「失敗したらどうしよう」「新しいことをするのは不安」こうした"やらない理由"を考えて物事を先延ばししてしまうのは脳の自然な反応だと、株式会社ハイパフォーマンス代表取締役の名郷根修さんはいいます。
では、どうすれば脳の特性に左右されず、すぐやる人になることができるのか――本稿では、先延ばし癖を克服する方法やコツについて紹介します。
※本稿は、名郷根修著『瞬動力』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
考える前に動く「5秒ルール」
人間の脳は、新しい行動を起こそうとするときに不安やリスクを評価しはじめます。その過程で、「今日はやめておこうかな」「失敗したらどうしよう」「今じゃなくても良いか」といった"やらなくて良い理由"が浮かびやすくなるのです。
やる気がないから、意志が弱いからというわけではなく、これは扁桃体の働きによるものです。「不安」「面倒くささ」「失敗のリスク」を大きく見積り、生存本能によって「今の状態から動かない・変化しない」という選択をしようとします。脳の自然な防御反応が起こった結果、やらない理由を思い浮かべて留まろうとするのです。
そこで提案したいのが、"言い訳探し"が本格的に動き出す前に、先に体を動かしてしまおうということ。その猶予時間を5秒に設定して動き出す「5秒ルール」を実践してみましょう。
「5秒ルール」は、アメリカのメル・ロビンス氏が提唱している「やろうと思ったら、5秒以内に動き出す」ためのシンプルなテクニックです。著書『5秒ルール』は全米でミリオンセラーとなり、日本でも話題になりました。
やり方は簡単です。「やろう」と思ったら、すぐに心の中で「5・4・3・2・1」とカウントダウンし、「ゼロ」になったら、考える前に体を動かす。これにより、
・5秒以上迷って延ばしモードに入る前に、行動をスタートできる
・カウントダウンに意識を集中させることで、不安や雑念を一時的に遮断できる
・「やる気が出たら動く」のではなく、「ゼロになったら動く」という合図で体を動かせる
つまり、気分に左右されずに動ける状態を、自分でつくれるのです。「ゼロ」カウントのときに取る行動は、「立ち上がる」「(本のページなどを)開く」「手を伸ばす」など、ごく小さな動作でOKです。「考える時間」が長くなるほど、行動より先延ばしする理由のほうが強くなってしまいます。先延ばしグセが抜けない人は、考える前に小さな動きを先に起こし、「動いてから考える」ほうに切り替えてみましょう。
「5秒ルール」は道具を用意する必要もなく、今からでもすぐに実践することができます。仕事に限らず、「朝起きられない」「帰宅後、ついダラダラ過ごしてしまう」「部屋の片づけ」「ストレッチを習慣にしたい」など、あらゆる場面で使えるので、日常のさまざまなシーンでぜひ試してみてください。小さな動作をきっかけに、"動けばスイッチが入る"という脳の特性によって、留まらずに行動に移せるようになります。
【5秒ルールのケーススタディ:5秒で布団から足を出すだけで、朝習慣が定着】
朝が苦手で、目覚ましが鳴ってもつい二度寝をくり返してしまう30代の男性。この方には「目覚ましが鳴ったら、5秒ルールで"片足を布団の外に出す"」という簡単な動作を提案してみました。
すると、"布団の外に足を出す"という物理的動作がスイッチとなり、起き上がる→カーテンを開ける→洗面所に向かう、という行動が自然に続くようになり、二度寝をしなくなりました。
ご本人は、「気合いでは起きられなかったけど、5秒ルールで足だけ出すならできた。そこから流れが変わりました」と話していました。
5秒ルールを実行するための3つのコツ
5秒ルールの効果や活用方法は理解してもらえたでしょうか。「そうは言っても、"考える前に動く"はむずかしい......」と思われる方も多いと思います。5秒ルールを実行するにあたっては、ぜひ3つのコツを覚えておいてください。これを押えれば、驚くほど動きやすくなります。
①"やること"ではなく"動き"だけ決めておく
最初に決めるのは行動内容ではなく、「5秒以内にやる動きをひとつだけ決めておく」これだけでOKです。行動が重くなるのは「何をするか」を考えるから。一方、小さな動作だけなら、ほとんど考えずに動くことができます。
・パソコン作業→「5秒以内にパソコンを開く」
・読書→「本を手に取る」
・運動→「靴を履く」
・片づけ→「立ち上がる」
②カウントダウンを「自動の号令」にする
5秒ルールの本質は、「カウントダウンで意識の流れを遮断する」ことにあります。新しい行動を起こそうとすると、脳の中では「今日はやめておこう」「失敗したらどうしよう」といったセルフトークがはじまりやすくなります。この内的対話が長引くほど、行動は遠のいていきます。
そこで、5・4・3・2・1と数える。意識がカウントに集中することで、不安や言い訳のループが一時的に途切れます。その隙に体を動かすことで、計画や実行を担う前頭前野が働きやすい状態に切り替わっていきます。
③"5秒でできる一歩"に行動を細かくカットする
「資料をつくる」「勉強する」「片づけをする」......やろうと思っているのに動けないのは、行動のハードルが高すぎる証拠です。行動を「5秒でできる最初の一歩」に切り分けるだけで、脳は一気に動きやすくなります。
・資料作成→「前回の資料をひとつ開く」
・英語の勉強→「テキストを机に置く」
・片づけ→「ゴミをひとつ捨てる」
といったように、「考える前に動く」が自然に起こるような小さな動きを設定しましょう。この3つのコツを組み合わせれば、先延ばししがちな人でも、脳が自動的に「動くモード」に切り替わるようになります。「考える前に動く」は、本人のやる気や性格に関係なく、仕組みで実行できるのです。