ジュニア(芸人),夏井いつき(俳人)

2026年05月15日 公開

人気番組『プレバト!!』の俳句査定初登場から12年。永世名人・千原ジュニアさんの『句集手花火』がついに完成しました。2023年2月の放送で句集発売を目指す企画がスタートして3年。ついに掲載される50句の査定が完了したことを記念し、千原ジュニアさん、夏井いつきさん、アナウンサーの清水麻椰さんが記者からのインタビューに答えてくれました。

 

「大喜利」から「真剣勝負」へ

芸人として第一線を走り続けるジュニアさんですが、自身の句集出版や、故郷・京都府福知山市に句碑が建てられた現状に「我ながらどこに向かってるんだ」と驚いているご様子。12年前に始まった俳句との歩みを、こう振り返ります。

「最初はバラエティのオファーとして、大喜利のお題を解く感覚でした。でも、途中で『これは違うぞ、真剣に向き合わないととんでもないことになる』と気づいたんです。

僕は普通の人が大学を出るまでに学ぶ時間をほとんど通ってこなかったので、その余っていたホワイトボードが少しずつ埋まっていく感覚がありました」(ジュニアさん)

俳句を始めて日常に変化はあったか問われると「まさか52歳になって、自分がお花を愛でるようになるとは思わなかった」と話し、場を和ませました。

かつては「プレッシャーバトル(プレバト)」の重圧につまずき、楽しかった俳句が苦痛に感じた時期もあったと言います。しかし、50句を詠み終えた今は「のびのびと楽しく詠めていた、あの頃の自分に戻れた」と、晴れやかな表情を見せました。

 

「最初はひどいもんだった」夏井いつき先生が感じた成長ぶり

師である夏井いつき先生は、ジュニアさんの成長を「一番切り替えが早かった」と評します。

「最初の一句目は大層ひどいもんでした。滝の写真に対するお題で『蛇口を閉めたか考える』という、ただのネタにしか過ぎないようなものでしたから。

そこから、俳句に何を求められているのかを理解するスピードが一番早かったんじゃないかと思います。

一時期は言いたいことを17音に詰め込みすぎる時期もありましたが、言葉の質量を理解してからは一気に伸びました。最終的に、季語を大切にする『有季定型』の王道を選び取ってくれたことは、私にとってささやかな驚きであり、喜びでもありました」(夏井さん)

夏井先生は「真面目に勉強する人が大好き」と語り、ジュニアさんを「大好きな教え子の一人」として、梅沢富美男さんに続く二人目の句集完成を心から祝福しました。

 

俳句をはじめてライフスタイルにも変化が...

自身の芸風を「リズムや動きではなく、どちらかと言えば『言葉の芸人』」と語るジュニアさん。「知らない言葉を知っていく楽しみ、喜びがある」と明かしてくれ、俳句を続けてこられた必然性も感じさせます。

また、12年前に俳句を始めて、ライフスタイルも変わったと話します。

「長い芸能生活、手ぶらでやってきたんです。それが、歳時記を持ち歩くためにカバンを購入したんです。さすがに歳時記を素手で持っているのはどうかと思いますから(笑)。

自分の芸にどう影響しているかは分かりませんが、ポロッと出るワードに、今まで使っていなかった言葉が混ざるようにはなりましたね」(ジュニアさん)

共演者の中で一目置いている存在について問われると、FUJIWARA・藤本敏史さんをあげました。

「フジモンはリズムの芸人なのに言葉を操れるようになり、お笑いの欲が広がっている。ただ、人間としては非常に間違っている」とジュニアさんらしい毒舌で笑いを誘う場面もありました。

 

句集タイトル「手花火」に込めた想い

句集のタイトルにもなった「手花火」という句には、ジュニアさんの特別な思いが込められています。

「自分の中で冒険した句で、許されるのかなと思っていたら、そこを評価していただけた。皆さんからも一番感想をいただいた思い出深い句なので、(句集のタイトルは)これに決めました」(ジュニアさん)

また、数ある査定の中でも俳句にのめり込んだ理由を問われると、夏井先生への絶対的な信頼を口にしました。

「正直、他ジャンルでは『俺の方がええやん』と思って辞めたこともあったんです(笑) 先生の添削に関してはそれがない。絶対に先生の言う通り。ぐうの音も出ないほど、添削していただいたやつがめちゃくちゃ良いんです」(ジュニアさん)

 

17音の中で季語が発揮する力を理解している

50句という大きな区切りを迎えましたが、今後の展望について問われると、夏井先生は「ここから先が長く続いていく」と期待を寄せました。

「お二人(ジュニアさんと梅沢さん)には、もっと多くの句をまとめて、ぜひ俳人として俳句界にデビューしていただきたい。その時は、私が前書きを書かせていただきます」(夏井さん)

ジュニアさんも「またゼロから50句と言われれば、非常にやりがいがあります」と、さらなる挑戦に意欲を見せました。

また、「ジュニアさんの句の素晴らしさや感性の良さはどこにあるのか」と問われた際、夏井先生はジュニアさんが永世名人の座を掴み取った核心について、「骨法(こっぽう)」という言葉を用いてこう分析しました。

「ジュニアさんは、俳句の基本的な骨法、つまり何が一番大事かというのを本当に押さえてくださっています。季語を大切にする立ち位置から、自由律や無季の俳句まで幅は広いですが、ジュニアさん自身は、季語というものが17音の中でいかに大きな力を持っているかを理解されています。それをうまく使いこなした時に、10倍、20倍の効果が発揮できるということを分かっているのが、一番の大きな特徴かと思います」(夏井さん)

さらに、先に句集を完成させた梅沢富美男さんについても触れ、「期せずしてですが、梅沢のおっちゃんも同じ方向なんですね。この同じ方向の2人が1人目、2人目になったのは、やはり俳句というものを一番理解してくださった結果ではないかなと思っています」と、本質を突いた二人の歩みを称えました。

(取材・執筆・撮影:PHPオンライン編集部 片平奈々子)

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