なぜか生きづらい...その正体とは? 心を縛る「18の悪法」の見つけ方
2026年09月18日 公開
幼少期のトラウマからだれも信用できなくなったり、友人に笑われた記憶から塞ぎこんでしまったり...そうした経験が無意識に自分を縛る「悪法」となり、不必要な苦しみに悩まされることがあると、サイエンスジャーナリストの鈴木祐さんはいいます。
本稿では、「スキーマセラピー」で分類されている「18の悪法」の内容や、自分を苦しめる思考や行動の見つけ方について見ていきましょう。
※本稿は、鈴木祐著『最高の状態 無』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
苦しみを左右する18の悪法
コロンビア大学の心理学者ジェフリー・ヤング博士は、人間が精神を病んでしまうのは、私たちが人生で脳に溜め込んだ思考・感情・行動のパターンが機能不全を起こすからだと主張し、この発想をもとに「スキーマセラピー」という心理療法を作り上げました。「スキーマセラピー」では、"悪法"のパターンを18種類に分類します。普段のあなたに当てはまりそうなものがないか考えてください。
①放棄:家族・友人・恋人など親密な人たちに、どうしても全幅の信頼をおけず、「どうせ私は、最後はひとりになるのだ」といった感覚につきまとわれる悪法。
②不信:「他人はこちらを騙すはずだ」「人は私に嘘をついたり、利用したりしてくるはずだ」といったように、他者への不信を常に抱き続ける悪法。
③剥奪:「自分が求める感情的なサポートを得られない」という感覚をもたらす悪法。
④欠陥:「自分には何か根本的な問題がある」「私は劣っている」という信念をもたらす悪法。
⑤孤立:「自分は周囲に溶け込めない」「みんな私のことを変だと思っている」という感覚を与える悪法。
⑥無能:「私は日常の問題に対処できない」「自分が生きていくには他人が必要だ」といった感覚を生み出す悪法。
⑦脆弱:「何か悪いことが起こるのではないか」という恐怖を生み出す悪法。
⑧未分:他者のニーズや感情にばかり目が行き、自らのことがおろそかになってしまう悪法。
⑨失敗:自分の中に、「私は仲間よりも失敗している」「自分の能力にまったく自信が持てない」といった感覚を生む悪法。
⑩尊大:自分は他の人よりも優秀だと信じ、特別な権利を得る資格があると感じる悪法。
⑪放縦:「集中力を維持するのが難しく、すぐ別のことに意識が向いてしまう」人に多く、飲酒や過食などの自滅的な行為がやめられないといった悪法。
⑫服従:自分の意見を言うのが苦手で、怒りや悲しみを抱いても表に出さない悪法。
⑬犠牲:「頼まれたことは断れない」「他人より自分を優先するのは利己的だ」といった感覚を生む悪法。
⑭承認:他人からの注目を過度に重んじる悪法。
⑮悲観:人生の否定的な側面にばかり目を向け、ポジティブな側面を無視する悪法。
⑯抑制:「感情を表現するのは恥ずかしい」といった感情や行動を抑えつけてしまう悪法。
⑰完璧:「批判を避けるために高い基準を設定し、それを満たす努力をしなければならない」という感覚をもたらす悪法。
⑱懲罰:「過ちを犯した人は厳しく罰せられるべきだ」という信念を生み出す悪法。
まずは「悪法スコア」で仮説を立てる
どの悪法に苦しめられるかは、幼少期の環境や現在までに味わってきた体験の数で決まります。その多くは運に左右されるため、あなたの意思ではどうにもできません。私たちにできるのは、自分の思考と感情がどの悪法に左右されているのかを見極め、対処することだけです。
いったい、あなたはどんな悪法に悩まされているのか?それをあぶり出すため、いくつか実験をしてみましょう。
まず取り組むべきは「悪法スコア」です。あなたを悩ます悪法を大ざっぱに推測し、仮説を立てましょう。悪法1~18と照らし合わせ、いつもの自分の行動や心理に当てはまりそうなものはどれかを考え、採点してください。「完全に当てはまる」なら100点、「まったく当てはまらない」なら0点です。この時点では仮説を立てるのが目的なので、主観で採点してかまいません。
右の列の「トリガー」には、それぞれの悪法があなたの中で発動しそうな状況や場面を考えて書き込みます。「ネットで批判されたとき」や「大勢の中で発言しなければならないとき」など、過去にネガティブな感情を抱いた体験を書いてください。すべてを書き終えると、あなたを悩ませる思考や感情の傾向がわかり、なんとなく重苦しさから解放されたような気分になるはずです。
ただし、「トリガー」を考える際、暴力、離婚、いじめなど、耐えられないレベルの体験をお持ちの場合は、専門医の指導を受けつつ、事前に「セーフプレイスワーク」と「ソーシャルサポートワーク」で心理的な結界を張っておきましょう。
「悪法日誌」で推測する
・トリガー
あなたがネガティブな感情を抱いたときの原因や状況を書き込みます。「給料が減った」のような大きなストレスはもちろん、「カフェで店員が怒られていた」といったささいなことでも、嫌だと思った出来事なら何を書き込んでもかまいません。
・感情
「トリガー」に対して抱いた感情を記入します。」「不快」「不安」など、その出来事によって味わった感情をすべてリストアップしてください。
・思考/イメージ
「トリガー」に対して頭に浮かんだ思考やイメージを記入します。「なぜ自分ばかり辛い目に遭うのか」といった思考や、「病気にかかった自分」のようなイメージなど、頭に浮かんだものを自由に記録しましょう。
最初のうちは「思考とイメージ」をうまく捉えられず、何も考えずに反射的に行動したようにしか思えないかもしれません。そんなときは、とりあえず次の「身体の反応」と「対処行動」だけを記録しつつ、「トリガーのあとで頭の中に特定の思考かイメージが浮かばなかっただろうか?」と考えてください。
・身体反応
「トリガー」に対して発生した生理的な変化を記入します。「腹が縮むような緊張感」といったように、肉体の変化を思い出して書き込んでください。
・対処行動
「トリガー」に対してあなたがとった対処行動を記入します。「その場はあやまってやり過ごした」など、具体的な行動を書いてください。
・想定される悪法
「トリガー」から「身体反応」までの書き込みを振り返り、「このような感情・思考・行動をもたらした悪法は何だろう?」と考えて、思いついた答えを記入します。最初のうちは自信がなくてもかまいません。当てはまりそうな悪法をいくつかピックアップしてみてください。
・悪法の起源
先に想定した悪法が、あなたの頭にインストールされた理由を記入します。「子どものころに弟の世話ばかりさせられたから」といったように、思い当たる理由を自由に書き出しましょう。
・悪法の機能
上記の「悪法の期限」で想定した悪法が、過去の自分にどのように役立っていたのかを考えて記入します。「親戚が喧嘩ばかりしていたので、徹底的に良い人になって身を守ろうとしたのかもしれない」といったように、過去の人生で悪法が果たした機能を考えてみましょう。
・現実思考
先ほど記入した「思考/イメージ」に対して、「より現実的な思考とイメージはどのようなものか?」を考えて記入します。あなたの思考やイメージを、推測に基づかない正しい内容に書き換えてください。
【例:会話で失言をして友人に嫌われた】
「実際に友人がどこまで嫌がったかはわからないし、少なくとも完全に嫌われたとは考えにくい」
ここでありがちな間違いが、悪法を強引にポジティブに変換してしまうパターンです。友人への失言を「彼は何も気にしていないはずだ」とねじ曲げるのは逃避です。必ず現実にあり得るレベルの思考にとどめてください。
・代理行動
ここまでの作業をもとに、「より現実にもとづいた効果的な行動は何だろう?」と考え、「代理行動」を記入します。たとえば、あなたが「上司に仕事のミスを罵倒されて耐えた」という状況では、次の行動が考えられるでしょう。
「ミスをしっかり謝って再発を防ぐ解決策を提示する。もし上司が人格まで否定してきたら、その場を立ち去っても良いし、相手の非礼に抗議をしても良い」
「そんな理想の行動を取れるだろうか?」と思う人もいるでしょうが、代理行動を実行できるかどうかは問題になりません。このステップの真価は、あなたの脳に「別の現実もあり得るのだ」という事実を教え込むところにあります。頭の奥から「これが唯一の真実だ」とささやく悪法に、他にも無数の可能性が存在することを教え込むのです。
悪法日誌の書き方は以上です。記録を取るタイミングは「ネガティブな感情を抱いた直後」でも「ネガティブな感情を抱いた日の夜」でもかまいません。これといって書くことがなければ、「1年前に起きた忘れられない嫌な体験」を対象にするのも有効です。
今後、何かネガティブな感情に襲われたり、周囲を不幸にする行動を取ったりしたときは、「私はいま悪法に動かされていないか?」「悪法に従う以外の反応はできないか?」と考えてみてください。その繰り返しにより、あなたは少しずつ自己について学んでいきます。