「IKIGAI」を世界に広めたスペイン人作家が、沖縄の長寿者から学んだこと
2026年08月07日 公開
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。
今回、紹介するのは『IKIGAI シンプルに、豊かに生きる』(エクトル・ガルシア、フランセスク・ミラージェス著、長澤 あかね訳、大岩 央 編・監修・解説、PHP研究所)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
生きがいの意味
人生の夢や目標を聞かれると少しとまどうかもしれません。先月紹介した『人生にコンセプトを』でも語られていたように、少し今の自分には大げさだったり、年齢によってはふさわしくない言葉だと感じられるものかもしれません。
私の両親に夢や目標と聞いても明確な答えが返ってこないように思います。もしかしたら長生きすること、というような答えかもしれません。私自身も夢、と言われると100%しっくりくる言葉が見当たりません。
でも「生きがい」であれば、誰もが毎日を生きていくために求めていることではないでしょうか。子供や孫の成長が生きがいになっている人もいるでしょう。飼っているペットかもしれませんし、仕事で周りの人に喜んでもらうことかもしれません。生きがいという言葉であれば、私自身にも十分すぎるほど思い当たるものがあります。
本書はスペイン出身の2人の著者によりつくられた本で、原著の販売部数は世界で600万部を超えるようです。IKIGAIという言葉が日本発のグローバル語になるきっかけになった作品だといいます。ではその中身について触れていきましょう。
生きがいとは
生きがいとは何でしょうか。本書の冒頭には「朝めざめるための理由」という表現が紹介されています。今日がどのような日になるのか、誰と話し、どのような趣味をして、仕事で誰の役にたつのか。そういう日常に生きがいは存在すると言えるでしょう。
生きがいを概念で表すと、あなたの好きなこと、あなたの得意なこと、世の中が必要としていること、報酬(おそらく金銭的なものに限らない)をもらえること、のすべてを満たすことだとされています。場合によっては世の中が必要としていることというただ一つでも生きがいになり得るような感覚があるので、あくまでも絶対的な条件ではないと理解しておいても良いかもしれません。
沖縄をはじめとして世界には特に長生きする「ブルーゾーン」と呼ばれる地域があります。そこで暮らす100歳以上の方々は、がんや心臓疾患にかかることが少なく、バイタリティーと健康に恵まれ、更年期の症状は穏やかで、認知症にかかる確率も低いのだそうです。素晴らしい長寿のあり様だと感じられるでしょう。年を重ねるのであれば、そのような長生きがしたいものです。
長寿者からの教え
本書では沖縄の大宜味村で暮らす長寿者の様子が描かれています。そこで触れられている印象的な習慣は、例えば心を若く保つこと、笑顔でいること、みんなと毎日挨拶をすること、色々なものを少量ずつ食べること、働くこと、大好きな人たち(仲間)と過ごすこと、などでしょうか。それらは長寿者の大切なエネルギー源であるように感じます。
『永遠の王 アーサーの書』(T・H・ホワイト、東京創元社)に次の一節があります。
「あなたは年老いて、体が震えるようになるかもしれないし、夜中に目を覚まして、血流の乱れに耳をすますようになるかもしれない。たった一人の愛する者を失うかもしれないし、よこしまで頭のおかしな者たちに周りの世界が壊されるのを目の当たりにするかもしれない。あるいは、卑劣な心を持つ輩に、自らの名誉が踏みにじられているのを知るかもしれない。そんなときにできることが、一つだけある。そう、学ぶことだ。世界がなぜそうなっているのか、何が世界をそうさせているかを学びなさい。心が飽きることも、疎んじることも、苦しむことも、恐れることも、裏切られることもなく、後悔など夢にも思い浮かばないただ一つのことは、学ぶことなのだ」
中世のイギリスを舞台として描かれたものではありますが、第二次世界大戦前後に連載された作品という背景から、戦争や全体主義に対して平和を願い、一人の存在としてどう生きていくべきなのかを雄弁に語っています。長寿の人たちは世界がより見えるようになっていくといいます。世界の理解の深さが仕事や日々の暮らしにも反映されるそうです。
幸せに長く生きるコツ
古代ギリシャのストア哲学が紹介されている箇所も印象的です。ストア哲学で大切にされるのは、人生から感情や喜びをもれなく排除するのではなく、ネガティブな感情を断ち切ることです。我々の喜びや欲望が問題なのではなく、喜びや欲望に支配されない限りそれらを楽しんでいいのだといいます。
人には本来的に欲望があり、喜びもあります。私は様々な経営者と話をする中で、その人の根幹となる価値観を聞くことがあります。会社の経営をうまく導く価値観は、経営者によって本当に様々です。世界をより暮らしやすいものにしたい、人に喜びや楽しさを与えたい、今も残る重要な課題を解決したい、というような美しい願望がその人を動機づけていることもあります。
一方で、裕福になりたい、成功者になりたい、人気者になりたい、有名になりたいといういわゆる俗とも言える欲求がドライバーになっている人もいます。その動機は様々ですが、結果として会社を成功させている人も多く、人間らしさというものの奥深さを感じることがあります。会社として失敗する考え方や悪い会社文化には共通点が多い一方で、成功する会社の方針や文化は多様です。自分の価値観だけを基準に他の人を評価しないようにしなければならないと思うわけです。
現代における生きがいの意味
IKIGAIという言葉が世界でこれほどまでに広がるのは、世の中の流れの中で求められている考え方だからだと思います。今、人類はAIにより役割や存在意義が変わるかもしれないという流れの中にいます。キャリアでも脅威にさらされ、なぜ自分が生きていて、自分の人生にどのような意味があるのかを問われています。また、社会の分断が進み、どこに自分を置いたとしてもしっくりこないような感覚を持つかもしれません。
人が存在する意味がたとえ薄らいだとしても、生きがいを持つことが人として幸せな人生を送る根幹なように思えます。この激動で分断が進む現代でこそ毎日目を覚ます理由となるような「生きがい」を意識することが大切になってきます。本書は世界的なベストセラーになっていることからわかるように、読みやすくそれでいて人の本質に迫る作品です。通読すれば、幸せな人生を送るための指針が得られるでしょう。