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[自己主張レッスン]私が傷つかない、相手も傷つけない話し方

石原加受子(心理カウンセラー/心理相談研究所オールイズワン代表)

2013年04月18日 公開 2024年12月16日 更新

相手と自分の意見が相反したとき、どのように対話することが重要なのでしょうか。心理カウンセラーの石原加受子さんは、無理に相手に合わせた話し方をするのではなく、自分中心で主張することが重要だといいます。どのように自己主張すればよいのか、そのテクニックを紹介します。

※本稿は、石原加受子著『「嫌われるのがこわい人」のための自己主張レッスン』(PHP文庫)より、内容を一部を抜粋・編集したものです。

 

その話し方だと、自分も相手も傷つける

例えば、あなたが相手に、こんな言い方をされたらどんな気持ちになりますか。いろいろな場面での言葉をランダムに並べてみましょう。

・「あなたがそんなことを言うとは、思ってもみなかったわ」
・「君がそんな期待を抱いているとしたら、僕とは無理だね」
・「お前が、この家業を継いでくれたら、私たちは安心できるんだよ」
・「あなたさえ、我慢してくれたら、みんなが助かるのよ」

・「いつまで外国暮らしなんかするんだ。仕事は、日本にだってあるだろう」
・「早く仕事を決めてくれないと、私たちは心配で、夜もオチオチ寝てられないよ」
・「いつまで独りでいるつもりなんだ。お前が結婚してくれないと、私たちは安心して死ぬこともできないよ」
・「お前がしっかりしてくれなきや、誰が私たちの老後をみるんだよ」

こんなふうに言われたら、あなたは多少の無理をしてでも相手の気持ちに添わなければならない、という気持ちになりませんか。相手の意に添わないと、相手を"非常に"傷つけているように感じるのではないでしょうか。

もし、このとき、あなたが、相手と反対の想いを抱いているとしたらどうでしょうか。相手を裏切っているような、相手に悪いというような気持ちになってきませんか。罪悪感で圧し潰されそうに苦しくなる人もいるはずです。

それでもあなたが、こんな場面で、相手に逆らって「自分の気持ちを優先する」としたら、強い罪悪感にさいなまれるに違いありません。あなたはそんな自分の気持ちを、正当な「良心の呵責」と思っていませんか。ほんとうにそうでしょうか。

あなたは、そんな自分の気持ちを、疑ったことがありますか。   

ではもう一度。あなたは、相手から、

「私の立場を考えて行動してくれなくちゃ、困るじゃないか。失敗したら、君のせいだからな」こう言われました。

「すみませんでした。これから、気をつけます」
「"これから"じゃ、遅いんだよ。これをどうやって収めるのかって、聞いてるんだ」
「......」
「答えられないのか。それで行動していたのかッ。まったく!」

あるいは、あなたはこう答えました。
「ちゃんと考えて行動したつもりです」

相手は、あなたのその言葉が癇に障って、こう言います。
「なに言ってるんだ! 実際に、問題が起きてるじゃないか」
「それは、私の責任ですか」
「ミスをしたのは、お前だろう」
「指示をしたのはあなたじゃないですか」
「俺はそんなことは言っていないよ。お前の聞き間違いだよ」
「いいえ、おっしゃいました」

いずれにしても、強い罪悪感に襲われるか、相手と戦って主張するか、になっていくでしょう。これを「自分中心心理学」では「他者中心」の会話と呼んでいます。

「他者中心」の意味は、簡単に言うと、自分の意識が他者に向かっていて、相手の顔色をうかがったり、相手の言動で自分の言動を決めるような、「他者を基準」にした生き方です。

実は、こんな「他者中心」の意識が、お互いの会話や話し合いを難しくしたり、何よりも、あなた自身をつらくさせています。

「相手とわかり合いたい」という想いは大切ですが、自分の気持ちや意志を後回しにした状態で相手と話をしようとすると、逆に、"私"も相手も傷ついてしまうのです。

 

あなたの心がラクになる話し方

例えば「自分の主張を通すために自己主張する」というとき、あなたは"自分のため"と信じていますが、実際にあなたが主張しようとするとき、あなたの"意識の眼"は、どこにあると思いますか。

つまり、あなたが「自己主張しなければならない」と思っているとき、あなたの頭の中は、誰のことで占められているでしょうか。相手のことで一杯になってはいませんか。すでにこれが、「他者中心」の意識なのです。

一見、「私のために主張を通す」というのは"自分のため"のように思えるかもしれません。確かに、「私の主張」を通すのですから、自分のためです。けれどもこれは、「最終目標」がそうであるというだけです。

相手と会話のやりとりをしている実際の場面では、どうでしょうか。

「自分の主張を通す」が目的になっているために、会話の最中は、むしろ、「相手がこう言ってきたら、どう言おうか」「相手が反論してきたら、どう切り返そうか」などと、相手の言動で、頭の中が一杯になっているはずです。

事前にシミュレーションしたり、本番に向けて練習したりしているときも、相手のことばかり考えているに違いありません。

他方、「私を基準にする」生き方を、「自分中心」と呼んでいます。これは「私の気持ち、感情、意志、五感、あるいは肉体を大事にする」生き方で例えば先の例 (相手の言葉) に、「他者中心」の言い方で答えるとしたら、 

「あなたがそんなことを言うとは、思ってもみなかったわ」
「僕が何を言おうと勝手じゃないか。君に指図される覚えはないね」

「君がそんな期待を抱いているとしたら、僕とは無理だね」
「別にあなたに期待していたわけじゃないわ。私のほうこそ、お断りしますよ」

「お前が、この家業を継いでくれたら、私たちは安心できるんだよ」
「そうやって、また、俺を家に縛り付けておくつもりだろう」

「あなたさえ、我慢してくれたら、みんなが助かるのよ」
「じゃあ、みんなのために、私は自分の人生を犠牲にしろって言うんですか」

「いつまで外国暮らしなんかするんだ。仕事は、日本にだってあるだろう」
「日本にいたくないから外国に行ったんだよ。まだ、それがわからないのかッ」

「早く仕事を決めてくれないと、私たちは心配で、夜もオチオチ寝てられないよ」
「うるさいなあ。お前たちがそうやってガタガタ言うから、やる気がなくなっていくんだよ。仕事が見つからないのは、お前たちのせいだよ」

「いつまで独りでいるつもりなんだ。お前が結婚してくれないと、私たちは安心して死ぬこともできないよ」
「好きで独りでいるわけじゃあ、ないわよ。私だって、こんな家、さっさと出ていきたいんだから。あんたたちが、私をこうしたんじゃないのッ」

「お前がしっかりしてくれなきや、誰が私たちの老後をみるんだよ」
「子供のころ、さんざん痛めつけておいて、いまさら老後だなんて、ふざけるんじゃないよ!」  

では同様に、「自分中心」の言い方で答えるとしたら、こんなふうになります。

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心が通い合う会話は、満足感をもたらす

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