「心配事の9割は起こらない」 それでも悩んでしまう人への“3つの対処法”
2026年09月28日 公開
スマートフォン1つで無数の情報を得ることができる現代。あまりにも情報量や選択肢が多く、性格に関係なく誰もが悩みやすい時代になってきていると、言語学者で明治大学教授の堀田秀吾さんはいいます。
堀田さんいわく、「気合い」だけで悩みを減らすのは難しく、仕組み化することが大切とのこと。そこで本稿では、悩みを減らす3つの方法を紹介します。
※本稿は、堀田秀吾著『心理学×脳科学×行動経済学で科学的に証明された 悩まない人の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「ちゃんと選びたい」をやめる
ネット通販で商品ひとつを購入するのに、何10個ものレビューを読み比べて1時間以上スクロールを続ける人がいます。一方で、目についた最初の商品をぱっとカートに入れ、そのまま満足して購入を終える人も。実は、同じ買い物でも、両者の脳の疲れ方はまったく異なるのです。
スワースモア大学のシュワルツらは、前者のような人をマキシマイザー(最大化を目指す人)、後者をサティスファイサー(満足できれば手を打つ人)と呼び、この2つのタイプを比較する大規模な調査を行いました。参加者およそ1700名に、買い物や進路選択の場面でどう振る舞うかを質問し、人生満足度・抑うつ傾向・後悔のしやすさを点数化したのです。
結果、マキシマイザー傾向が強い人ほど、人生満足度や幸福感が低く、抑うつや後悔の点数が高かったのです。マキシマイザー傾向が強い人は、買ったあとに「もっと安い店があったかも」「別の色のほうが似合ったかも」と考え込んでしまったり、プレゼントを贈るときも相手の反応を何度も思い返してしまったり、そういった日々の意思決定がそのまま心の重荷に変わっていくことがわかりました。
マキシマイザーは選ぶ前にすべての選択肢を吟味しようとし、選んだあとも「もっといい選択肢があったはず」と振り返り続けます。1回の決断のために脳が稼働する時間がサティスファイサーよりはるかに長く、「ちゃんと選びたい」という真面目さが自分を疲れさせているのです。
これはマキシマイザーが悪いのではありません。仕事の精度を高めたり家族の安全を守ったりするうえでその慎重さは強みになります。ただ気をつけたいのは、「今日の靴下の色」や「どのカフェに入るか」といった人生を左右しない小さな選択にまで同じエネルギーを注いでしまうことです。
おすすめしたいのは、自分の中で「ここは80 点で十分」と決めるラインをいくつか引いておくことです。すべての判断を100点にしようとすると、脳はどの場面でも同じだけの力を使ってしまい、本当に踏ん張るべき場面のときに息切れしてしまいます。
日用品や昼ごはんは満足できればそれでいいと手を打つ。一方で、子どもの進学先や住まいなど大事な決断にはじっくり時間をかける。全部に本気を出すのではなく、本気を出す場所をあらかじめ決めておくのです。すべての場面で全力投球をやめるだけで、悩みは軽くなっていきます。
【覚えておきたいこと】
・「80点で十分」というラインを決める
・決断にかける時間の長さと満足度は比例しない
心配ごとをメモして振り返る
もしも明日のプレゼンで頭が真っ白になったら。もしも子どもの体調が悪化したら。こうした「もし」がひとつ浮かぶと、そこにまた次の「もし」がつながり、気づけば起きてもいない出来事の続きを何パターンも思い描いてしまいます。
あらゆる可能性を考えておけばいざというとき慌てずに済みます。ところが実際には、想像の中の最悪のシナリオはどんどん枝分かれし、当初の心配とは関係のないところまで広がっていって、頭の中はまだ起きていない出来事でいっぱいになっています。実際に、心配ごとはどれくらいの確率で当たるのかを調べた研究があります。
ペンシルベニア州立大学のラフレニエールとニューマンは、全般性不安症と診断された29人を対象に調査を行いました(全般性不安症:心配ごとが次から次へと浮かんで止まらなくなり、日常生活に支障が出るほどになった状態のこと)。
参加者は10日間、通知が届くたびにいま頭にある心配ごとを記録しました。そして毎晩それを見直し、その心配ごとが現実になったかどうかを30日間かけて確かめたのです。
集計してみると、記録されたうち実際に起こったものは1割弱でした。心配ごとの97%は現実にならなかったのです。いちばん多かったのは的中0の人で、29人中7人は記録した心配ごとがひとつも実現しませんでした。しかも実際に起こった心配ごとについても、約79%は思っていたより良い結果だったと本人が認めています。
この研究からは希望の持てる発見も出てきました。心配ごとが外れた割合の高かった人ほど、治療のあとの症状の改善が大きかったのです。自分の心配ごとが外れていく様子を何度も目撃すること自体に、不安をほどく力があるのでしょう。頭の中で「きっと大丈夫」と唱えるより、外れた記録という動かぬ証拠を集めるほうが、心にはよほど効きます。
何か心配なことが出てきたら、手帳やスマホに日付と一緒に1行だけメモしておきましょう。金曜の報告会で失敗しそう、子どもの熱が長引きそうなど、何が、いつ、どうなりそうかまで具体的にしておくと、あとで白黒をつけやすくなります。
そして数日たったら、その横に「全く起こらなかった」「大したことなかった」のように実際はどうなったかを書き足すのです。このメモが、自分の不安を和らげる専用データになっていきます。
【覚えておきたいこと】
・心配ごとが外れた記録が次の不安を和げる
・「もし」が浮かんだら1行だけメモをする
3つの仕組みで悩みをなくす
私たちの脳は1日に使える容量が限られていて、選びすぎると疲れ、真面目すぎても疲れ、家事や育児でも消耗してしまいます。では、どうすれば脳の働きに余白を取り戻せるのでしょうか?
私がおすすめするのは「たった3つの仕組み」です。減らす、自動にする、回復する。これだけ覚えていれば、今日から生活の整え方が変わります。
①減らす
1つめの「減らす」は、決めごとそのものを少なくする工夫です。仕事で着る服を決めておく、食事のメニューを曜日ごとに固定する、SNSの通知をオフにする。こんなふうに選択肢を減らすだけで脳の負担は軽くなります。
「減らす」と聞くと、我慢や節約のようなイメージを持つかもしれませんが、ここでいう「減らす」はむしろ逆です。どうでもいい場面での決めごとを減らすことで、本当に大切な場面に使えるエネルギーを確保する、いわば「配分の工夫」です。
②自動にする
2つめの「自動にする」は、繰り返しの行動を考えずにできる状態にする工夫です。習慣化の最大の利点は、あまり考えないで行動できるようになることです。ということは、習慣を増やしていけば、それだけいちいち脳を働かせずに済むのです。
テキサスA&M大学のウッドらの研究では、私たちの日常の行動の4割強が習慣的な行動であるとのこと。コンスタンツ大学のゴルウィッツァーが提唱した「イフ・ゼン・プランニング(もしXが起きたらYをすると前もって決めておく方法)」は、大規模なメタ分析でも運動・勉強・健康行動の達成率に高い効果があることが示されています。
③回復する
3つめの「回復する」は、消耗した脳を意識的に休ませる工夫です。ミシガン大学のバーマンらが行った実験では、街なかを50分歩いた場合に比べて、植物園を50分歩いた後の注意力テストの成績はおよそ20%向上しました。緑の中を歩くだけで脳のメモリに空きができるのです。
お風呂、深呼吸、好きな音楽、ぼんやりする時間など、自分なりの回復法を持っておくことが、ベストな状態で明日を迎えることにつながります。
【覚えておきたいこと】
・悩みを気合いで乗り切ろうとしない
・毎回1から考え直さない